いくつもの、最期の願い

しゃーりん

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エステルの父、アドレー伯爵のもとにエステルの悲報が届けられたのは、デボラが学園に行っている昼間のことだった。

悲報と共に、一通の手紙も届けられていた。


「どうか、何よりもまず先にその手紙をお一人で読んでほしいという伝言を承っております。」


デズモンド侯爵家の使用人は、呆然とするアドレー伯爵にそう言った。



(1/3枚目)

ーー*ーー*ーー*ーー*ーー*ーー


親愛なるお父様へ

この手紙とともに私が死んだことが伝えられたことと思います。
思うように筆を動かせないため、読みづらいことをお許しください。

お父様に知っていてほしいことがあります。

私の死は、出産によるものではありません。
私は、殺されました。 


お父様は覚えておられるでしょうか。
お母様が亡くなる前のことを。

ケントお兄様と私、そしてデボラ。
末っ子だったデボラはお母様にとても甘える子でした。

そのお母様が四人目を身籠り、悪阻でデボラの相手ができなくなった時、デボラは言いました。

『デボラが一番じゃないなら、お母様もお腹の子もいなくなっちゃえばいい!』
 
そんなことを言ったデボラを私たちはデボラを叱りました。

その後、急激に具合の悪くなったお母様は三日間苦しんでお腹の子と共に亡くなってしまいました。
あの時の、お母様の死に様は異様でしたよね?
苦悶の表情に、不自然に硬直した手足。

毒の反応は出ず、いったい、何の病気だったのか、他に怪しいところはないか、お父様は詳しく調査してもらうべきかと考えておられました。


ですが、デボラが『お母様が亡くなったのは私のせい』だと部屋に閉じこもって食事も拒否しました。
私たちは”まだ幼いデボラのせいではない”と、”お母様はデボラの言ったことを本気で受け止めていなかった”、とあの子の心の傷にならないように気遣いました。

お父様も、お母様を調べてもらっていては葬儀を終えることができないから、と早く区切りをつけるために埋葬することにしました。
 

あれから、私たちはお母様の分までデボラを可愛がろうとしてデボラの我が儘を許してしまいました。
 
私はいろんなものを、欲しがるデボラに譲ってきました。

唯一、譲れなかったのは結婚相手でしょう。
アイザックとは政略結婚。簡単に譲れるものではありません。
当時のデボラの婚約者と私は年齢的にも合わないので交換することもできません。
それならば、婚約解消してデボラと一緒にいてほしいと言われても、受け入れられることではありません。

正直に言うと、結婚でデボラから離れられることにホッとしている自分がいました。


そうして私はアイザックに嫁ぎました。


ーー*ーー*ーー*ーー*ーー*ーー

(1/3枚目)
 

 
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