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しおりを挟む息子ルイスのために、エステルがアイザックとメイディアの再婚を望んでいる。
そう告げると両親は当然のことながら驚いていた。
「エステルは、デボラ嬢のようにルイスを害する恐れのある後妻に危機感を抱いています。
たとえば、格上の令嬢が嫁いで来たら、ルイスではなくその令嬢との子が跡継ぎになってしまうのではないか、冷遇されてしまうのではないか、と気にかけていました。
メイディア嬢なら、子爵令嬢なので安心できるようです。」
父は腕を組んで考えてから、言った。
「だが、再婚するなら実益のある令嬢が望ましいだろう?子爵令嬢ではちょっとなぁ。」
そう言うだろうとは思った。
「メイディア嬢、さっき、エステルが名を出した令嬢を言ってくれないか?」
「はい。エイン公爵家アーリア様、ビート侯爵家イザベル様、シーバル侯爵家エリス様、ディクス侯爵家……」
メイディアがスラスラと話し出すと、母が真っ青な顔になって止めた。
「わかった、わかったわ。エステルの言いたいことは。私もごめんだわ。彼女たちは。」
「どういうことだ?」
父はピンときていないらしい。
「アイザックの再婚相手は初婚に限らないってことよ。不貞して離縁された令嬢や浪費が激しくて離縁された令嬢を押し付けられるかもしれないってこと。エイン公爵に圧力かけられて、あなたは断れます?」
父はようやく母の言いたいことを理解したようだ。
「そういうことか。”訳あり”、”傷物”、”行き遅れ”、問題のある令嬢をアイザックにあてがうのか。
それに、確かにルイスよりも我が子を跡継ぎにしろと言い出しそうだな。それはアドレー伯爵に対し申し訳ない。」
そういうことだ。
その時、メイディアが口をはさんだ。
「申し上げてよろしいでしょうか?」
「ああ。」
「私は隠れ蓑でも契約結婚でも構いません。ひとまず再婚していれば、アイザック様の後妻への打診はなくなることになります。そうして落ち着いた頃に、相応しい令嬢を探されてはいかがでしょうか。」
「あなたに傷がつくのよ?」
「それは気にしませんし、それにルイス様を思った『エステル様の最期の願い』を受け入れた契約結婚だったとわかれば、理解は得られるかと思います。」
「エステルは、メイディア嬢の身分が気になるなら実家のアドレー伯爵家の養女にすればいいと。
持参金もメイディア嬢に譲ると言っていました。」
アイザックの言葉を聞いて、母は思い当たったらしい。
「あなたはエステルの又従姉妹のお嬢さんね。うちの侍女になっているって聞いたわ。」
「はい。そうです。」
父も母も必死で頭を働かせて、どうすればいいか考えている。
「実は、エステルは自分が生きているうちにメイディア嬢との再婚を望んでいます。」
「あなたと離婚するってこと?」
「はい。そうじゃないと、死んでからではメイディア嬢の身分では退けられてしまうから、と。」
「確かにそうだな。あるいは、生前からのお前の愛人だったと噂されるだろう。そうなると、印象は最悪だからな。
言い方は悪いが『エステルの最期の願い』はうまく利用できる。エステルが自ら望んだのだと、我々も後ろ暗いところはないと言えるだろう。」
父と母も、エステルの最期の願いを受け入れてくれた。
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