いくつもの、最期の願い

しゃーりん

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メイディアがアドレー伯爵の養女になった。

とは言ってもアイザックと結婚しているため、メイディアがアドレー伯爵家に住むことはないが。

アドレー伯爵はメイディアに、『いつでも遊びに来てくれ』と言っていた。
エステルの葬儀で会った時よりも、痩せたように見えた。 

アドレー伯爵は葬儀でのデボラの振る舞いを見て、彼女を幽閉するか療養させる気でいただろう。
だが、デボラまで毒を飲んで死んでしまったのだ。

娘二人を立て続けに亡くしてつらくないはずがない。

アドレー伯爵の孫でもあるルイスを連れて遊びに行けば、少しは元気を取り戻してくれるかもしれない、とアイザックはメイディアたちと度々アドレー伯爵家を訪れようと決めた。 





エステルが亡くなって半年経った頃、メイディアの実兄、ローランドの結婚式があった。

これを境に、アイザックとメイディアは夫婦として社交界に顔を出すようになった。

事前に母が友人たちに『二人の結婚はエステルの願いだった』と伝えていたことから、愛人関係にあったという噂はなかったが、メイディアという妻がいることを知っているにも関わらず、アイザックに纏わりついてくる女性がいた。
 

「ねぇ、アイザック様。時期が来たら離婚されるのでしょう?いつ離婚なさるの?やっぱり、私のような侯爵家の娘の方がデズモンド家の嫁に相応しいと思いませんか?」


……これは誰だったか。あぁ、浪費がひどくて離婚されたという令嬢か。

 
「私は離婚する気などないし、妻は我が家に相応しい嫁だと思っている。少なくともあなたよりも慎ましさを持ち合わせているしね。」


アイザックが無表情でそう言うと、令嬢は顔を真っ赤にして怒りながら去って行った。


また違う時には……
  

「お願いです、アイザック様。どうか私をあなたの子供の母親にしてくださいっ!私は子供を産める可能性が低いだろうと言われて離婚されました。なので、虐めたりせずに大切に育てますわ。」


……これは誰だったか。あぁ、夫の愛人の子供を育てるのを嫌がって刃物を向けたとかいう令嬢か。


「私は離婚する気などない。他を当たってくれ。」

「そんなっ!修道院に入れられてしまいます。私を可哀想だと思ってくださらないのですか?」

「生憎、ほぼ初対面のあなたに同情する心を持ち合わせていないので、失礼する。」


アイザックが無表情でそう言うと、令嬢は絶望的な顔をしたが無視した。


また違う時には……


「アイザック様、私なら子供に完璧な教育を保証いたしますわ。もちろん、妻としてあなたのサポートも完璧にこなしてみせます!」


……これは誰だったか。あぁ、浮気した婚約者を何年も追い回していたという令嬢か。


「私は離婚する気などない。適齢の子供の家庭教師にでもなればいいのではないか?」
 

アイザックは無表情で、我が子はまだ一歳にもならないので家庭教師は不要だと伝えた。


また違う時には…… 


「私の実家と縁を結べることは魅力的でしょう?名ばかりの夫婦でいいの。別邸を用意してくれたらそこに住むわ。今の奥様は愛人にすればいい。お互い、自由に過ごしましょう?」 


……これは誰だったか。あぁ、産んだ子供が浮気相手の子だとバレて離婚された令嬢か。
 

「私は離婚する気などない。名ばかりの夫婦でいいなら当主を退いた独り身の男をお勧めしますよ。」 


アイザックが無表情でそう言うと、令嬢はそれもアリかというような顔をした。
 


ちょっとメイディアと離れた隙に、毎回こうして自分と再婚しろと迫ってくる令嬢たちがいて、アイザックはメイディアと再婚していてよかったと心の底から思った。
 

 
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