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しおりを挟む一方、アイザックと離れたメイディアも令嬢たちから離婚を迫られることはあった。
だが今回は三人の令嬢に囲まれていた。
全員、メイディアよりも年下のようだった。
「私たちの婚約を壊した女の姉が図々しくも侯爵家の嫁って許せないわ。譲りなさいよっ!」
…………?
メイディアは彼女たちが何を言っているのかがわからなかった。
メイディアに妹はいない。
と、そこで、アドレー伯爵家の養女になったメイディアは義妹の存在を思い出した。
デボラだ。
彼女が生きているうちに養女になったわけではないので、デボラが義妹という意識はなかった。
目の前にいる令嬢たちは、メイディアがいつ養女になったのかを知らないか、エステルと勘違いしているか、とにかく正しい情報を把握していないのだろうと思った。
だが、メイディアはエステルから話を聞いていた。
彼女たちの婚約が解消になった理由を。
「婚約を壊した女というのはデボラのことですか?」
「そうよっ!あの女のせいでもうすぐ卒業なのに婚約者がいないままなのよ。責任取ってアイザック様を譲るべきだわっ!」
メイディアは首を傾げた。
「アイザック様は一人ですよ?三人でどうやってお分けになるつもりなの?」
「そ、それは………」
三人の令嬢はお互いをチラチラと見合っていた。
おそらく、二人を出し抜いて自分だけがアイザックの妻になろうという浅はかな思いを三人共が抱いているのだ。
「それに、あなた方の婚約が解消になった原因はデボラにあるのではなく、あなた方自身にあります。」
「そんなわけないわっ!デボラが私の婚約者に馴れ馴れしくした後、婚約解消になったんだから!」
私も、私も、と二人の令嬢も後に続いた。
「馴れ馴れしくした後、デボラを責めたでしょう?」
「当たり前じゃない!」
「その姿を、あなた方の元婚約者たちは見ていたのよ。
それに、そもそもの発端はあなた方がデボラの頭の悪さを笑って貶したことなの。」
エステルは、デボラが馴れ馴れしくした令息たちの婚約解消を聞いて、デボラのせいなのか確認に行ったらしい。
その時に聞かされたそうだ。
『あなたの婚約者は人の成績を嘲笑うような性格の悪い女。こうして私があなたに近寄ったことで彼女は私を罵倒しに来る。その姿を見ていて?』
デボラは男にそう言ったという。
そして自分の婚約者の見苦しい姿を見て婚約解消を決めたのだから、デボラのせいではない、と。
デボラのやり方はズルいが、仕返しとして十分過ぎるほどの威力があったのだ。
メイディアの話を聞き、三人の令嬢たちはひどく驚いていた。
「それにね、デボラがしたことと、今、あなた方が私にしていること、大差ないと思うの。
だって、私の夫が欲しいからあなた方は離婚を迫っているのでしょう?デボラは令息たちに触れて馴れ馴れしい態度をしたけれどあなた方から婚約者を取ろうとしたわけではないから、よりひどいのはどちらかしら?」
令嬢たちは自分たちの行動がデボラにも劣ると気づき、ショックを受けていた。
メイディアは呆然とした令嬢たちの前から堂々と去った。
すると、話を聞いていただろうアイザックが柱の陰にいて驚いた。
「アイザック様。」
「三人に責め寄られていたから……でも、援護は不要だったな。」
アイザックはメイディアが対応しきれなければ出ていくつもりだったらしい。
「大丈夫です。妻という肩書は思った以上に強いものですから。」
そう。婚約者よりも妻という立場は簡単には退けることはできないのだから。
「私の妻は強くて素敵だな。」
メイディアはアイザックに微笑み、二人寄り添って月を眺めてから夜会場へと仲良く戻った。
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