誰にも口外できない方法で父の借金を返済した令嬢にも諦めた幸せは訪れる

しゃーりん

文字の大きさ
46 / 47

46.

しおりを挟む
 
 
ラインハルトは妹シフォーヌの婚約者だった侯爵令息のエリオットに声をかけた。
 

「エリオット、シフォーヌが申し訳ないことをしたね。」

「いや、彼女とは合わなかったから正直ホッとしている。こんなこと言って申し訳ないけど。」

「いいんだ。あの子は自分中心にしか物事を考えられない子だったから。
 それよりも、次の婚約者候補はいるのか?」

「まだ。婚約者のいない伯爵位より上の令嬢となると、2,3歳下になるらしい。」

「そうか。私も直接会ったことはないけれど、君の3歳下に可愛い伯爵令嬢がいる。
 シフォーヌが好きになった令息の妹だけど。」

「あぁ、あの彼の。……見てみたいな。」

「こっそり見に行くか?」

「……見られるのか?」

「ああ。」


ルミアの行動を調べたラインハルトは、数度ルミアを見に行ったから。

エリオットにもあれがルミアだと教えた。

彼は一目惚れをしたようだった。
確かにルミアは可愛い。あと数年もすれば、目を引く美人になるだろう。


エリオットが両親に、ルミアとの縁談を持ち掛けた。
侯爵夫妻はコールマン伯爵家の過去を知っていたが、ここまで持ち直した手腕は称賛に値すると思っていたので、顔合わせを願い出た。

結果、エリオットだけでなく侯爵夫妻までルミアを気に入り、婚約を望まれている。
 




 
カイトに届いた兄からの手紙を読ませてもらったジュゼットは、兄夫婦も賛成しているとわかった。


「カイ様はどう思う?」

「僕は、ルミアが嫌がっていないのであれば構わないと思っているけど。」

「そうね。デイビス侯爵ってお会いしたことある?」

「多分、僕の一歳下の学年だったかな。
 話したことはないけどおおらかな方だったと思うけど。」

「次の長期休暇に私たちが王都に向かうまでは、交流を図るって書いてあったわ。
 侯爵家も再度婚約解消にならないように、ご子息とルミアが合うか様子を見るのね。
 いいことだと思うわ。私たちが向かうまで付き合いが続いていたら婚約することになるわね。」


あのルミアが侯爵家に……と思うと心配だけど、あの子は意外とどこでも馴染みそうだわ。



数か月後、デイビス侯爵家の方々と会い、ルミアの婚約が結ばれた。

デイビス侯爵夫妻は、ルミアをとても気に入ってくれているのがわかったし、エリオット様も優しい人だった。
正直、前の婚約者である公爵令嬢はこのエリオット様のどこが気に入らなかったのかわからない。
確かにセドルとはタイプは違うけど。
がっしりとした騎士みたいな男性が好みだったってことかしら?


ルミアに、エリオット様のどこが気に入ったのか聞いてみた。
すると、『サニー』に似ていたからと言った。『サニー』とは領地でよく乗っていた馬の名前。
目が合うと喜ぶところ、まるで僕を選んでって縋るような目で見られたところ。
それが可愛かったのだとルミアは言った。

まぁ、それでいいのなら構わないけれど………



休暇が終わると、エリオット様が3年生、セドルが2年生、ミュイカ嬢が1年生になる。
ルミアの入学は来年で、エリオット様とは入れ違いになる。

翌年卒業したエリオット様は、ルミアが学生の3年間のうち何度も学園まで迎えに行って令息たちを牽制し続けたという。





 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】イアンとオリエの恋   ずっと貴方が好きでした。 

たろ
恋愛
この話は 【そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします】の主人公二人のその後です。 イアンとオリエの恋の話の続きです。 【今夜さよならをします】の番外編で書いたものを削除して編集してさらに最後、数話新しい話を書き足しました。 二人のじれったい恋。諦めるのかやり直すのか。 悩みながらもまた二人は………

半日だけの…。貴方が私を忘れても

アズやっこ
恋愛
貴方が私を忘れても私が貴方の分まで覚えてる。 今の貴方が私を愛していなくても、 騎士ではなくても、 足が動かなくて車椅子生活になっても、 騎士だった貴方の姿を、 優しい貴方を、 私を愛してくれた事を、 例え貴方が記憶を失っても私だけは覚えてる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるゆる設定です。  ❈ 男性は記憶がなくなり忘れます。  ❈ 車椅子生活です。

【完結】あなたのいない世界、うふふ。

やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。 しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。 とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。 =========== 感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。 4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

【完結】私より優先している相手が仮病だと、いい加減に気がついたらどうですか?〜病弱を訴えている婚約者の義妹は超が付くほど健康ですよ〜

よどら文鳥
恋愛
 ジュリエル=ディラウは、生まれながらに婚約者が決まっていた。  ハーベスト=ドルチャと正式に結婚する前に、一度彼の実家で同居をすることも決まっている。  同居生活が始まり、最初は順調かとジュリエルは思っていたが、ハーベストの義理の妹、シャロン=ドルチャは病弱だった。  ドルチャ家の人間はシャロンのことを溺愛しているため、折角のデートも病気を理由に断られてしまう。それが例え僅かな微熱でもだ。  あることがキッカケでシャロンの病気は実は仮病だとわかり、ジュリエルは真実を訴えようとする。  だが、シャロンを溺愛しているドルチャ家の人間は聞く耳持たず、更にジュリエルを苦しめるようになってしまった。  ハーベストは、ジュリエルが意図的に苦しめられていることを知らなかった。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

旦那様はとても一途です。

りつ
恋愛
 私ではなくて、他のご令嬢にね。 ※「小説家になろう」にも掲載しています

【完結】聖女は国を救わないと決めていた~「みんなで一緒に死にましょうよ!」と厄災の日、聖女は言った

ノエル
恋愛
「来たりくる厄災から、王国を救う娘が生まれる。娘の左手甲には星印が刻まれている」 ――女神の神託により、王国は「星印の聖女」を待ち望んでいた。 完璧な星印を持つ子爵令嬢アニエスと、不完全な星印しか持たない公爵令嬢レティーナ。 人々はこぞってアニエスを“救いの聖女”と讃え、レティーナを虐げた。 だが、本当に王国を救うのは、誰なのか。 そして、誰にも愛されずに生きてきたレティーナの心を誰が救うのか。

処理中です...