聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ

しゃーりん

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令嬢は公爵家に『棺』で無言の帰宅をした。

領地に埋葬するため、葬儀も領地でひっそりと行うことにしたという。

両親はなぜこんなことになったのか、研究者たちを不審に思っているようだった。


(ミミ、お父様は信じてくれるかしら?)

(大丈夫です!さあ、どうぞ正体を晒して差し上げてくださいませ!)
 

母は失意のあまり部屋に下がり、棺の前にいるのは父と兄だけだった。

令嬢は思い切って、声をかけた。


「あの……驚かずに聞いてほしいことがあります。」


二人に声をかけると、彼らは面倒がることなく耳を貸してくれた。


「今、私はミミの姿をしていますが、話しているのはリリスティーナです。」


姿はミミであるため、父と兄は訝しげに目を細めた。


「は……?何を言っている、お前はリリスが死んでおかしくなったのか?」


そう言ったのは、兄ラッセルだった。


「体は確かに死にました。その棺に入っています。ですが、精神だけ残ってしまったようなのです。おそらく、殿下の施した術のせいで。」

「術……?お前がリリスである証拠は?」

 
リリスティーナは家族しか知らないことを口にした。


「……だが、リリスの侍女であるミミが知っていてもおかしくはないが。」
 

確かに、ミミが知らないという証拠もない。


「では、その棺を開けてみてください。研究者たちは魔力の暴走で黒焦げだと言いましたが違います。
私は研究施設に閉じ込められてからずっと、繋がれたまま彼らにひどいことをされてきました。

指を切断されて元に戻せるのか、指が近くにない状態でも再生できるのかと彼らは試し続けました。
最期は足を切断され、お腹と胸を刺され、目を抉られています。
すぐに治癒しなければならないような致命傷を受け、私は生きることを諦めて治癒しませんでした。

治癒して治っても、失った血は戻らないのに、次の日はもっとひどいことをされる。
言葉にできない痛みをを繰り返し受け続け、忘れられないことに生きる希望を失いました。」

 
侍女ミミの姿でリリスティーナがそう語ると、父と兄は顔を真っ青にした。


「ま、まさか、そのような惨いことをアイツらが……?」

「怪我人や病人相手に、新たな魔力の精度を確かめていたのではなかったのか?」

「自分で自分を治す、人体実験の毎日でしたわ。」


つらかった。
初めはそんなにひどくなかった。
なのに、治すたびにアイツらは面白がって過激になっていった。
 
……今思えば、自分が死ぬのではなく、アイツらを皆殺しにしてやればよかった。

魔力で人を攻撃したことなどないから、思いつきもしなかった。



父と兄は、爪や指を怪我することも厭わず、棺の蓋をこじ開けた。

そして、中のリリスティーナの姿を見て、慟哭した。

 

 
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