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しおりを挟む棺の中のリリスティーナを見て慟哭した後、少し放心状態になった父と兄に触れてみた。
侍女ミミの体を使って治癒が可能であるかを確かめたかったから。
力を使ってみると、父と兄の爪や指の傷は綺麗に治っていた。
「ミミの体を使って治癒することもできるみたいだわ。」
だけど、体が少しだるくなった。
ミミは持っている魔力がそう多くはない。
リリスティーナの魔力は多かったため、体の魔力の多さで治癒の精度も変わるのかもしれないと感じた。
「……お前はリリス、なんだな。……ミミは?」
「ミミもちゃんといます。同居している状態ですね。ミミから出て行くとおそらく研究施設の敷地内に戻ることになると思います。」
「さっき言っていた術のせいか?」
「ええ。おそらく、王太子殿下があそこに私を閉じ込めたのだと思います。禁術ではないでしょうか。」
「お前に呪いをかけ、敷地内に閉じ込めた?」
「ええ。精神体では出ることができませんでしたが、ミミの中に入れば敷地から出られました。
ですが、この状態ですとミミが表に出てこられないようなのです。」
(お嬢様、私は構いません!)
「駄目よ。ミミの体なのだから、やるべきことを終えたら私は出て行くわ。」
「……ミミに言っているのか?」
「あ、そうです。心の中でも会話はできますが、思わず口にしてしまいました。」
「そうか……。そもそも、お前がいきなりあそこに入ることになったところからおかしい。お前が今後どうなるかわからないから、一通り話を聞いておきたい。」
父にそう言われ、リリスティーナは怪我を負った王太子殿下を見たところから話し始めた。
「ひと月前、王宮に向かうと前の馬車から背中に傷を負った王太子殿下が運ばれて行ったのです。私は驚いて一緒に向かいました。ですが、傷が深くて医師も手の施しようがないとおっしゃって。
私は殿下の手を握って、一心に祈ったのです。すると傷が塞がって殿下は命を取り留めました。」
「お前が治癒という未知の魔力を発現したことは聞いた。そして、自分の力を恐れて、使いこなせるようになるまで研究施設で過ごすという連絡を受けた。
私たちと話もせずに向かってしまい、何度も会わせてほしいと訴えたがお前が拒否していると聞いていた。」
「いいえ、殿下の指示で、強制的に研究施設に連行されたの。鎖に繋がれて実験を繰り返されたわ。」
父と兄は怒りの表情を見せた。
「何度も何度も訴えて、ようやく今日、少しだけ面会を許された。だが、結果はこうだ。」
父は棺を指してそう言った。
「お父様たちが来るということは知りませんでした。会わせる気が本当にあったのか、あるいは私を脅していうことを聞かせるつもりだったのか、どういうつもりだったのでしょうね。」
父が来ることを知っていれば、あと一日だけでも我慢して治癒をしていたかもしれないのに。
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