17 / 100
17.
しおりを挟む棺の中のリリスティーナを見て慟哭した後、少し放心状態になった父と兄に触れてみた。
侍女ミミの体を使って治癒が可能であるかを確かめたかったから。
力を使ってみると、父と兄の爪や指の傷は綺麗に治っていた。
「ミミの体を使って治癒することもできるみたいだわ。」
だけど、体が少しだるくなった。
ミミは持っている魔力がそう多くはない。
リリスティーナの魔力は多かったため、体の魔力の多さで治癒の精度も変わるのかもしれないと感じた。
「……お前はリリス、なんだな。……ミミは?」
「ミミもちゃんといます。同居している状態ですね。ミミから出て行くとおそらく研究施設の敷地内に戻ることになると思います。」
「さっき言っていた術のせいか?」
「ええ。おそらく、王太子殿下があそこに私を閉じ込めたのだと思います。禁術ではないでしょうか。」
「お前に呪いをかけ、敷地内に閉じ込めた?」
「ええ。精神体では出ることができませんでしたが、ミミの中に入れば敷地から出られました。
ですが、この状態ですとミミが表に出てこられないようなのです。」
(お嬢様、私は構いません!)
「駄目よ。ミミの体なのだから、やるべきことを終えたら私は出て行くわ。」
「……ミミに言っているのか?」
「あ、そうです。心の中でも会話はできますが、思わず口にしてしまいました。」
「そうか……。そもそも、お前がいきなりあそこに入ることになったところからおかしい。お前が今後どうなるかわからないから、一通り話を聞いておきたい。」
父にそう言われ、リリスティーナは怪我を負った王太子殿下を見たところから話し始めた。
「ひと月前、王宮に向かうと前の馬車から背中に傷を負った王太子殿下が運ばれて行ったのです。私は驚いて一緒に向かいました。ですが、傷が深くて医師も手の施しようがないとおっしゃって。
私は殿下の手を握って、一心に祈ったのです。すると傷が塞がって殿下は命を取り留めました。」
「お前が治癒という未知の魔力を発現したことは聞いた。そして、自分の力を恐れて、使いこなせるようになるまで研究施設で過ごすという連絡を受けた。
私たちと話もせずに向かってしまい、何度も会わせてほしいと訴えたがお前が拒否していると聞いていた。」
「いいえ、殿下の指示で、強制的に研究施設に連行されたの。鎖に繋がれて実験を繰り返されたわ。」
父と兄は怒りの表情を見せた。
「何度も何度も訴えて、ようやく今日、少しだけ面会を許された。だが、結果はこうだ。」
父は棺を指してそう言った。
「お父様たちが来るということは知りませんでした。会わせる気が本当にあったのか、あるいは私を脅していうことを聞かせるつもりだったのか、どういうつもりだったのでしょうね。」
父が来ることを知っていれば、あと一日だけでも我慢して治癒をしていたかもしれないのに。
1,465
あなたにおすすめの小説
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
婚約者様は大変お素敵でございます
ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。
あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。
それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた──
設定はゆるゆるご都合主義です。
二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。
【書籍化決定】愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる