聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ

しゃーりん

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父であるクレベール公爵が王城に行っている間、侍女ミミの中にいるリリスティーナは、棺の中の自分の姿を少しでも綺麗にしたいと思った。

とにかく無惨すぎる姿のまま、棺に押し込まれたといった感じだから。

再び、杭を打つにしてもせめて顔くらいは、と思い水を取りに行った。


しかし、その時、リリスティーナはミスをした。
部屋の入口に立っている騎士に、誰も通してはいけないと言わずに出て行ってしまったのだ。

まさか、その僅かな間に、リリスティーナの棺の中を見る者がいるとは思いもせずに。 

 

「いやーーーーーーっ!」


その叫び声が聞こえた時、リリスティーナは誰の声かわかった。

母だ。

慌てて部屋に戻ると、母が棺の前にいて、リリスティーナの遺体から目が離せないようだった。


「これはリリスじゃないわ。リリスじゃないの。ふふ。私の可愛いリリスティーナはどこ?お昼寝から起きたかしら?抱っこしてお散歩しましょうね。ふふふ。リリス、リリス、リリスティーナ、私の大切なあの子はどこ?ああ、お茶会かしら?綺麗なドレスを買いましょうね。ふふふ。リリス、リリス?リリスティーナはどこ?どこにいるの?ふふふ、あはははは…………」


母の気がふれてしまった。

目を覗き込んでも焦点が合わない。


「お母様、いえ、奥様、忘れるのです。何も見ていない。ここにも来ていない。あなたはまだお部屋で眠ったままなのです。」


リリスティーナは治癒が心に効くかはわからないが、必死でなかったことにしたいと願った。


「お部屋……眠ったまま?」 


そう言った母は、ストンと眠った。

効いた?

いや、心を操った?

そんな気がした。 


入口には数人使用人たちが集まっており騎士が中に入ることを止めていたようで、彼らに眠った母を部屋まで運ぶように頼んだ。


母が目覚めた時、覚えていなければリリスティーナの力は精神も操ることができる可能性があるとわかる。

 
自分が手にした力はいったいどういうものなのか、まだまだわからない。

精神体のままでは何もできないし、研究施設からも出ることもできないのだ。

力を悪用する気などない。
それでも、不気味な存在だと認識されれば、リリスティーナは放置されることになるだろう。


(お嬢様、黙っていればいいのです。心を操られているなどと誰も気づきません。)


ミミがそう話しかけてくる。

確かに、不気味だと感じた人のその心を操れば、リリスティーナが何かしたということも忘れてしまうだろう。
でもそれは手を出してはいけない領域なのではないか。
 

(ミミはそうは思いません。忘れることが必要な記憶もあるのです。)


確かに、母の心を操ったことに後悔はない。

心の傷を治癒するような行為であれば、力を使う自分を許してもいいだろうか。



 
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