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しおりを挟む国王陛下は息子ウォルタスがリリスティーナに施した術のせいで、研究施設にリリスティーナの精神が彷徨っている可能性があると言った。
クレベール公爵はもうすでにそのことは把握している。
国王陛下に今この場で伝えるべきかどうか、それを考えていた。
「リリスティーナが研究施設内に来た誰かの体を乗っ取ったとしても、本人がそう言わなければわからないということですよね?」
「それは……そうだ。リリスティーナ嬢のことを知らず、いや知っていても体を乗っ取られればその者は非常に驚くことだろう。その者が乗っ取られていたと口にできるのは、リリスティーナ嬢が体から出て行ってからということになる。彼女は善人だと私は信じているが、どうしたものか。」
研究施設内を立ち入り禁止にしても、もう既に誰かを乗っ取って外に出ているかもしれないし、悪いのはウォルタスでリリスティーナは被害者であるのに、誰も近寄らせずに精神を放置するなどと父親である公爵の前で口にするわけにもいかないのだろう。
「50年……50年も。」
国王陛下は頭を抱えてしまった。
「陛下、娘の精神のためにあの研究施設を取り壊して聖堂にしてはいただけませんか?」
「聖堂に?」
「ええ。娘が殺された忌まわしい場所ではありますが、精神が戻る場所でもあるのです。たとえ、ちょっといたずら心で誰かの中に入ったとしても、娘はあそこに戻るでしょう。
人に憑依できるということは、こちらがあの子の姿を認識できなくても、向こうは見えているはずです。
であれば、忌まわしい記憶のある場所を、塗り替えてやりたい。聖堂であれば、取り壊される恐れもなく娘の心も休まることでしょう。」
「そうだな。それはいい考えだ。」
「それから、事故や病気などで意識が戻らない者に娘が憑依できるかを試すことをお許しください。」
いつまでも侍女の体に居続けることを、リリスティーナ自身が望まないだろう。
ミミにはミミの人生があるのだから。
そうなると体を借りることのできる者となれば、意識不明者が適任なのではと考えた。
うまくいくかはわからないが、試す価値はあるだろう。
「もしうまくいっても、リリスティーナ嬢としては認めることはできないぞ?」
「わかっています。ですが、試してみたいのです。」
「……そうだな。50年は長い。誰かの体を借りれば会話もできるだろう。精神だけ彷徨っていると知りながら何もしないでいられるわけがないな。
それならばいっそのこと、ウォルタスの体を乗っ取るか?」
国王陛下は名案だと思ったようだが冗談ではない。
「娘を殺した男の顔を見ながら娘と会話をするなんてあり得ません。」
リリスティーナも嫌がるに決まっている。
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