44 / 100
44.
しおりを挟むリリスティーナはユリアとして暮らす日々を送っていた。
ユリアには毎日話しかけているが、彼女はよく眠っているようで、たまにしか返事がない。
疲れた心を治癒してやりたいが、そうして元気になれば乗っ取られることを嫌がる恐れもあるため、そのままにしている。
それに、あまり精神には干渉するべきではないから。
ある日、父に聞かれた。
「リリス、陛下がお前の治癒は怪我を治せるだけなのか、病気も治せるものなのかと聞いてきた。」
いつかは聞かれると思っていた。
国王陛下は、リリスティーナに申し訳ないと思いながらも治癒の力に期待していたから。
「怪我のみ。そうお伝えください。」
「……わかった。」
父は気づいているだろう。病気も治せることに。
(なぜ病気を治せることを隠したのですか?)
珍しくユリアが自分から問いかけてきた。
(私は、一人しかいないの。)
リリスティーナは、怪我人と病人に対し、自分の思うことをユリアに聞かせた。
(怪我というのは、思いがけなく傷を負うでしょう?そこに行かなければ、それをしなければ、怪我しなかった。命に関わるような怪我なら、私が近くにいない限り、その人が亡くなることはどうしようもないわ。それは誰もが諦めることができると思うの。)
(そうですね。残念ですが仕方のないことだと思います。)
(でもね、病気の場合は違うわ。具合が悪くなってから亡くなるまでに時間はあると思うの。だから私に助けてくれって言いに来る。でもね、私が違うところに行っていたら?
治癒する順番を決めていても、貴族が先だとか近くに具合の悪い人がいたからとか、順番通りにはいかず、そのせいで対応が遅れたと責められるかもしれない。
流行病が流行ったときは、どこから治癒するの?私は一人だし魔力にも限界があるわ。)
(もっと早く来てくれていたら、と責められそうですね。)
(ええ。それにね、近隣国の王族や有力な貴族に金を積まれたり有益な交渉をされたら陛下は断れずに受けてしまうわ。一度受けたら断りづらくなる。そんな利用のされ方は御免だわ。)
(キリがないですね。)
(私は500年後にはいなくなるの。その間に、治癒の魔力を持つ者が他に現れているかどうかはわからないけれど、病気に関しては医師や薬の発展向上を目指すべきだわ。)
(そうですね。……って500年後って何ですか?)
(言ってなかったかしら?私、500年間、精神体のまま過ごすのよ。こうして何人の女性の中に入って過ごすことになるのかしらね?)
(私に入っていれば、私も500年間、歳を取らなくなるとかないですか?)
(ユリアの体はちゃんと成長しているからその可能性はないわね。ほら、爪も髪も伸びているわ。)
(……………)
(ユリアが落ち込まないで?あなたやミミみたいな人の中に入って楽しく500年を過ごすつもりよ!)
ユリアはショックを受けて、再び眠った、というか自分の殻に籠ってしまったらしい。
優しいけれど、繊細な子だわ。
1,575
あなたにおすすめの小説
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
婚約者様は大変お素敵でございます
ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。
あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。
それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた──
設定はゆるゆるご都合主義です。
お姉様優先な我が家は、このままでは破産です
編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。
だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!
愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理!
姉の結婚までにこの家から逃げたい!
相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。
【書籍化決定】愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる