聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ

しゃーりん

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聖女とは、リリスティーナ様ただ一人のことを指すというのに、聖堂の名になっているだけで誰もその実態を知らないでいていいものなのかどうか、ラヴェンナは考えてしまった。
 

「ラヴェンナは魔力が多いから、なんとなく精神干渉されていることに気づいていたものね。
だから私が聖力を持った精神体であることにも驚かない。でもね、別人に体が乗っ取られることを許すって普通は難しいわよ?そんなことを公表していたら、聖女に立候補なんて怖くて誰もしてくれないもの。」

「そう言われれば、そうかもしれないですね?でも聖女に選ばれてから乗っ取られるということを知って聖女を辞めると言い出す方はいなかったのですか?」


新聖女に選ばれたイボンヌ様なら言いそうだけど。
 

「最初のころはね、不平不満を言ってばかりの子もいるわよ。だけどどうしてかしらね?願い事が叶った辺りから、みんな心が穏やかになっていくの。聖力の影響かもしれないけれど、聖女の活動を受け入れてくれる子ばかりよ。」


精神干渉がされているからではないのかしら?なんて。
それか、聖力のお陰で負の感情が浄化されるのかもしれないわね。


「あ、そうそう。聖女に関係した家はもう選ばれないってことはないわよ?」

「そうなのですか?てっきり、そうなのかなって。」

「言ったでしょう?候補になった子の思考を読んで選ぶのよ。魔力の多いあなたには精神干渉の効きが悪いだけよ。」 


そうなのね。


「ラヴェンナの家から過去に聖女になった子はね、実家の繁栄を願っていたわ。伯爵家から侯爵家になったのはそれも少し関係があるわね。」

「知りませんでした。ありがとうございます。」


同格のラウルードと婚約できたのも、侯爵家だからだもの。
ご先祖の方とリリスティーナ様に感謝だわ。


「ジュリエッタの方は少し複雑なのよね。聖女になった子があなたの先祖と結婚したの。でも願ったのは夫の幸せでね、夫は聖女になった妻の妹が本当は好きだったの。妻の代わりに妻の妹が子供を産んだわ。その子が今に続いているの。」
 
 
夫が恋したのは妻の妹。でも妻は夫を愛していた。
婚約解消してあげることはどうしてもできず、名ばかりでも夫の妻になりたかったのだ。
その代わり、妹を愛人にして子供を産ませることを許した。

聖女は乙女でなければならないと知ったから。
婚約解消をすれば、喜んで一緒になる二人を見たくなかった。
妻の座を渡さなかったのは、女の意地。

聖女の夫に愛人がいても不誠実だと思われないように精神干渉をしたらしい。
妹の産んだ子は公爵家で育てられ、愛人である妹の住まいは別。
聖女である妻が正妻だから。

妻は公爵家にも頻繁に帰り、妹の産んだ子を可愛がっていた。

そんな妻を見て、夫に心境の変化が訪れた。
それと同時に、なぜこんなことが許されたのかと疑問に思った。
夫は魔力が多く、疑問に思ったことで精神干渉が薄れたのだ。

やがて夫は愛人だった妹への気持ちが冷めた。
我が儘で金遣いの荒い彼女に嫌気がさしたのだ。

それを知った妻は、聖女を辞めることを選んだ。
夫の気持ちを自分に向けるために。

妻の思惑は成功し、聖女の代替わりを終えて戻ってきた妻を夫は愛するようになった。
子供を望むには難しい歳になっていたため、妹の産んだ子が跡継ぎとなったが問題なかった。

彼女は夫の愛が欲しかっただけ。それを手に入れたから。
 

 
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