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しおりを挟むいつしかユリアは、最初の聖女として認識され、約35年間聖女の役割を務めた。
侍女ミミは本来の侍女としてリリスティーナに仕え、護衛騎士はクレッセル。
この体制が長く続いた。
クレッセルはリリスティーナよりも10歳近く年長であったため、自分の後任者と二人体制での護衛をする時期もあった。
リリスティーナの護衛を辞めたくないと言っていたが、代替わりは必要だと納得させた。
その後も聖堂に来ては、男手が必要なことを手伝ってくれていたが、事故に遭い亡くなった。
治癒は間に合わなかった。
ミミとユリアは最期を迎える日まで聖人として聖堂で暮らし続けた。
ユリアの次の聖女は、学園から聖人になりたい希望者を募り、面接をした。
その頃には、聖力の影響か、聖堂内にいる者の思考がなんとなく読めるようになっていた。
その中から二人選び、聖人として聖堂で暮らしてもらった。
しかし数年後、一人が恋に落ち、反対をしたが聖人を辞めてしまった。
一度会った男は一目みて信用できないと感じたが、彼と結婚し、彼の子供が欲しいと言われてはどうしようもない。
そしてやはりその一年後には男に捨てられ、彼女は借金のために娼婦になったと耳にした。
これをきっかけに、リリスティーナは少し他人への精神干渉をすることに決めた。
聖女は基本一人に絞る。
そうでなければ、自由な時間ができた聖人に欲が生まれてしまうから。
リリスティーナが乗っ取っている間なら、出会いに浮かれることなどなくなる。
そして聖女になってもらう代わりに、聖女になる彼女らの願いを可能な限り叶えることにしたのだ。
例えば、領地の繁栄。
例えば、実家の失墜。
例えば、婚約者の幸せ。
例えば、浮気した元婚約者の醜態。
聖女として多くの貴族に会う機会は多く、領地にも向かう。
気づかれないように少し意識を変えることで、道を変えることになる。
こうして現在へと続いてきたのだ。
魔力の多い10人の令嬢が集まれば、誰かしら現状や将来に不満や不安を抱いているもの。
そんな令嬢を聖女に選ぶことにした。
聖女様はそう語り終えた。
ジュリエッタと共に聖女様の話を聞いていたラヴェンナは、聖女誕生の秘話を知り胸が苦しくなった。
「ありがとう、ラヴェンナ、ジュリエッタも。同調してくれたのね。」
「聖女様、リリスティーナ様。聖堂のお名前の方だったのですね。」
「ええ。ようやく150年。そのうちの100年はもう誰もリリスティーナを知らないわね。」
「ご実家、クレベール公爵家はこのことをご存知なのではないのですか?」
代々、親しくしてはいないのかしら?
「両親と兄夫婦と甥まではユリアの姿で会っていたし会いに行っても歓迎してくれていたわ。
両親が亡くなっても兄夫婦は仲良くしてくれたの。でもね、甥の結婚相手が私のことを怨霊だ幽霊だって怖がってしまったの。
聖女が聖力を授かることは受け入れられても、リリスティーナの精神が生きているということをどうしても受け入れられなかったのよ。
だから、彼女の精神に干渉して忘れてもらったわ。甥にもね、少し記憶を薄れさせたの。夫婦仲が私のせいで悪くなったら申し訳ないでしょう?」
実家が記憶を受け継いでくれなければ、だれの記憶にも残るはずがない。
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