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しおりを挟む一通り、話を終えてリリスティーナ様は微笑んだ。
「こうして聖女に選ばなかった子に昔話をしては自分が忘れないようにしているのよ。
あなたたちはそのうちこの話を自然と忘れるわ。誰かに話しても記憶には残らないでしょう。」
「王家は、代々伝えていないのですか?アレクサンドル殿下はご存知ではないようでしたが。」
知っていたのであれば、ジュリエッタ様に聖女になれと言ったりしなかったのではないかと思う。
ジュリエッタ様との子供ができなければ、妻の実家の爵位で王太子殿下に勝てないのだから。
「今の王家はウォルタス殿下が毒杯を飲むことになった経緯を知らないかもしれないわ。
彼は抹消された廃太子で未婚だったし、黒歴史だから。だからこそ伝えるべきでもあるのに。
『リリスティーナ聖堂』で聖力を授かる最長の期間が500年で、何年頃までのことかは伝わっているわ。」
「それでいいのですか?」
「ええ。ちょこちょこ精神干渉もしてしまっているから、覚えている人が少ない方がいいのよ。
いざとなれば、思い出させることも簡単にできるから。」
リリスティーナ様はある意味、無敵だわ。
「ひと月前、ここで私たちに声をかけた聖人の方はリリスティーナ様ですか?」
「あら。よくわかったわね。ええ。彼女に入っていたの。クレシアは聖女引退後の自分の手続きのために外出していたのよ。」
「あの時、聖人は耳がいいとおっしゃいましたが、リリスティーナ様だったら容易く私たちの会話を聞けていたのではないかと思いましたので。」
聖堂の敷地内では、リリスティーナ様は思考が読めると言っていたから。
「聖女になりたくないと聖堂では言えなくしているのですよね?」
「ええ。ラヴェンナみたいに、聖女が乙女でなければならないと気付いている子はほとんどいないの。それを聞いてしまったら、みんな聖女になりたくないと言うかもしれないでしょう?それは困るもの。
でも、心の中では『聖女になりたいのなら、どうぞ?私は遠慮するわ』と言っている子が二、三人は必ずいるわね。」
誰かと同じね。
「今回、ジュリエッタ様を聖女に選ぶことも考えられましたか?」
「え……?」
ラヴェンナの問いに、横でジュリエッタ様は驚きの声をあげた。
「そうね。イボンヌがいなければジュリエッタを選んでいたわ。あなたも徐々に気持ちが傾いていたでしょう?アレクサンドルと結婚しなければならないのなら聖女になってもいいかもって。
だけど、聖女になれなかったら婚約解消と言われて、その言葉に希望を持った。そうよね?」
「はい。殿下との結婚は解消できるものではないと諦めていました。聖女と王子妃を兼任する考えなど持っていませんでしたので、殿下がそれを望んでいると知り、聖女になれば領地に向かう期間もあって、彼と離れられていいかもと思ってしまって。
でも、聖女になれなければ婚約解消と言われ、それが一番いいわって。」
「イボンヌが聖女になることで、アレクサンドルとは婚約解消よ。おめでとう。」
「ありがとうございます。」
リリスティーナ様は、今回の聖女選定に満足しているらしい。
今からイボンヌに代替わりするというリリスティーナ様と笑顔で別れた。
迎えの馬車の前で、ラウルード様がラヴェンナを待ってくれていた。
ラヴェンナはジュリエッタ様ともここで別れた。
お互いに、晴れ晴れしい笑顔で。
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