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しおりを挟むイボンヌが35歳の時、リリスティーナはイボンヌの体から出た。
なんだかんだと彼女の中には17年いたことになる。
リリスティーナは聖堂に戻ったため、いきなりイボンヌは自分に戻って驚いたことだろう。
実は、最初の数か月は心の中でイボンヌと話をしていたが、彼女はとにかく煩かった。
乗っ取られたことにここまで頑なになってリリスティーナを拒絶した子は今までいなかったのだ。
アレクサンドルとの結婚という約束はちゃんと果たした。
だから、聖女としての役目を果たすために、しばらく体を借りると言っているのに、怨霊だの生霊だのと騒いだり、聖女の仕事がこんなに面倒だとは思わなかったと言ったりで、聖女を辞めると煩かった。
しまいには、『アレクサンドルに抱かれるのは私だからっ!』と、早く出て行けと騒がしくするので、リリスティーナは自分の目的を果たすまではイボンヌに眠っていてもらうことにした。
その間に、誰がリリスティーナに聖力を授けたか医務室の記録を見たり、書物を盗み見したりしたりしていた。ここで得た情報をイボンヌに知られたくなかったので眠らせたというのもある。
そうして過ごすうちに、イボンヌを最後の聖女にすることを決め、彼女を眠らせたまま中に放置していた。
聖女の聖力がどういうものだったのか、バレても構わないと思ったから。
イボンヌは自分に戻った後、リリスティーナの怨霊だの生霊だのに乗っ取られていたのだと言うはず。
人が変わったようなイボンヌを見て、アレクサンドルも国王陛下になった彼の兄も、前国王陛下もリリスティーナがどうやって亡くなったかを調べなおすはず。
その時に、リリスティーナが書き足した書物を見て事実を再度認識してもらおうと思った。
新たな聖女が現れても、同じことを繰り返してはいけないと忠告するために。
アレクサンドルとイボンヌが夫婦として上手くやっていけるかどうかは知ったことではない。
リリスティーナが眠らせていたせいか、イボンヌの性根は変わっていないだろうけど。
妊娠はもう無理だけど、ようやく念願のアレクサンドルに抱かれることもできるのだから、あ……アレクサンドルの性的不能の洗脳を解くのを忘れていた。
ま、いいよね?
イボンヌに迫られれば、精神干渉が薄れるかもしれないし。
今更アレクサンドルが浮気して別の女性を孕ませたとしても、甥はもう成人しているからアレクサンドルが国王陛下になることなんてないもの。
こうして久しぶりに精神体に戻ったリリスティーナは、当分来ることもない聖堂内を見て回った。
明日から、リリスティーナは別の女性になる。
その女性として結婚し、出産し、命を終えるその瞬間まで、その女性になる。
それはリリスティーナとしてではないから、許してくれるよね?クレッセル様。
そう花壇の花に向かって精神体のリリスティーナは話しかけた。
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