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しおりを挟むリリスティーナは、聖堂にやってきたセレンティナの顔を見て驚いた。
こんなにも穏やかな表情をした彼女を初めて見たからだ。
本気で死ぬことを考えていた時の表情はつらそうで、どこか無理した表情を作っていたが、リリスティーナに乗っ取られることで誰にも迷惑をかけずに眠りにつけることになったからだろう。
リリスティーナを待つセレンティナはとても美しかった。
精神体となっていたリリスティーナは、セレンティナの覚悟を見届けて彼女に触れた。
(セレンティナ、リリスティーナよ。)
(リリスティーナ様、……なんだか不思議な感じです。)
(ふふ。悪いけど、しばらくはこうして過ごしてくれないかしら?あなたの周りの人のことを教えてもらいたいの。)
(そうですね。いきなり性格が変わったと思われるかもしれませんね。)
セレンティナはリリスティーナに、家族や使用人たちとの接し方、学園での友人、そして婚約者のことを教えてくれた。
あとは中から援護されながら実践するしかない。
最初はあまり違和感のないように装い、徐々に性格を変えていくつもりだ。
というのも、セレンティナは優しすぎる。
今でも公爵令嬢だが、公爵令息に嫁ぐのだ。後の公爵夫人になる。
セレンティナが優しくて大人しいからこそ、学園でも他の令嬢に嫌がらせをされるのだ。
卒業するまでの半年で、優しいだけではないセレンティナの姿を見せるつもりでいる。
(私にもリリスティーナ様のような強さがあればよかったのに。)
(それはどうかしら?婚約者に浮気されてひどい扱いをうけて殺されたような女よ?)
治癒をせず自分で死を選んだのだが、殺されたようなものだと思っている。
(あの書物の記録は事実なのですよね?)
(父と兄の記録を読んだから、聖女がリリスティーナだとわかっていたのでしょう?)
(それはそうですが、少し信じられない思いもありました。)
(先週まで声をかけなかったものね。)
(私にとっては救いの声でした。)
(そう言ってくれると罪悪感も薄くなるわ。)
(私は感謝しています。罪悪感など持たないでください。)
(ありがとう。セレンティナとしてあなたの分も精一杯生きるわ。)
(ふふ。お願いしますね。)
心の中でそんな会話をしているうちに、クレベール公爵家へと着いた。
最後に訪れたのはいつだっただろう。
まだユリアに入っていた頃のことで、150年ほど前になるかもしれない。
両親や兄と過ごした懐かしい思い出が蘇る。
精神が生きているせいで、未練と後悔を手放せない。
そして、セレンティナになることで、違う人生も背負い込むことになるのだ。
それを覚悟して、リリスティーナは屋敷に足を踏み入れた。
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