聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ

しゃーりん

文字の大きさ
67 / 100

67.

しおりを挟む
 
 
セレンティナの家族は、両親と兄でリリスティーナと同じだった。

しかし、当然のことながら性格は全然違う。 

父親は、セレンティナに無関心とまでは言わないが、兄重視である。
愛人とまでは言えなくても、気楽な未亡人と適度に遊んでいるような人だった。

母親は、嫌なことには目を伏せるタイプである。
故に、セレンティナの対人恐怖にも気づいていながら、婚約解消など認めないのだ。  

兄は、自分のことで精一杯である。
しかも、昨年結婚した妻が妊娠しないことに毎月落ち込むような鬱陶しいところがある。 

義姉は、どこか一線を引いてセレンティアに接している。
悪い人ではないが、相談しにくい雰囲気の人である。
 

セレンティナが家族を頼れないのがわかる。
誰も親身に話を聞いてくれそうにない。
 
今思えば、リリスティーナの家族は特別仲が良すぎたと思う。
ユリアも驚いていたし、ミミもクレベール家は温かいと言っていた。

聖女として領地を回っている時も、親から体罰を受けたという貴族令息の治癒をしたこともあった。

政略結婚の多い貴族では、セレンティナの家族はごく普通なのかもしれない。

 
そして、セレンティナの専属侍女も職務をこなすだけの侍女で、心を許せる相手ではない。
嫁ぎ先にも連れて行こうという気にならないから。


周りがこんな感じだから、セレンティナは何度も危ない目にあってきたのではないだろうか。


これが現在のクレベール公爵家だと思うと悲しくなる。

でも、あと九か月もすればセレンティナは嫁ぐのだ。
なので今更、家族の仲を改善する必要性はあまり感じなかった。


(私は家族ってこんなものだと思っていましたけど。)


セレンティナがそう呟いた。
姿が見えれば、首を傾げていたことだろう。


(そうね。会話がないわけでもないし、蔑ろにしているわけでもない。暴力や高圧的な態度もないから”こんなもの”で悪いわけじゃないわ。家族の形はそれぞれ違うものね。) 


家では大人しくしていれば、セレンティナの中身が代わったことなど誰も気づかないだろう。
 
それでいいと思った。
 



学園に行くと、仲の良い友人を教えてもらった。
二人いて、どちらもおっとりとした伯爵令嬢だった。

だが、セレンティナがされている嫌がらせに気づいていながらも何事もなかったかのように装う令嬢たちで、心からの友人というには程遠かった。


(それが楽でよかったの。でもそれがダメなところでもあったわ。)


セレンティナがそう呟く。
彼女自身も、友人たちのことに深く関わらないようにしていたのだろう。
時間が経つほど関係性を変えるのは難しくなるから、見て見ぬふりが楽になったと言える。




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。 --注意-- こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。 一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。 二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪ ※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

婚約者から悪役令嬢と呼ばれた公爵令嬢は、初恋相手を手に入れるために完璧な淑女を目指した。

石河 翠
恋愛
アンジェラは、公爵家のご令嬢であり、王太子の婚約者だ。ところがアンジェラと王太子の仲は非常に悪い。王太子には、運命の相手であるという聖女が隣にいるからだ。 その上、自分を敬うことができないのなら婚約破棄をすると言ってきた。ところがアンジェラは王太子の態度を気にした様子がない。むしろ王太子の言葉を喜んで受け入れた。なぜならアンジェラには心に秘めた初恋の相手がいるからだ。 実はアンジェラには未来に行った記憶があって……。 初恋の相手を射止めるために淑女もとい悪役令嬢として奮闘するヒロインと、いつの間にかヒロインの心を射止めてしまっていた巻き込まれヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:22451675)をお借りしています。 こちらは、『婚約者から悪役令嬢と呼ばれた自称天使に、いつの間にか外堀を埋められた。』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/572212123/891918330)のヒロイン視点の物語です。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

婚約者様は大変お素敵でございます

ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。 あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。 それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた── 設定はゆるゆるご都合主義です。

私の願いは貴方の幸せです

mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」 滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。 私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。

巻き込まれではなかった、その先で…

みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。 懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………?? ❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。 ❋主人公以外の他視点のお話もあります。 ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。 ❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。

藍生蕗
恋愛
 かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。  そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……  偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。 ※ 設定は甘めです ※ 他のサイトにも投稿しています

処理中です...