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しおりを挟むセレンティナが妊娠したのは結婚後三か月目のことだった。
クローヴィスとは一日おきに交わっているし、避妊をしているわけではないので出来ていても不思議ではなかった。
むしろ、子供を産むことがリリスティーナがセレンティナとして結婚した目的であるため、すぐに妊娠してホッとしていた。
「最初は女の子がいいな。」
クローヴィスは子供を楽しみにしているようだった。
「どうして?」
「その方が兄弟の仲が良いと聞いたんだ。」
「そうなの?初めて聞いたわ。」
リリスティーナは兄と仲が良かった。
セレンティナは兄と仲が良いとは言えないが悪いわけでもない。
でも昔、自分が姉になりたいと思ったことはあった。弟妹が欲しいなって。
「女の子は小さい子を可愛がりたいらしいから。」
「下の子のいいお姉様になるということね。」
「その姿、想像しただけでも可愛いと思わないか?」
クローヴィスの願望に、セレンティナはクスクスと笑った。
兄が弟妹を可愛がる姿も十分に可愛いと思うけれど、クローヴィスは姉がいたらと憧れた時期でもあったのだろう。
クローヴィスは兄弟がいないため、できれば子供は二人欲しいと言っている。
リリスティーナとしては、子供に聖力があるとわかれば三人でも四人でも構わない。
それが使命だと思っているから。
セレンティナが妊娠していても、クローヴィスが浮気している様子はなく彼は意外と真面目な人だった。
公爵令息で、美形で、優しくて、真面目で。
比べるのは間違っているが、リリスティーナの元婚約者ウォルタス殿下とは大違いである。
そう言えば、ウォルタスとアレクサンドルは少し似た性格だったかもしれないと思った。
自分がすることは何でも許されると勘違いしていそうなところが。
アレクサンドルといえば、妻のイボンヌ。
彼女は離宮で療養することになったらしい。
最後の聖女となった彼女は、聖女であった時の記憶を喪失しているため、自分を18歳だと思い込み今は36歳になったのだが、そのことを認めようとしないのだとか。
そのため、王子妃教育も進まず、公務もできない。
そんな彼女だが、聖女として尽くしてくれていたことは間違いなく、アレクサンドルと離縁させるわけにもいかないのだ。
国王陛下には王子殿下が二人おり、王弟であるアレクサンドルの子がいなくても問題ない。
王太子殿下は昨年結婚しており、子供もそのうちできるだろう。
あわよくば自分が国王にと願い、王子、王弟として居座っていたアレクサンドルの野望は潰えたのだ。
しかし、王弟、兄の側近として働くアレクサンドルは役立っているため、離宮で暮らすのはイボンヌだけである。
今まで乗っ取ってきた聖女たちは、聖女を辞めても自分の道を歩み幸せを掴んでいた。
リリスティーナとしては、イボンヌを眠らせていたことで心の成長を促すことができず少し可哀想なことをしたとは思うが、王子妃として生きる道を放棄したのはイボンヌ自身である。
アレクサンドルの妻のままなのだ。
離宮での生活は退屈だろうけれど、食べることに困ることはないし危険なこともない。
ある意味、イボンヌを聖女に選ばなかった後の暮らしよりはマシだと思ってもらいたい。
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