聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ

しゃーりん

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唐突に自分を信頼してほしいと言ったクローヴィスはセレンティナを少し困惑させていた。 


『子供の頃、聖女に治癒してもらったことがあるんだ。』


その言葉は何を意味するのか。

もし、セレンティナが今ここで席を立ち、あなたをまだ信頼していないという意思を示しても、クローヴィスはその日が来るのを今までと変わらずに待ってくれると思う。 

彼は自分が知っていること、感づいていることを話す気でおり、途中でも最後まで話してもセレンティナが誤魔化そうとするならば、信頼してくれるその日を待ち続けると言いたいらしい。


「子供の頃、火の魔力を使ってテーブルクロスを燃やしてしまった。
両親や侍従、先生がいないところで使ってはいけないと言われていたのに、使い方を教わって嬉しくて。」


その気持ちはよくわかる。
クローヴィスは魔力が多いので、思った以上の火を出してしまったのだろう。

今の時代、魔道具に魔力を流すとなんでも使えるので実際に魔力を出すことは少ないが、使い方は学ぶ。


「テーブルクロスの火を消そうとして、両手で火を叩いて消した。火傷をしてしまった。
父は慌てて聖女様に治癒してもらいに行こうと言ったが、母は明日まで我慢しろと言った。
言いつけを破った罰と、怪我をすることの痛みを忘れないように、そして治癒してくださる聖女様への感謝の心を忘れないように、と。」 


義母は聖女が当たり前の存在だと思わないように、クローヴィスを諭したのだろう。 
聖女が領地に行っていて聖堂にいない間に怪我をした者は、医師の元へ向かうが治るには時間がかかる。
治癒は一瞬にして痛みも傷痕も消してしまうが、すぐに治してしまうと教訓にならないから。

 
「五日ほど前かな……」


クローヴィスの過去の話から、いきなり今に話が飛んだ。


「慌てたマーサと出くわして、アリアが薔薇の棘で指を怪我したので消毒を取りに行くと言っていた。」

 
セレンティナはドキンと胸が大きく鼓動したのを感じた。

薔薇には棘がある。
いや、薔薇以外でも勝手に触れない方がいい花や薬草は多いので、アリアローズには花を触らないように言い聞かせていた。
それでも子供はふと触ってしまうことがある。
五日前もセレンティナが長男レイノルズの方に気を取られた隙に、アリアローズは薔薇に触れてしまった。

侍女マーサは慌てて薬を取りに向かった。
その時にクローヴィスに話したのだろう。

アリアローズの指には血がプクッと出ていたので、ハンカチで拭おうとしたらアリアローズが言ったのだ。


「いたいのなおったー。」と。


血を拭うと、傷痕はなかった。

アリアローズが無意識に自分で治癒したのだ。
おそらく『痛いの治って』と願ったら治してしまったのだろう。

セレンティナはアリアローズに言った。


「治ってよかったわね。でもせっかくマーサが消毒を取りに行ってくれているから治ったことは内緒。
今度からは治す前に、お母様にこっそり聞いてくれる?『治していい?』って。」


まだ4歳にもならない子にこんなことを言っても忘れてしまうかもしれないとはわかっていたが、怪我をする機会など滅多にないのでその間に成長するだろうと思った。
理解できる歳になれば、使い方を話そう、と。
 

クローヴィスはその時の会話を聞いていた?

 
 
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