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しおりを挟むヴィオラは、夫であるオーリス王太子殿下をじっくりと監視するようになった。
本当に彼に心を許しても大丈夫なのか、疑い深く見ている。
リリスティーナからすると、ヴィオラの地位は脅かされることはないのだから、王太子殿下が裏切ったらもう相手をしないと割り切るだけでいいのではないかと思うのに……
結婚前に裏切られて臆病になったヴィオラは、早く自分に戻って母親として自覚させてやった方がいいのかもしれないとリリスティーナは思い始めた。
(ヴィオラ、申し訳ないんだけど、時間切れだわ。)
(時間切れ?)
(ええ。500年が経つまでもう少し時間があるはずだったんだけど、そろそろみたいなの。)
(500年……えっ、あれってそろそろなんですか?)
ヴィオラは終わりがいつかを知らなかったらしい。
500年間、リリスティーナが精神体になっていることはクレベール家の記録に残っているからそれで知ったけれど、いつまでというのは考えていなかったのだろう。
それで、三人目も、とか言ったのね。
(だからね、お別れだわ。最後は聖堂で迎えたいし。)
(……私の身勝手なお願いのために貴重な年月を無駄にさせてしまいましたか?)
いやいや、貴重じゃないから。
それどころか、最後にヴィオラと過ごせて楽しかったから。
(いいえ、役に立てて嬉しかったわ。あとはこの子を産む経験をあなたがして、王太子とのことはまだ時間はあるわ。)
(まだ悩んでいてもいいのでしょうか。)
(そんなに悩むなら、一度抱かれたらいいのよ。そうしたらわかるわ。)
肌が触れ合うと心の距離も近づくわ。
(抱かれる……)
(女にも性欲はあるのよ。ヴィオラの場合、王太子しか相手がいないのだから、彼に満足させてもらわなきゃ。ヴィオラが可愛く『愛人なんて作らないで私だけにして!』って言えば喜ぶに決まってるわ。)
(本当に?)
(ええ。男に触れられて愛されると、肌に張りも出るし綺麗でいられるわ。あなたのために、王太子を繋ぎ止めておくべきだわ。)
(そうなのですね。)
ごめんね、ヴィオラ。
ちょっと悩み続けるあなたの思考が面倒になって誘導しちゃっているわね。
でも事実よ。
妻が魅力的でいれば、夫は浮気せずに求めてくれるわ。
夫婦円満のためにはそれが一番じゃないかしら?
それに、王太子殿下には精神干渉してるから、浮気はしないしね。
だから、あなたはそんなに悩む必要はないの。
もう王太子殿下に嫌悪感はないのだから、触れられても大丈夫なはずよ。
勇気を出せば、これからも仲のいい夫婦でいられるわ。
(わかりました。リリスティーナ様のお陰で殿下と生きていく覚悟ができました!殿下が浮気したら私も浮気してやるくらいの気持ちでいます!)
急に気合いが入ったわね……いいけど。
(じやあ、今日が最後ね。明日、目覚めたらあなたがヴィオラよ。)
(わかりました。頑張ります!)
その日、リリスティーナはヴィオラとしての最後の一日をいつも通りに過ごした。
お別れを告げてヴィオラが眠り、リリスティーナは精神体に戻った。
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