あなたは僕の運命なのだと、

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 ──力の入らない体を煌に丁寧に洗ってもらい、湯船にゆったりと浸かりながら、疲れを取ったあと。
 またしても煌に抱っこで部屋まで運んでもらった唯は、煌が綺麗に整えてくれたベッドに突っ伏してはサラサラなシーツの感触とふわふわなベッドに、気持ち良さそうに息を漏らした。

「ふぁぁ……。……煌くん、何から何まで、ありがとう」

 だなんて唯がモソモソと毛布の中に入り、顔だけ出しながら恥ずかしそうにお礼を言う。
 そんな唯の様子を笑いながら、煌はベッドに腰掛けた。

「ん。電気、全部消そうか?」
「ライトは点けたままにしてて良い?」
「もちろん」

 部屋の電気は消しても良いが、煌が飾り付けてくれたフェアリーライトは点けたままにして欲しいとお願いする唯の可愛さ。
 それに煌は破顔しながら立ち上がり、部屋の電気を消したあと、唯の隣へと潜り込んだ。

「ありがとう」
「うん。おいで、唯」

 煌が返事をしながらも寝転び、おいで。と腕を広げる。
 それに唯がパァッと表情を明るくさせ煌の胸に顔を埋めては、えへへ。と幸せそうにぎゅむぎゅむと抱き付けば、それがやはりとても可愛くて、煌は唯の旋毛にキスをしながら微笑んだ。

「ふふふ」
「うん?」
「幸せだなぁって」

 番になったばかりで未だどこかふわふわとした心地のまま、けれども煌と魂の深い所で繋がっている満ち足りた幸福感が全身を包み、唯が心からの笑顔で煌を見上げる。
 そのキラキラとした笑顔がとても眩しくて、煌も同じように笑いながら、唯の鼻先と自身の鼻先を触れ合わせた。

「大好きだよ、唯」
「僕も大好き」

 二人して愛を囁き合い、ふふふ。と顔を見合わせて笑う。
 そんな穏やかな空気が流れるなか、唯は煌の頬にすりすりと顔を押し付けた。

「やっと夜も一緒に寝れるの、嬉しいね!」
「そうだな」
「えへへ!」
「今日はヒヨコと狼の姿で寝ようか?」
「えっ!?」
「もう番になったんだし普通に寝ても誰にも怒られないけど、最初の夜は唯が一番安心して寝れるようにしようよ」

 だなんて、今までお昼寝だけしか許されていなかったが正式に番になった今は何のルールもないと煌が笑い、そんな煌の優しさに唯が嬉しそうにコクコクと頷いたが、しかしすかさず煌はまたしても口を開いた。

「あ、待って唯、その前に指輪外さないと」
「……あぅ、そうだね……」

 嬉々としてすぐにヒヨコになろうとした唯をすかさず止め、唯の指から慎重に指輪を抜いてゆく煌。
 もちろんヒヨコになってしまえば指輪をしていられるわけもないので仕方ないのだが、もう既に自身の一番大切な宝物になった指輪を抜かれた唯はむくれたまま、煌がリングボックスに仕舞うまでジィーッと見つめたあと、ようやく気を持ち直すかのよう、パシパシと両頬を叩いた。


 それからすぐさま目を閉じたかと思うと唯の体がふるふると震え、そこにはいつものように小さなヒヨコが現れた。

「──ピッ! ピイッ!」

 自身が着ていた服に埋もれたまま、ニッコリと笑顔を浮かべた小さなヒヨコもとい、唯。
 それがやはりあまりにも可愛くて、煌は唯を潰さぬようゆっくり優しく撫でたあと、自身も狼の姿へと変化した。

「……グル……グルル……バゥッ」
「ピッ、ピヨッ!」

 煌の鳴き声に答えるよう、唯が大きな声でピヨピヨと鳴く。
 そんな唯に煌はやはりいつものよう唯の体がべちゃべちゃになるまでくまなく舐め、満足したあと、唯を包み込んだ。

 少しだけ嫌そうな顔をした唯が唾液でべしゃべしゃになった体をフルフルと震わせ、しかし煌の艶々で柔らかな毛並みに包まれて眠るのは大好きだと、自身のベストポジションを探るようモゾモゾと動いては、とびきりの場所を見つけ目を閉じた。

 肺いっぱいに満ちる大好きな匂いと、煌の温かな体。

 そして頬を擽る煌の滑らかな毛並みに、唯は最高な気分のまま、ゆっくりと夢の中へ落ちていったのだった。




 ***



「──ガウッ、ワフッ」

 耳元で大きくフガフガ響く鼻息と、ぐっしょりと濡れていく体。
 それに唯がしょぼしょぼと目を開け、視界いっぱいに広がる湿った鼻先を見た。

「……ピイッ……」

 弱々しく出る声は甲高く、……ああ、昨日はそのままヒヨコの姿で寝たんだった。と唯は意識をだんだんと覚醒させながら、目の前にある黒い鼻先を突ついた。

「バウッ」

 唯が起きたのに気付いた煌が嬉しげに吠え、それからブルルッと体を震わせる。
 そうすればみるみるうちに美しい狼から凛々しい青年の姿へと変わった煌は、ヒヨコになったままの唯の体にキスをした。

「唯、おはよう」
「ピイッ!」

 煌のあいさつに答えるよう軽やかに鳴いた唯も、しかしすぐにヒヨコから元の姿へと戻り、煌を見つめて微笑んだ。

「おはよう、煌くん」

 そう少しだけ掠れた声で唯がおはようと笑えば、唯を抱き寄せそのままキスをしてくる煌。

「んっ」

 その突然さに唯は一度目を瞬かせ、けれども、番になるとこんなにも素晴らしい朝の目覚めを迎えられるのか。と言わんばかりに幸せそうにとろんと瞳を蕩けさせた唯は、自らも煌の唇に唇を重ね、煌の首に腕を回した。


「ん、む、は、ぁん、あっ……」

 不意に、くちゅり。と絡ませていた舌が離れ、不満げに煌の舌を追う唯。
 しかし煌は唯の唾液で濡れた唇を優しく指で拭ったあと、唯の頬を撫でた。

「これ以上すると止まれなくなるから」
「……」
「そうだ。唯、首の後ろはどうだ? まだ痛む?」
「……もう痛くないよ」
「良かった。どうなってるか見てみたい?」

 止まれなくなって何か不都合でも? と言わんばかりにキスを中断された唯が唇を尖らせたが、そんな唯の扱い方を心得ている煌がすぐさま話を方向転換し、唯に問いかけてくる。
 そんな煌の思惑も知らぬまま、唯はすぐさま表情を明るくさせ、頷いた。

「うん! 見てみたい!!」

 そう笑顔でコクコクと頷いた唯が自身のうなじをそろりと撫でれば、少しだけ歯の形の凹みがあって。
 それがとても嬉しく、じゃあ洗面所に行って見てみようか。とボクサーパンツだけを履き立ち上がって手を引く煌に促されるまま、唯は裸の体を毛布で包みベッドから軽やかに飛び起きた。





「──どう?」
「ふぁぁ……!! すっごく綺麗に歯形がついてる!!」

 だなんて、洗面所の大きな鏡の前で感動の声を上げる唯。
 その声に、唯の後ろに立ち手鏡を持ってうなじを確認させるべく見せていた煌は、安堵の笑みを浮かべた。

「綺麗に噛めて良かった。傷ももう塞がってるし、大丈夫そうだな」
「うん!! ……僕が噛んだ場所、変な位置じゃない? 大丈夫?」

 鏡越しに、唯が煌の首筋を見ては不安そうにする。
 その表情が可愛くて、煌は手鏡を洗面台の横に置き、唯の腕を取って振り向かせた。

「どこも変じゃない。一番良い場所だよ」

 そう言いきった煌が唯を抱き締めれば、唯は嬉しそうに花が綻ぶような笑顔を見せ、背伸びをしながら煌の首に腕を回した。

「えへへ、僕ら、本当に番になったんだね」
「そうだよ」

 端から見れば何ともお粗末なすれ違いにより紆余曲折ありつつも、無事にこうして番になれた喜びで、二人が笑い合う。
 それからすぐにちゅっと唇にキスをしてくる唯に、……すっかりキスするのが気に入ったみたいだな。と煌は唯の可愛さに破顔しながら、唯の体を引き寄せてキスを深めた。

「ぁ、んっ」

 くちゅ。と舌が絡まる水音と、唯の甘い声が響いては狭い洗面所に響いていく。
 煌の腕がするりと唯の体を這い、毛布ごと抱きすくめて抱き上げた煌は唯をしっかり腕に抱え、ちゅっと最後に可愛いリップ音を立てて唇を離しながらも、笑った。

「ベッド戻ろうか」
「うん!」
「大学には番休暇申請出さないとだな」
「っ、そうだね!」

 番になったばかりだとどうしてもお互いから離れる事が苦痛になる為、世の中には番申請なるものがあって。
 それを事前に、もしくは後日にでも職場なり学校なりに届け出すれば最長で一ヶ月間公休扱いになる為、煌と唯は今日からしばらくはずっと一緒に居られると嬉しげにしながら、足取り軽やかに自室への階段を上っていったのだった。




 
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