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カサブランカ
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酷暑だった夏も過ぎ、道行く人にアースカラーが増えていく。
⭐
雪子は週に二度、隆道のマンションを訪ねて恋人との幸せな時間を過ごす。
だらしない夫に呆れながらも、家事は妻の役目と思い、家の中の事を一生懸命やったけど、そんな事を夫は少しも求めてなかったことは思い知らされた。
綺麗好きな隆道は、掃除も洗濯も苦もなくこなし、雪子に何もさせなかった。結婚生活で煮え湯を呑まされた雪子は、隆道の恋人として存分に女でいられた。
⭐⭐
ふたりで愛を確かめ合った後
隆道の胸に寄り添いながら、なんとはなしに問い掛けた。
「隆道さんの趣味はなあに?」
「ん? 趣味? そうだねぇ。今はお酒かなぁ」
隆道は、雪子と会わない日は一人で居酒屋に行き、食事をしながらビールを飲む。
土曜の午後は
行きつけの銀座のbarで、赤ワインをボトルで頼んでゆっくり過ごす。
店の名前は『カサブランカ』といった。
『カサブランカ』はジャズ専門のバーだった。
中央のビアノを挟むようにソファー席があり、何組かのグループが思い思いに飲んでいる。
夕方、お店専属のピアニストがくると、渡した楽譜の伴奏でお客がジャズを歌い上げる。
雪子が連れて行って貰った時も、既に歌っている人の後ろには、楽譜を持った女性が何人も並ぶほど盛況だった。
ピアニストの休憩が入り、皆、元居た席でお酒や会話を楽しみ始める。
「隆道さんは歌わないの?」
「僕はもう酔っているからねえ。歌わないよ」
そう言いながら、隆道は近くにあったギターを手に取った。
「健ちゃんのギター借りていいかなぁ?」
「どうぞどうぞ」
休憩中の若いピアニストが笑顔で答えた。
酔っていると言いながら、彼はギターを少し爪弾いて指馴らしをする。
やがて、誰でもが知っている有名な曲を奏で始めた。
ジャズ専門の店に
なんとも言えない哀愁を帯びた曲が流れる。
『禁じられた遊び』
店にいる全員が聞き惚れた。
⭐
「なんだか場違いな曲だったね。帰ろうか」
盛大な拍手を浴びた隆道は、はにかんだ顔をして雪子に言う。
「もう帰るのかい?珍しいね」
隆道の友人、白井が声をかける。
隆道は微笑むばかりで答えない。
白井は雪子に囁いた。
「彼はね、帰りたくない人なんだよ。
彼を宜しく頼むわ」
「ん? 彼女に何を言ったの?」
不審そうに白井と雪子を見詰める隆道に
白井はワイングラスを掲げてこう言った。
「君の瞳に乾杯‼」
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雪子は週に二度、隆道のマンションを訪ねて恋人との幸せな時間を過ごす。
だらしない夫に呆れながらも、家事は妻の役目と思い、家の中の事を一生懸命やったけど、そんな事を夫は少しも求めてなかったことは思い知らされた。
綺麗好きな隆道は、掃除も洗濯も苦もなくこなし、雪子に何もさせなかった。結婚生活で煮え湯を呑まされた雪子は、隆道の恋人として存分に女でいられた。
⭐⭐
ふたりで愛を確かめ合った後
隆道の胸に寄り添いながら、なんとはなしに問い掛けた。
「隆道さんの趣味はなあに?」
「ん? 趣味? そうだねぇ。今はお酒かなぁ」
隆道は、雪子と会わない日は一人で居酒屋に行き、食事をしながらビールを飲む。
土曜の午後は
行きつけの銀座のbarで、赤ワインをボトルで頼んでゆっくり過ごす。
店の名前は『カサブランカ』といった。
『カサブランカ』はジャズ専門のバーだった。
中央のビアノを挟むようにソファー席があり、何組かのグループが思い思いに飲んでいる。
夕方、お店専属のピアニストがくると、渡した楽譜の伴奏でお客がジャズを歌い上げる。
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「隆道さんは歌わないの?」
「僕はもう酔っているからねえ。歌わないよ」
そう言いながら、隆道は近くにあったギターを手に取った。
「健ちゃんのギター借りていいかなぁ?」
「どうぞどうぞ」
休憩中の若いピアニストが笑顔で答えた。
酔っていると言いながら、彼はギターを少し爪弾いて指馴らしをする。
やがて、誰でもが知っている有名な曲を奏で始めた。
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なんとも言えない哀愁を帯びた曲が流れる。
『禁じられた遊び』
店にいる全員が聞き惚れた。
⭐
「なんだか場違いな曲だったね。帰ろうか」
盛大な拍手を浴びた隆道は、はにかんだ顔をして雪子に言う。
「もう帰るのかい?珍しいね」
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隆道は微笑むばかりで答えない。
白井は雪子に囁いた。
「彼はね、帰りたくない人なんだよ。
彼を宜しく頼むわ」
「ん? 彼女に何を言ったの?」
不審そうに白井と雪子を見詰める隆道に
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「君の瞳に乾杯‼」
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