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しおりを挟む結婚しても生活は変わらないと思うけれど、家庭を作るなら生活を変える必要がある。きっと、そのときは、私が変わるだけだ。よーちゃんが変わるとは思わない。
「別れないためには、何が必要?」
「抽象的すぎる質問だよね。そんな質問を仕事ではしないでしょ?」
「オレには別れる理由がないからだよ。仮説を立てることができない」
「損切りだよ」
「え?」
「不要な部門を切り捨てるの」
傷つけると分かっていても、その言葉を使おうと決めていた。
「そう言おうって決めてきただろ」
そのまま指摘されて、一瞬動揺する。
今度は別の方向から攻めていこうと切り替えることにした。
「恋人いるのかって聞かれることもあるけど……。いるって言うには会っていないし、恋人って何だろう、って言うくらいに、私達会ってないよね?」
「恋人の存在を答えるのに困るから、逆に現実を変えていこうっていうだとしたら、理解できない」
「それは、よーちゃんの方もそうじゃない?色々誘いがかかったときに、恋人がいるという意味。そこでシャットアウトしてしまう可能性にもったいなさを感じないの?」
「……要するに?」
「あまり会えないし、先が見えない。それを続けていく意味が分らない」
「長期プランで見れば今が、停滞期だとしたら。今切り捨てるのは最良じゃない」
「理論上はね。感情的には、もう無理」
肌恋しくなるときに恋人がいないなら、恋人を作れる。なんなら一回切りの遊びだって出来ると思うけれど、恋人がいるという事実は、寂しさを伴うとたちまち恋人への期待を募らせる。期待をしないために、他で遊ぶ、それを許してくれるなら、続けられるだろうか?
「喧嘩があるわけでもなければ、仲が悪いわけでもない。単純に会う時間が少ないだけ。別れる理由にならない」
単純に会う時間が少ないだけ。その通りだ。
もう少し攻めてみよう。別れたいわけじゃないけれど、続けていくのが辛い。よーちゃんを引き離す言葉を考えたら、まったく思っていないことを言うしかない。
「じゃあさ、お互いにセフレを作ることを許可しよう」
「……」
「人肌に触れたいときあるじゃん。そんなときに会えないなら、代替を許そうよ」
「……」
「……」
「男出来た?」
「これから出来る」
無言で見つめ合うこと十秒。
「もっと相性がいい人、向いている方向が一緒の人と付き合えばいいよ。よーちゃんならいい人見つかるよ」
初めて出来た彼氏とずっと付き合い続けている。よーちゃんも多分そうだ。
付き合っている間に浮気をしていなければ、だけど。
「答えは通話でもメッセージでもいい。忙しいから直接は無理だって分かってるから」
今日は私が先に席を立つ。そうすると決めていたからだ。
ご飯を食べていても、ホテルにいても、いつも置いてけぼりの私でも、最後くらいはおいていきたい。
最後になって子どもじみた仕返しをしようだなんて思う私は、浅ましいと分かっているけれど。
彼の視線がまとわりつくのが分かった。
こんな堅苦しい会話をする関係じゃなかったんだけどね。
学生の頃は二人でお金を切り詰めてレジャーにいったり、旅行に行ったりしていた。二人とも何もしない時間が好きという性格で、基本的には無趣味だ。
よーちゃんといれば無言も苦じゃなかったし、一緒にいるだけで幸せだった。
そもそも会えない今、何かを望むのは難しい。目先の利益を優先することは、仕事ならしない。監査部門でビシバシと業績を見て、切るかどうかを検討している。
けれど、私生活ではそんなに割り切れない。
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