不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん

文字の大きさ
1 / 61

第1話 何か揉めてるが、わたしは知らんっ!

しおりを挟む
「あのぉ……もしもし? わたしは早く森へ帰りたいんだけど……」

 サラは戸惑いながらも目の前にいる大人たちへ訴えた。
 話題の中心であるにもかかわらず、傍観者にされている幼女は転生者だ。
 
(異世界転生で、わたしは3歳児になってしまったから大人には絡みにくいなぁ)

 何か知らんが大人たちが揉めている。
 サラは銀髪ちびっ子の姿で、それを眺めていた。
 前世からだいぶ縮んでしまった体には、白地に銀刺繍の入ったゆったりとしたドレスを着ている。

「大神官っ、勝手なことを言うんじゃないっ!」
「だから聖女さまには、仕事をしていただかないと!」

 サラが着せられた銀刺繍の入ったストンとしたドレスは聖女の聖衣らしい。
 白いドレスのウエストあたりを小さな手で引っ張って、サラはまじまじと見ている。

「だいたいお前が転送先を王城ではなく、森へ変えたからこんなことになったんだ! 今さら図々しいっ!」
「ですが王子。事前に神殿への相談もなく、聖女召喚を決められたら問題になることは分かっていたでしょう?」
「聖女召喚は、そもそも神託だぞ⁉ 相談するもなにもないじゃないかっ」

 どうやら権力者の間で意見の食い違いがあるらしい。
 サラは頭をポリポリと掻いた。
 ブラック企業に勤める社畜OLが、人生逆転を狙って結婚したのに不倫されて離婚して、挙句うっかり死んでしまい、哀れんだ女神が異世界へ幼女の姿で転生させてくれたのだ。

 サラは前髪ぱっっん長髪の銀髪のちびっ子姿で可愛い。
 スキルもたっぷり持たされた上に、聖女である。
 これは幸せになれる予感しかしない。
 喜び勇んで転生したのに、王国内で大人同士が揉めていて、大切にしてもらえていないのである。
 
 聖女として召喚されたはずなのに気付いたら草原の真ん中に立っていたサラだが、なんやかんやあって今は王城の一室にいる。
 シャンデリアの下がる室内はとてもゴージャスだが、揉める大人は見苦しい。

「サラさまは、聖女だぞ? それをあんな森に……」
「あんな森とはなんですか、王子っ! 聖獣さまたちが住まわれる聖なる森ですぞ⁉」

 言い争う王子と大神官に向かって、キラキラの王冠を被った男が叫ぶ。

「もうどっちでもいいから、早く瘴気をなんとかしてくれっ! このままでは王国が大変なことになってしまうっ!」
「父上っ! 身勝手ですよ、そんな言い方は。サラさまを召喚しておいて森へと追いやったのは、父上も同意していたことでしょう⁉」

 王子に詰め寄られ、国王は言い訳するように小さな声で訴える。

「だからあそこは聖なる森で……」
「いくら聖なる森でも、そこで瘴気払いや魔獣退治ができるわけじゃないでしょう⁉」

 大神官が笑いながら言う。

「それもサラさまがなんとかしてくれるでしょう。なんといっても聖女ですから」
「スキルも山盛りてんこ盛りじゃからの。いやぁ心強い」

 大神官と国王に向かって王子は叫ぶ。

「だから、その聖女を森へ追いやったのは誰だよ⁉」
「いやだなぁ、王太子。過去の失敗をグチグチと。そんな器の小さなことでは国王という大役は務まりますかな?」

 大神官はヘラヘラしている。
 さっきからずっと揉めているが、話は一向に進んでいかないのだ。

(あーイライラしてきた。我慢できないっ! コレ、さっさとやること済ませちゃったほうが早くない⁉)

 サラは幼女化に伴って短気になっていた。

「オジサンたちウルサイっ! もういいっ! わたし、さっさと魔獣退治でも、瘴気払いでも済ませるっ!」

 王子は青ざめ、神官たちは表情を輝かせた。

「なんとお心が広いっ」
「さすが聖女さまっ!」

 国王さまもニコニコだ。

「これで王国は安泰だ」
「父上、そういうわけにも……」
「お前は過去の失敗を引きずり過ぎだ。過去は変えられないし、お礼はたっぷりする」
「えー、それで済むような失敗ですか?」

 王子はまだ納得していないようだ。

 なぜこんなことになってしまったのか。
 サラは3歳児らしからぬ頭痛を感じながら、運命が変わってしまったあの日を思い返した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』

とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~ -第二部(11章~20章)追加しました- 【あらすじ】 「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」 王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。 彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。 追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった! 石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。 【主な登場人物】 ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。 ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。 アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。 リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。 ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。 【読みどころ】 「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠
ファンタジー
 聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。  異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。  彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。  迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。 「絶対、誰にも渡さない」 「君を深く愛している」 「あなたは私の、最愛の娘よ」  公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。  そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?  命乞いをしたって、もう遅い。  あなたたちは絶対に、許さないんだから! ☆ ☆ ☆ ★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。 こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。 ※9/28 誤字修正

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜

ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました 誠に申し訳ございません。 —————————————————   前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。 名前は山梨 花。 他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。 動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、 転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、 休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。 それは物心ついた時から生涯を終えるまで。 このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。 ————————————————— 最後まで読んでくださりありがとうございました!!  

お言葉ですが今さらです

MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。 次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。 しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。 アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。 失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。 そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。 お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。 内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。 他社サイト様投稿済み。

この優しさには絶対に裏がある!~激甘待遇に転生幼女は混乱中~

たちばな立花
ファンタジー
処刑された魔女が目を覚ますと、敵国の王女レティシアに逆行転生していた。 しかも自分は――愛され王女!? 前世とは違う扱いに戸惑うレティシア。 「この人たちが私に優しくするのは絶対に何か裏があるはず!」 いつも優しい両親や兄。 戸惑いながらも、心は少しずつ溶けていく。 これは罠? それとも本物の“家族の愛”? 愛を知らないレティシアは、家族の無償の愛に翻弄されながらも成長していく。 疑り深い転生幼女が、初めて“幸せ”と出会う―― じんわり心あたたまる、愛されファンタジー。 他サイトでも掲載しています。

処理中です...