不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん

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第22話 聖獣の森に家建てるよ 1

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(まさか、このわたしか家を建てることになるなんて!)

 サラは驚きつつもルンルンしていた。

(1日を楽しみたいなら本を読み、1年を楽しみたいなら種をまき、一生を楽しみたいなら家を建てなさい。みたいな宣伝があったよーな気がするなぁ~。なんか女神さまの加護と聖獣の森の組み合わせだと、順番逆かもしれないけど)

 などと思いつつ、サラは無限収納庫をゴソゴソと漁る。
 普通の収納庫は探しても家は出てこない。
 出てきたところでテントくらいのものだ。
 だがサラが漁っているのは女神さまのくれた無限収納庫だから、いろんな物がしまわれちゃっているのである。

「あった!」

 サラは輝く笑顔で様々な家がセットになった玩具のようなものを無限収納庫からひっぱりだした。
 
『なにそれ?』

 クロがサラの手元を覗き込み、オカメちゃんも「びぎゅっ?」と銀髪の上で首を傾げている。
 サラが手に取ったのは、アタッシュケースのような形をした長方形の透明ケースだ。
 なかには透明の仕切りがあって、幾つかの玩具のような家が収められている。

「えっとね……好きな場所に置いて展開できる魔法のお家セット、って書いてあるよ。自分好みの家を簡単に建てられるみたい」
『へー便利だね』
「びっぎゃっ」

 興味津々に魔法の家を見つめるクロやオカメちゃんに対して、ピカードは懐疑的だ。

『家なんている? 森があるのに?』

 ピカードはブツブツ言いながら首を傾げている。

『家かぁ。家……建物といえば、人間の町にあるイメージしかないな?』
『えっ、バーンズは家を見たことがあるの?』

 クロは目を輝かせてバーンズに聞いた。
 小鹿バンビのような見た目のデカいシカは言う。

『私はこう見えて長く生きているからね。魔獣退治に駆り出されて町に行ったこともあるよ』

(聖獣って魔獣退治ができるの⁉)

 サラはバーンズに詳しい話を聞いてみたかったが、家を建てるほうが先だ。
 雨が降り出す前に屋根のあるねぐらを確保したい。

「んー……森に合う家というと、このあたりかな?」

 サラはログハウス風の家を指さした。

『いいんじゃない? 可愛いし』
『可愛いかどうかより、家は中身だよ。とりあえず出してみて確認しないと』

 バーンズに言われて取り出そうとしたサラだが、空け口が見つからない。

「コレ、どうやって出すのかな?」
『そのまま手を突っ込んで出せばいいんじゃない?』

 クロに当たり前のことのように言われてサラは驚いた。

「えっ⁉ 手が突っ込めるの? ケースなのに?」
『女神さまの用意したものだもの。人間の考えるやり方と違って普通じゃないの?』

 バーンズがウンウンと頷きながら言う。

『開けて取り出すものではなくて【サラでないと取り出せない】仕様になっていると思うぞ』
「あっ!」

(そうか! 個人識別して出したり、しまえたりするのかっ! 凄いな、その技術)

 サラが手を差しいれてみると、透明ケースを難なくすり抜けて目的の家は取り出せた。

「おおっ!」

 サラは感嘆の声を上げた。

『あとはそれを広げるだけだね』
「うんっ!」

 立ち上がったサラは、トトトッと草原を駆けていくと適当な場所にしゃがんでミニチュアの家を置き、展開しようとした。

「せーのっ……」

 サラが魔法を使おうとすると、バーンズが慌てて静止した。

『ちょっ、ちょっと待ちなさい、サラ』
『そうだよぉ、サラ~。ちょっと待ってぇ~』
「ん?」

 ピカードにも止められて、サラはピタッと動きを止めた。
 慌ててサラのもとへ駆け寄ってきたクロが言う。

『そうだよ、サラ。先に整地しないと』
「あ!」

 サラは草の生い茂る草原を見渡した。

(確かに整地が必要だね、ここは)

 急いで整地をするための魔法を展開しようとすると、それもバーンズに止められた。

『サラ、慌てないで。君の魔力は多くない』
「そうだった!」

 サラは小さな右の手の平で、ピシャリと軽く自分の額を叩いた。
 クロが呆れて言う。

『そうだよ、サラ。魔力が足りなくなっちゃったら大変だから、ボクたちが手伝うよ』
「ありがとう!」

 サラがお礼を言うと、寛いでいたシローネたちも立ち上がった。

『しょうがないわね。面倒なことになる前に、手伝ってあげるわよ』
「ありがとう、シローネ」
『ボクも手伝うねぇ~』
「ありがとう、ピカード。シルヴィも、ありがとう」

 黙って立ち上がった銀色オオカミに向かって、サラはお礼を言った。
 サラは素直に聖獣たちの力を借りることにした。
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