断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます

紅城えりす☆VTuber

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私が救ってあげる

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 パーティに呼ばれた際は、必ず十五分ぐらい遅刻すること。
 早く到着するのは、マナー違反。

 メアリーは馬車の中で、昔読んだ本に書かれていた内容を頭の中で復唱していた。

 窓の外を見ると、土砂降りの雨に覆われた視界の先にラングスレッタ家の入口が見えた。

 さっさと狭い馬車の中から出て、ラングスレッタ家の門を潜りたいが、今は順番待ちの最中だ。

 パーティで席につく順番は、身分が高いゲストから。これも昔本で学んだ。

 トントンと馬車の扉が叩かれ、メアリーが扉を開くと、傘を差したメイドが呟く。

「そろそろ、お嬢様の番ですよ」
「分かったわ。行きましょう」

 メイドに手を引かれて、ラングスレッタ家の屋敷へ。

 さて、フィネラについて何か情報が得られればいいけど。
 晩餐会での席は、パーティを主催しているラングスレッタ子爵夫人が決めている。
 できれば、夫人本人か、子爵の席と近い方がいい。


***


「レディ・メアリー、お久しぶりです」

「えぇ、また会えて嬉しいですわ。ラングスレッタ卿」

「あのぉ……その髪は?」

 先に結論から言おう。

 指定された座席は大当たりだった。

 私が案内された丸テーブルには、ラングスレッタ子爵、娘のグリンダが居たからだ。

 しかし、予想していた通り、二人の視線はメアリーの銀髪に注がれている。

「もしかして髪の色が気になるのですか?」

「えぇ……以前会ったときは茶色だったので」

「あれは、染めていたから茶色だったのですよ。地毛は銀色なの」

 テーブルを囲んでいた貴族たちが、ざわめき始める。

「おぉ、これは美しい。まるで神話に出てくる月の女神ではないですか」

 メガネをかけた真面目そうな紳士が、呟く。おそらく、場の空気を察してフォローを入れたのだろう。

「素敵な褒め言葉をありがとう。お優しいのね。だけど、私に気を使う必要はないわ。人は見た目より中身が大切ですから」

 メアリーが薄笑いを浮かべると、ざわめいていた貴族たちは一斉に黙り込んだ。
 中には青ざめている者もいる。

 怯えるように目を逸らす者の中に、年下に見える背の低い少女がいた。フワフワの金髪が美しい、赤眼の少女。グリンダだ。

 グリンダの服装を見たメアリーは違和感を覚える。

 自身をジロジロと見るメアリーの存在に気づいたグリンダは、苦笑しながら目を逸らした。

「あら、ごめんね。貴方のドレスが素敵だから、どこの仕立て屋がデザインしたのか気になって……」

「これは……ね、ミス・フェルビンに仕立てて頂いたの」

「へぇ……フェルビンといえば、今、最も社交界で注目を浴びているデザイナーよね。注文が殺到していて中々仕立てて頂けないと聞いているわ」

 グリンダが身に付けている白のグローブには、フェルビンの印であるバラが刺繍されていた。
 グローブにはピンクのリボンが手首の部分に結ばれていて、違和感があったのはリボンの部分であった。
 不自然にリボンが緩んでいたのだ。
 そんな……まさか、ね……。

「そう、かな……?」

「髪飾りもフェルビン様がデザインされたものかしら?」

 金髪の上に飾られたブルーの髪飾りに手を伸ばすと、グリンダは怯えるように目を閉じた。身を守るような姿勢だ。

 間違いないわ。
 この子、誰かから日常的に暴力を振るわれている。
 グローブのリボンを緩めているのは、手が腫れているから。髪飾りに、手を伸ばした際の反応は、頭の上に手が伸びると反射的に防御姿勢に入ってしまうからでしょうね。

 彼女の家族構成は、ラングスレッタ子爵、その夫人、長男、次男、グリンダの計五人。
 晩餐会での様子を見る限り父親は候補から外れるわね。
 もし父親が日常的に暴力をふるってるなら、彼女の視線は常に父親へ向くはずだもの。

「ねぇ、グリンダ。貴方にはお兄様がいるわよね?」

「はい、居ますけど……」

「貴方のお兄様や、お母様もミス・フェルビンが仕立てる服は好き?」

「お兄様は大好きです。ですが、お母様はミス・フェルビンのことを、あまり好ましく思っていないようで」

「どうして?」

「民衆の憧れでなければならない貴族が、流行に振り回されるのはバカバカしいっておっしゃるんです」

「たしかに、そういう人も居るわね。貴方のお兄様は心優しくて素敵な方だと聞いたわ。さすが、流行にもビンカンなのね」

 グリンダの動きが一瞬止まる。

「えぇ、お兄様は”とても良い方”です」

 ”とても良い方”という部分だけ、不自然に強調するグリンダ。
 これは間違いないわね。

「そうだ、グリンダ。良ければ貴方の誕生日パーティに花火はあがるの?」

「はい……上がりますけど?」

「そう、実は私、花火は見たことがなくて、パーティに出席してもいいかしら?」

 テーブルの下。人々に見られぬよう、さりげなくグリンダの手のひらに指で文字を書く。

 『貴方を助けてあげる』と。

 グリンダの表示がパッと明るくなった。

「はい、喜んで」
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