断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます

紅城えりす☆VTuber

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悪逆令嬢、晩餐会へ

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「私宛てに届いた晩餐会や舞踏会の招待状は、何通ある?」

「確認して参ります」

 静かに朝食を取りながら、質問をすると侍女は慌てて広間を離れた。

 広間に置かれた長テーブルには三人分の食事が並べられている。

 長テーブルの端――つまり、家で一番権力のある者が座る席が、フィネラ。向かい側がイセルのものだ。

 主食のメニューはパンに、ベーコン、ソーセージ、トマト、マッシュルーム。夕食と比べると貧相な食事だが、朝にはこのぐらいでちょうどいい。

 なにより家族の顔を見る前に、食事を済ませたい今の私にとって品数は少なければ少ないほど良かった。

「十通ほどです」

 侍女が招待状の入った手紙を運んでくる。手紙にはターレンバラ家と関わりのある貴族や、フィネラとイセルが社交界で知り合った人々の名前が書かれていた。

 晩餐会や舞踏会は人脈作りの第一歩だ。

 この場でパーティを管理している女主人に気に入られれば、仲のいい貴族の集まりであるサロンにも呼んで貰える。

 今回、メアリーがパーティに出席する目的は、万が一フィネラへの復讐が失敗した際に、頼りにできる友人を作るためだ。

 今まではお義母様が出席するパーティを選んでいたけど、これからは自分で選ばせてもらいましょう。

 フィネラはいつも気に入らない貴族のパーティにメアリーを、出席させて弱みを握らせたり、情報を集めさせていた。

 別にメアリーもフィネラのために情報を集めることは嫌では無かった。少なくとも魔女に仕立て上げられる前は。

 だから新しい貴族と接近する前には、相手の趣味や嗜好を下調べして、戦略を練っていたのだ。

「あら、ちょうどいい方が居たわね」
 
 メアリーが興味を持ったのは、ラングスレッタ子爵夫人が書いた招待状であった。

 ラングスレッタ家はフィネラの出身家だ。人脈が作れるだけではなく、彼女についてなにか調べられるかもしれない。

 さて、次はラングスレッタ子爵夫人や、令嬢の趣味について調べておかないとね。


***


 フィネラが私の元を尋ねてきたのは、日が暮れ始めたごろであった。
 夜会用ドレスに着替えて、アクセサリーを選んでいると、いつも通りを浮かべたフィネラが現れる。

「メアリー、ドルゼン卿をご存知?」

「はい、知っていますよ。前の戦いで軍功を上げて英雄扱いされている方ですよね?」

「えぇ、そうよ。本当に素晴らしい方よね。でも彼の立てた無理のある戦略のせいで我が国の兵は多くの損失を……」

 笑顔でドルゼン卿にまつわる噂や、悪事をペラペラ喋るフィネラ。

 表向きはドルゼン卿のせいで、心身に傷を負った人々を心配しているように見えるが、実際は違う。

 フィネラのはただ皆にチヤホヤされるドルゼン卿が気に入らないのだ。

「だからね、メアリー。今回はドルゼン卿がどんな方なのか会って確認して欲しいのよ」

 そして、メアリーをドルゼン卿に接触させて、弱みを握らせようとしている。

「生憎ですが、お義母様。本日はラングスレッタ子爵夫人の晩餐会に参加する予定ですので」

 フィネラの笑顔が、わずかに歪む。
 細めて三日月形に歪んだ彼女の瞳からは『不満』の感情が伝わってきた。

「まぁ、貴方が自らパーティの行先を選ぶだなんて。随分と人付き合いに対して熱心になったのね。もしかして、社交界の花でも目指しているのかしら?」

「いいえ。そんな大きな目標はないわ。私はお義母様の実家と、もっと親交を深めるべきだと思ったの」

 フィネラがゆっくり近づいてくる。
 段々と強くなるバラの香りは、彼女の香水であろう。

「だったら、せめて髪の色は隠さないとね」

「断るわ」

 メアリーが高らかに告げると、フィネラが困ったように眉を八の字にした。

「お義母様は貴方のために言っているのよ。確かに銀髪が不吉の象徴だっていう迷信は、今ではあまり信じられなくなったけど、まだ不気味に思う人はいるわ」

 ねぇ、『良い子』にしてくれるわよね?

 フィネラの問に、メアリーはわざとらしく髪を手で靡かせてから答えた。

「ごめんなさい、お義母様。私、良い子はやめたい年頃なのよ」

 
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