断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます

紅城えりす☆VTuber

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あまりにも無理難題

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「おはよう、メアリー。今日は貴方にお願いしたいことがあって呼んだわ」

「予言式のことについて、なにがお困りだと聞いています」

「そうなのよ。今回貴方には護符の用意をお願いしたいの」

 両手を合わせ、可愛らしく首を傾げるフィネラ。

 彼女の言う護符とは、ルーン文字が書かれた小さな紙のことだ。予言式の時、妖精に占いの結果を盗み聞きされぬよう結界を張る際に使う。

 一枚、一枚の護符を作ることは簡単だが、当日は千枚以上必要になるため、準備には時間と労力がかかる。

 しかも祭事に関わる物品であるため、適当に作るわけにもいかない。

 毎年、フィネラが地道に書いていたが、今年は私に任せるつもりらしい。

「何日で仕上げれば良いですか?」

「三日よ」

 嘘だ。信じられない。

 護符を作り慣れているフィネラですら、一週間以上はかかるのに三日だなんて。

 仮に稽古や勉強の時間を割いて作業に取り組めば、ギリギリノルマは達成できそうだが、現実的ではない。

 明らかに無理難題だ。
 いわゆる、嫌がらせ。

「お義母様も意地悪ね。もう少し時間をくれてもいいのに」

「あら、ごめんなさいね。今年はお父様が戦場からお帰りになるから、早めに準備を終わらせたくて」

 フィネラの瞳が三日月形に歪み、口角が上がる。

「頭を下げて、ちゃんと許しを乞えば許してあげるわよ」

「必要ありません。護符作りは任せて下さい」

 メアリーは焦りを表情に表さぬよう気をつけながら、優雅に礼をした。

「そう、いつまで笑っていられるか見物ね」

 ***


「本当に忌々しいったら、ありゃしないわ」

 メアリーは自室で千枚以上もの小さな紙と向き合ってみた。試しに一時間ほど、護符作りにチャレンジしてみたが、二十五枚が限界だった。このペースでは間に合いそうにもない。

「お嬢様、私で良ければお手伝い致しましょうか?」

 侍女が心配そうに声をかける。

「いいえ、大丈夫よ。貴方には貴方の仕事があるでしょう? 毎日、私のために頑張ってくれているのに、これ以上、負担を増やしたくないわ」

「お嬢様は、お優しいですね」

「そうかしら?」

 メアリーはインクで汚れた指を、拭きながら答える。

 なにが手を打たないといけないわね。

 護符は同じ模様の紙が百枚ずつセットになっている。模様ごとに使われているルーン文字や配置が微妙に違い、紛らわしい。

 私が魔道士なら護符を百枚ずつ、全く同じものを複製するのにね。

 背伸びをしながら、再び羽根ペンを掴むと、部屋の扉がノックされる。

「はい、どうぞ」

「失礼いたします」

 中に入ってきたのは厳格そうな佇まいの男性使用人であった。

「お忙しいところ申し訳ございません。予言式に参加される魔道士の方が、準備のためお見えになりました」

「お義母様は?」

「現在、外出中です。ですから、お嬢様が客人の対応をなさって下さい」

「えぇ、分かったわ」

 仕方なく羽根ペンを置いて、身支度を始める。今まで予言式の時期に出かけることなんて、なかったのに。

 何から何まで丸投げするつもりみたいね。


 ***


「今回はわたくしどもに、神聖な儀式に参加する権利を下さいましてありがとうこざいます」

「貴方たちこそ、魔道学院からはるばるお疲れ様。打ち合わせは手短に終わらせるつもりだから、今日はゆっくりと休んでちょうだい」

「お気遣いに感謝します」

 国の外れにある魔道学院から派遣された、五人の男女がメアリーの前に跪く。

 メアリーは黒ローブをまとった魔道士の顔を、一人、一人確認する。

 あれ、聞き覚えがある声ね。

 派遣された魔道士のリーダーらしき男が顔を、上げる。男の顔には見覚えがあった。
 メアリーと同じ銀色の髪に、ブルーの瞳。
 間違いない。牢に囚われていたメアリーの前に現れ、時間を戻した魔道士だ。

「メアリー伯爵令嬢」

 男は意地悪そうに笑った。


 
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