断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます

紅城えりす☆VTuber

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やっと見つかった糸口

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 予言式の夜。
 メアリーはランプから放たれる淡い明かりを頼りに、侍女から借りたロマンス小説を読んでいた。

――この本……めちゃくちゃ面白いじゃない!

『スウィート・マイフラワー』

 表紙が気に入って読み始めた本であったが、予想以上に面白かった。

 内容としては祖国を追われた皇女が、騎士の少年と共に迫り来る刺客から逃げる物語である。

 物語の終盤で騎士の正体が魔族の末裔であることが分かり、二人は離れ離れになってしまいそうになるが、結局ラストは国の外れで結婚式を挙げて結ばれた。

――あぁ、やっぱり古今東西、許されざる恋は燃え上がるわね。


 メアリーがニヤニヤと笑っていながら乙女心を爆発させていると、ふと、メギスの言葉が脳を過ぎった。


『これだけは絶対に忘れないでくれ。なにがあっても僕は君を見捨てないから』


 メギスったら、物語に出てくる騎士とそっくりだったわね。

 ぼーっと満月を眺めながら、そんなことを考えていたメアリーであったが、自分自身が考えていることがどれだけ下らないか気づき、激しく首を横に振った。

 私は誇り高きターレンバラの令嬢。
 由緒正しい貴族の末裔なのよ。
 平民の魔道士なんかを意識するなんて、馬鹿げているわ。
 そう、私は貴族で……もし貴族ではなかったら、もっと自由に恋愛ができたのであろうか?

 継母に苦しめられることもなかったのだろうか?

 いや、そんなことを考えたって仕方がないわ。今は自分にできることを全力て取り組まなくっちゃ!

 メアリーが頬を軽く叩きながら決心すると、扉をノックする音が響き渡った。

「お嬢様、そろそろお休みになられた方が……」

 水差しとカップを持ったメイドが入ってきた。

「あら、もうこんな時間なのね」

 サイドテーブルに置かれた魔法式時計が示していた時刻は、もう既に深夜であった。

「今日は一日お疲れ様でした」

「貴方たちこそ、会場の準備から客人への給仕まで、お疲れ様」

「恐れ入ります」

「ところで、いつも水を持ってきてくれる侍女はどうしたの?」

「それがですねぇ……」

 メイドが気まずそうに目を逸らす。

「あの子、今日限りで屋敷を辞めるそうです」

 嘘でしょう?

 主人である私に挨拶もせず、急にメイドを辞めるですって?

 理由は?

 転職?

 それとも結婚や妊娠?

 下級メイドならともかく、それなりに地位のある侍女である彼女が、別の屋敷に職場を変える必要はないはず。

 だからといって、結婚するなら私に一言ぐらい報告するはずよね。

「そう、あの子何か言い残してなかった?」

 メイドの表情が強ばる。
 まるで、なにかを恐れているように。

「大丈夫よ。この場で貴方がなにを話そうが、咎められることはないわ」

 しばらくの間、メイドは視線を左右に揺らしていたが、やがて決心したかのように口を開いた。彼女の頬からは冷や汗が流れている。

「……実は、あの子。奥様に呼ばれて……それで……屋敷を出てモルガナ教会に行くって」

 モルガナ教会はターレンバラ家が、高貴な者の務めノブレス・オブリージュの一環として、定期的に寄付をしている宗教施設だ。
 教会の神官長と父は昔から仲が良い。

「きっと、予言式の件で呼ばれたのね。私が侍女に護符作りを手伝わせたと勘違いして」

「はい……表向きの理由としては、お嬢様の護符作りを手伝った事が理由です」

「本当の理由は?」

「おそらくですが、あの子が奥様について周りのメイドに相談していたことが原因かと」

「嘘……周りのメイドにはどんな相談を?」

「あの子は以前から、奥様のお嬢様に対する態度について色々と思うところがあったみたいで。『私がお嬢様にやってあげられることはないかしら?』と周りのメイド……を含めた何人かの使用人に相談していたみたいなんです」

「……それだけ分かれば十分よ。話してくれてありがとう。貴方が、もしお義母様に不信感を抱いているようなら悟られないようにね?」

 自分を賞賛してくれない人間は容赦なく叩き潰す。それがフィネラという女の本性だから。

 メイドにランプを消してもらい、かけ布にくるまる。

 窓の外からは、噴水の音とフクロウの鳴き声が聞こえてきた。

 侍女から借りた本……絶対に返さなきゃ!



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