断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます

紅城えりす☆VTuber

文字の大きさ
23 / 65

解けない魔法をかけて

しおりを挟む
「君の兄上は色々と気難しい人なんだね」

 客間の席で、出された茶菓子を食べるメギス。彼からしてみれば急に呼び出された上に、次期伯爵に尋問されそうになるという最悪の状況であるはずだが、メギスは全く不快な感情を表に出さなかった。

「いつもは、あんなこと言わないんだけどね。お兄様はいつもお義母様や家督のことばっかり気にしていて……私のことなんて眼中に無いみたい」

「それ、もしかして回帰前の話かな?」

「え……?」

  ティーカップを持ったメギスが、小さく首を傾げる。

「時間が戻る前はいつも私を見て見ぬふりをしていたお兄様が、今では色々と人間関係に口出しをしてくる……違うかな?」

「その通り……えぇ、全くその通りよ」

「つまり、回帰前と違って今の兄上は君を心配しているわけだ。良いじゃないか。仲間は多ければ多いほど良い」

「そう……なのかな?」

 言われてみれば、時間が戻る前と比べてお兄様の私に対する態度は変わった。

 以前、庭園でお兄様と交わした会話のおかげかしら?

 原因がどうであれ仲間が増えることはいいことよ。たとえ、相手が私のことを、どう思っていようとも。


――違う。俺がお前を心配しているのは”家族”だからだ!


 本当に家族だと思ってくれているなら、回帰前も助けてくれれば良かったのに。

「これから先、きっと君の味方は増え続けるだろうけど、くれぐれも僕のことは忘れないでくれよ?」

「それについては心配しなくていいわ。命を助けてくれた恩人を忘れるわけないでしょ?」

 スコーンを割ろうとしていたイセルの手が止まった。

「えっと……私なにか気に触ること言った?」

「いいや、ちょっぴり嬉しくてね」

「ふぅん、そう」

「そんなことより、僕を呼び出した要件はなんだい?」

「それについてだけど……実はターレンバラ家が定期的に資金援助している教会の帳簿を手に入れたいの」

 メギスの目が据わる。

「いちおう聞いておくけど、僕に教会の帳簿をコピーさせろとは言わないよね?」

 まるで子供を叱るような声だ。
 本人は不快な感情を表そうとしているつもりなのだろうが、彼の顔が美しいせいか全然怖いとは思わなかった。

「あら、バレちゃったみたいね。私が欲しいのは物をコピーする魔法と、物質変換魔法よ」

「以前も言ったけど、物質変換魔法はともかく単純なコピーは僕の苦手分野だよ。残念だけど君の役には立てない」

「やっぱり、そうよね。無理を言ってごめんなさい」

 目を伏せるメアリー。
 すると、メギスの柔らかい声が帰ってきた。

「いや、僕は力になれないけど君自身で解決することはできるだろう?」

 メアリーの頬に細くて綺麗な指が触れようとする。顔を上げるとメギスがメアリーの頬に触れようとしていたが、ハッとした表情を浮かべて手を引っ込めた。

「君自身がコピー魔法を習得すればいいんだよ」

「私に魔法なんて使えるのかしら?」

 魔道士の実力は生まれ持った魔力の量に依存しており、魔力の多さは基本的に遺伝で決まると言われている。

 残念ながらメアリーの知る限り、ターレンバラ家に魔道士は居ない。

「それなら絶対に大丈夫だよ。保証する。君にも魔法は使えるはずだから気にする必要はない。もし魔法を学ぶ過程で分からないことがあったら、僕に手紙を送ってくれれば教えてあげる」

 まだ本当に魔法が使えるのか分からないのに、どうして自信満々なのかしら?

「へぇー、まるで先生みたい」

「まるで、じゃなくて……本物の先生だよ」

 薄々、魔道学院の重職に就いているだろうと思っていたけど、先生だったのね。

 私と年齢はそこまで変わらないから、生徒の可能性が捨てきれなかったけど……。   

 この若さで教員に採用されている辺り、彼が天才だという話は本当みたい。
 
「それじゃあ、早速、魔力を使う練習をしてみよう。さぁ、目を閉じて」

 メギスがメアリーの隣に移動する。

 メアリーの方はというと、疑うような目でメギスを見てから目を閉じた。

「思考を止めて、全身を巡る魔力の流れを感じとって。あ、ちょって手に触れるね」

 メギスの冷たい手が、右手に重なる。

 「触れるなら始める前に言いなさいよ」と文句の一つや二つ言いたくなったが、今は大人しく”魔力の流れ”とやらに集中する。

 何も考えないでいると、段々魔力の流れを感じ取れるようになってきた。

 川がある。魔力が流れる血管のような川が全身を巡っている。

「魔力の流れが感じ取れるようになってきたわ……多分」

「おっけー、このまま次は『ルナ・ヴェスパー』と唱えて」

「……ルナ・ヴェスパー」

 メアリーが呪文を唱え終わった途端、部屋中が一気に冷気で包まれる。

 恐る恐る目を開けるとターレンバラ家が誇る、豪華な客間が氷漬けになっていた。

「なによ……これ……」

 助けを求めて、メギスを見上げる。
 メギスは苦笑しながらメアリーを見下ろしていた。

「僕が見習いの子に魔法を教える時は、魔力を放出する練習から始めるんだけど、君の場合は制御から勉強した方が良さそうだね」

「それって褒めてるの?」

「もちろん。この魔力量、たぶん魔道士の家系出身者と同等だね」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし

さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。 だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。 魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。 変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。 二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。 自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。 彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。 そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。 大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…

処理中です...