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役者は揃った
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ガタガタと揺れる馬車の中。
なにも考えずにに外を眺めていると、だんだん眠気が襲ってきた。
「眠いのか?」
「頭を空っぽにして景色を眺めていたら段々と眠気に襲われただけです。お兄様が話しかけてくださったおかげで目が覚めました」
「もし眠いのならば屋敷に着くまで寝ていて構わないぞ。到着する直前に起こしてやる」
「ふふっ、大丈夫ですよ。せっかくお兄様と二人きりでいられるのですから色々とお話したいです」
「そっ、そうか……」
メアリーが首を傾げながら笑うと、イセルが片手で頭を抱えながら答えた。
明らかに困惑している表情のイセル。
さては話題が見つからないのね。
「ねぇ、お兄様。来月、また王宮で剣技大会がありますよね?」
「そういえば来月だったか……」
「お兄様も参加されますの?」
「もちろん、参加するつもりだ」
急に喜びに満ちたような表情へと変わったイセルは、メアリーの両手を取りながら答えた。
「血の汗が滲むような努力をして、今度こそ優勝してみせる。もし俺が優勝したら、友人に『私の兄は剣技大会の優勝者』だと自慢して構わないぞ」
「ありがとうございます。ですが、血の汗が滲むまで努力なさる必要はありませんよ。私は剣技大会でお兄様負けるより、倒れる方が嫌ですから」
「あぁ……それもそうだよな……」
イセルはハッと我に帰ったように、メアリーの手を離した。
「私にできることがあれば、なんでも言ってください」
「お前にやって欲しいことは特にないんだが……頼みたいことはある」
「なんでしょう?」
「かなり言いにくいのだが……」
眉間にシワを寄せるイセル。
この時点で、メアリーには彼がなにを言おうとしているのか大体検討がついていた。
「銀髪の魔道士と関わることをやめて貰えないか?」
「まだ、お兄様はメギスのことを疑っていらっしゃるのですか?」
「いや、そうでは……」
「では、お義母様からなにか言われたのですね?」
イセルは何も答えない。
「お兄様、気分を害することを承知で申し上げます。お義母様の言葉をなにからなにまで使用してはなりません。あの人は言葉巧みに人を騙して利用します」
「メアリー……お前は、なんということを……」
そうだった。お兄様は私を信頼してくれているけど、フィネラとの関係性が切れたわけではない。
でも、ここまで来たら後戻りできない。
イセルを作戦に取り込む。なにがあろうとも。
「お兄様にとってお義母様が信頼に値する存在であることは分かっています。ですが、実を申し上げますと私は最近、お義母様に対して不信感を抱いているのです。本当にあの人は信用に値する人間なのかと」
「……自分がなにを言っているのか分かっているのか?」
「はい、私だってお義母様を疑いたくはありません」
「ならば疑わなければいい。全てを信じていれば……」
「それではダメなのです。私はお義母様を試したい。持ち主の許可を得ず化石を売り飛ばした館長のように。そうすれば再びお義母様を信用できるようになります」
「……なにをするつもりだ?」
「大したことはありませんよ。王宮の剣技大会でひと芝居打つだけです」
「話は聞いてやる。だが、お前に協力する保証はない」
「私の話に耳を傾けてくださるだけでも十分です」
イセルは弱々しいこえで呟いた。
さて、フィネラはどうしてメギスも排除対象に入れたのだろう?
まず大前提として、メアリーへの嫌がらせは全てフィネラがメアリーを屈服させるために行っている”攻撃”だ。
ならばメギスを引き離そうとしているのも”攻撃”の一貫なのだろうか?
いや、真相はもっと複雑な気がする。
たとえば、私が”良い子”であったごろからフィネラには私とメギスを攻撃する理由があったとか……。
なにも考えずにに外を眺めていると、だんだん眠気が襲ってきた。
「眠いのか?」
「頭を空っぽにして景色を眺めていたら段々と眠気に襲われただけです。お兄様が話しかけてくださったおかげで目が覚めました」
「もし眠いのならば屋敷に着くまで寝ていて構わないぞ。到着する直前に起こしてやる」
「ふふっ、大丈夫ですよ。せっかくお兄様と二人きりでいられるのですから色々とお話したいです」
「そっ、そうか……」
メアリーが首を傾げながら笑うと、イセルが片手で頭を抱えながら答えた。
明らかに困惑している表情のイセル。
さては話題が見つからないのね。
「ねぇ、お兄様。来月、また王宮で剣技大会がありますよね?」
「そういえば来月だったか……」
「お兄様も参加されますの?」
「もちろん、参加するつもりだ」
急に喜びに満ちたような表情へと変わったイセルは、メアリーの両手を取りながら答えた。
「血の汗が滲むような努力をして、今度こそ優勝してみせる。もし俺が優勝したら、友人に『私の兄は剣技大会の優勝者』だと自慢して構わないぞ」
「ありがとうございます。ですが、血の汗が滲むまで努力なさる必要はありませんよ。私は剣技大会でお兄様負けるより、倒れる方が嫌ですから」
「あぁ……それもそうだよな……」
イセルはハッと我に帰ったように、メアリーの手を離した。
「私にできることがあれば、なんでも言ってください」
「お前にやって欲しいことは特にないんだが……頼みたいことはある」
「なんでしょう?」
「かなり言いにくいのだが……」
眉間にシワを寄せるイセル。
この時点で、メアリーには彼がなにを言おうとしているのか大体検討がついていた。
「銀髪の魔道士と関わることをやめて貰えないか?」
「まだ、お兄様はメギスのことを疑っていらっしゃるのですか?」
「いや、そうでは……」
「では、お義母様からなにか言われたのですね?」
イセルは何も答えない。
「お兄様、気分を害することを承知で申し上げます。お義母様の言葉をなにからなにまで使用してはなりません。あの人は言葉巧みに人を騙して利用します」
「メアリー……お前は、なんということを……」
そうだった。お兄様は私を信頼してくれているけど、フィネラとの関係性が切れたわけではない。
でも、ここまで来たら後戻りできない。
イセルを作戦に取り込む。なにがあろうとも。
「お兄様にとってお義母様が信頼に値する存在であることは分かっています。ですが、実を申し上げますと私は最近、お義母様に対して不信感を抱いているのです。本当にあの人は信用に値する人間なのかと」
「……自分がなにを言っているのか分かっているのか?」
「はい、私だってお義母様を疑いたくはありません」
「ならば疑わなければいい。全てを信じていれば……」
「それではダメなのです。私はお義母様を試したい。持ち主の許可を得ず化石を売り飛ばした館長のように。そうすれば再びお義母様を信用できるようになります」
「……なにをするつもりだ?」
「大したことはありませんよ。王宮の剣技大会でひと芝居打つだけです」
「話は聞いてやる。だが、お前に協力する保証はない」
「私の話に耳を傾けてくださるだけでも十分です」
イセルは弱々しいこえで呟いた。
さて、フィネラはどうしてメギスも排除対象に入れたのだろう?
まず大前提として、メアリーへの嫌がらせは全てフィネラがメアリーを屈服させるために行っている”攻撃”だ。
ならばメギスを引き離そうとしているのも”攻撃”の一貫なのだろうか?
いや、真相はもっと複雑な気がする。
たとえば、私が”良い子”であったごろからフィネラには私とメギスを攻撃する理由があったとか……。
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