学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと

文字の大きさ
28 / 80
第5章 三姉妹の気持ち

28 憩いの空間

しおりを挟む

  お昼休み。

 それは学生にとって束の間の休息。

 羽を伸ばせる癒しの時間。

 だが、しかし。

 それはモブもといハブられ陰キャにとって、真逆の時間となることを皆さんご存じだろうか。

「……ふぅ」

 ガヤガヤと活気に溢れて行く教室の中、わたしの溜め息なんて誰の耳にも届いていないことでしょう。

 そう、この疎外感こそお昼休みの闇なのだ。

 わたしのようなクラス替えですぐに人間関係の構築をミスしてしまった人間は(ほとんど冴月さつきさんのせいだけど)、この和気あいあいとした空気から弾かれてしまう。

 一人だけお通夜状態になってしまうのです。

「そして、その空気を真顔でいられるほどわたしは強メンタルではないのです……」

 しかも、お昼はご飯の時間でもあります。

 皆で食べている中、一人寂しく食べるなんてちょっとツラすぎます。

 となれば、わたしのとるべき行動は一つでしょう。

 ――ガタッ

 席を立ち教室を後にするのでした。


        ◇◇◇


「……落ち着く」

 体育館の裏にあるベンチに、わたしは腰を下ろしました。

 目の前には学園の敷地を覆うように据えられている木々、そして春の芽吹きを感じさせる草花が生えつつあります。

「中庭は案外、廊下を通りかかる人に窓から見られたりしますからね。でも、ここなら絶対に見つかりません」

 ほっと一安心。

 わたしは足の上に乗せたお弁当箱を開こうとして――

「あらぁ、こんな所ににいらしたんですか?」

「ふえっ!?」

 一人だと思って完全に油断していたので、ビクリと体が跳ねしてしまいます。

 声のする方を向くと、そこにいたのは栗色の髪をなびかせる美少女でした。

「……ひ、日和ひよりさん。びっくりしましたぁ」

「あらあら、ごめんなさい。驚かせてしまって」

 目を丸くさせながら、両手を合わせて謝罪する日和さん。

 正直、その仕草だけで可愛いです。

「そ、そんなことより、日和さんがこんな所で何をしてるんですか?」

 ちなみにですが、月森つきもり三姉妹のお昼休みの過ごし方は別々です。

 千夜ちやさんは生徒会室に向かい、雑務をこなしながらお弁当をとるのこと。

 日和さんはクラスメイトのお友達と教室で談笑しながらお弁当を食べます。

 華凛かりんさんは一瞬で食べ終えて、すぐに自主練習に向かうみたいです。

 三者三様ではありますが、決してこんな場所に現れることはないわけです。

 それが……なぜ?

「それは、こちらのセリフじゃないですかねぇ?」

 日和さんはニコニコ笑顔を浮かべつつ、ベンチに腰を下ろします。

 必然的にお隣同士っ。

「わたしはお弁当を食べようとですね」

「そうでしたか。それでしたら一緒ですね?」

 ぽん、とお膝の上に日和さんもお弁当箱を乗せます。

 ……?

 しかし、わたしの頭はクエスチョン。

「日和さんはお友達と食べるんじゃないですか?」

「あらあら……、わたしたちはお友達じゃないんですか?」

 ぽかんと口を開けて、少しだけ悲壮感のある表情を見せる日和さん。

 ま、まずいっ!

 推しにこんな表情をさせるなんて、あってはならないことですっ!

「けっ、決してそのような意味ではありませんっ。ですので何卒、ご機嫌を取り戻して頂きたく……」

「ああっ、そうですよねぇ。わたしとあかちゃんはもっと深い仲ですもんねぇ?」

 花開くような表情を覗かせる日和さん。

 感情の入れ替わりが激しいですし、どういう意味ですかそれっ。

「し、姉妹ってことですよねっ?」

「んー?うふふっ……」

 その笑みは肯定してくれてるってことですよね?

 受け取りようによっては濁してるようにも見えますけど、日和さんがそれ以外の意味で言うわけありませんし……。

「それともあかちゃんは、わたしとは食べたくありませんかぁ?」

「ううっ……!」

 小首を傾げつつ、人差し指を唇に添えて、甘えるような瞳で唇をとがらせる日和さん。

 あ、あざとい……!

 同性のわたしから見てもあざとい仕草っ。

 でも、なぜでしょうっ。

 日和さんは自然でただ可愛く見えてしまうのは……!

 マジック、美少女マジックですっ。

「そんなわけないじゃないですかっ。一緒に食べましょうっ」

「よかったです」

 わたしとしても、一緒に食べてくれる人がいた方が嬉しいですしねっ。

 ここなら他の人に見られることもないでしょうし。

「日和さんのお弁当はいつも美味しいから楽しみですっ」

「ありがとうございます」

 日和さんは毎日料理を作ってくれて本当に感謝です。

「では、いただきますねっ」

「はい、どうぞ」

 わたしが戸惑いすぎていたせいでしょう、日和さんは先に箸をつけてお弁当を食べていました。

 ふむふむ、今日のお弁当はそんな感じなんですね。

 心躍らせながらパカッ、とお弁当の蓋を開けます。

 そして視界に飛び込んできたのは、日和さんの丹精込めて作られた美味しいりょう……

「ハートっ!?」

「うふふ」

 視界に広がるお弁当は、ハート祭りでした。

 まずご飯の上にかかる鮭フレークがハートの形に振りかけられ、梅干しもハートの形で添えられています。

 白米とピンク色のコントラストが刺激的です。
 
 そしておかずの方も驚きで、卵焼きもハート型。

 ハンバーグは大丈夫かと思いきや、かかってるケチャップがハート型。

 とにかく所狭しとハートが並んでいました。

「ひ、日和さん?これは一体……?」

「うふふ。なんだと思いますかぁ?」

 な、なにと言われましても……。

 ど、どう受け取るのが正解なんでしょう?

 まさか、そのまんまの意味なわけがなく……。

「あら、食べたくありませんか?」

「ち、ちがいますっ。決してそういうわけでは……」

「では、ほら。あーん」

「うえええっ!?」

 日和さんは何を思ったのか、箸でハートの卵焼きを摘まんでわたしに差し出してくるのです。

 分かります!?

 日和さんの箸ですよ!?

 か、かかっ、間接……!?

「……何をしているの、貴女達」

「「!?」」

 突然の来訪、そこにはジト目を向けてくる千夜さんの姿がありました。

「ち、千夜さんっ。どうしてここに!?」

「体育館倉庫の物品管理をしにきたのよ。そうしたら貴女達が二人で……?」

 優雅に歩いてくる千夜さんでしたが、日和さんの手元を視認した瞬間に目つきが変わります。

 心なしか早足になって、わたしたちの方へ。

「……これはどう言う事かしら、日和?」

「えーっと、何のことでしょう?」

「私のお弁当と違うわね。いつも姉妹全員同じにしている貴女が」

「ま、間違いましたかねぇ……?」

 ど、どんなハイレベルな間違いなんですか……日和さん。

「そう。ならこれは私が頂くわ」

「あらっ」

 パクッと黒髪を耳にかきあげて卵焼きを口にする千夜さんっ。

「間違ったものをあげては可哀想よ。この子には、私がまだ手をつけていないお弁当をあげましょう」

「……千夜ちゃんも、強引ですね」

「何か問題があるのかしら?」

「ありますよね?あかちゃんだって早く食べたいですよね?」

 そんな愚問をわたしに聞かないで頂きたいっ。

「いえっ、そのままお二人で続けていて下さいっ」

 はわわわわ……!

 ハートのお弁当を姉妹で食べ合いっこさせる。

 しかも、日和さんの箸が千夜さんのお口の中へ……。

 姉妹で、ハートで、間接で、キッス!?

「わたしはその姿をずっと見続けたいですっ!」

「……何か、その反応は違う気がするわね」

あかちゃんより、千夜ちゃんに差し上げる方が喜ばれるのですか……複雑ですねぇ……」
 
 なぜか苦笑いを浮かべるお二人なのでした。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...