学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと

文字の大きさ
36 / 80
第6章 体育祭

36 選択肢

しおりを挟む

 い、胃がキリキリする……。

 原因は明白。

 体育祭の二人三脚のせいです。

 ぼっちが浮き彫りになるという理由で若干の憂鬱を抱えたわたしでしたが、そこは心優しき月森三姉妹。

 なんとわたしと組んでくれると仰ってくれたのですが……それが過ちの始まりだったのです。

『結局あたし達で話してても平行線だよね』

『お互いに譲りませんものねぇ』

『今すぐ決められないのなら予定通り明日にすればいいわ。貴女はそれまでに考えておきなさい』

 という、恐らく人生史上最難題の宿題を課されてしまったのです。






 そして、時は現在。

「はい、それでは体育祭に出場する競技の割り振りを決めて行きたいと思います」

 千夜さんが黒板の前で理路整然と進行していきます。

 そんな中、窓辺の席でわたしは頭を抱えていました。

「……角が立つ、誰を選んでも角が立つ」

 今回の件で、安牌など見当りません。

 誰かを選ぶということは、誰かを選ばないということ。

 なぜわたしが三姉妹の皆さんを天秤に懸けるような状況になってしまったのかは、謎すぎるのですが。

 とにかく、わたしの選択によって誰かが嫌な気持ちになってしまうのです。

 ……推しを不幸にする?それが許されるのか花野明莉はなのあかり

「それでは、50m走はタイムの早い方から選考させて頂いてよろしいでしょうか?」

「否!断じて否ですっ!」

 ――シーン
 
 ……はっ!?

 静まり返る教室、クラスメイトの視線は漏れなくわたしに向けられています。
 
 特に、黒板の前に立つ千夜さんはニコリと営業スマイルを浮かべながら、瞳の奥が笑っていませんでした。

「私の方針に問題があった?それとも貴女が出場したいのかしら?いいわよ、どちらにしても責任は貴女にとってもらって……」

「ああ!ちっ、違いますっ、独り言ですからっ!」

 50m走のメンバーにわたしの名前を連ねようとする千夜さんに、頭を下げて止めてもらいます。

 こんな鈍足が、強者ひしめく短距離走者に乱入したらそれこそ笑い者です。

 わたしはただ、三姉妹を選ぶという状況を否定したかっただけなのです。

「誤解を招く独り言は慎みなさい」

「す、すいません……」

 こほん、という咳ばらいと共に千夜さんは改めて進行を再開します。

 わたしは大人しく小さくなって席に座るのでした。

「ぷぷっ……恥ずかしー」

 そんなクラス中が心の中で思っていたであろう気持ちを代弁するのは、斜め前に座る冴月理子さつきりこさんなのでした。

 さすがリア充陽キャ女子、クラスメイトの失敗をちゃんと笑い者にしてきます。

 わたしも恥ずかしさがしっかり込み上げてきちゃいました。

「なになにー?やっぱり月森つきもりから嫌われちゃった?あ、そもそもあんな意味不明な行動してたら誰でもそうなるかぁ」

「……」

 久しぶりに会話をしたかと思えば、このムーブ。

「あれれ、だんまり?本当のこと言われて傷ついちゃった?」

「……」

 実力行使だと華凛かりんさんのような介入があると分かったからか、口撃にだけ移っているようです。

「まあそもそも?月森たちとあんたなんか不釣り合いなんだから、アレくらい距離を置かれて当然なんだって」

「……なんですって?」

 その発言に、わたしはぴくんと反応してしまいます。

 冴月さんはその反応が嬉しかったのか、いつものニヒルな笑顔を浮かべます。

「本当のことじゃん。あんたみたいな陰キャが月森とお近づきになろうなんて調子乗りすぎ、もっと自分のポジション考えたら?」

「では、どうしろと?」

「まあ、あんたみたいなのは、わたしにこき使われるくらいが丁度いいんじゃない?」

「……その言葉、本気で言ってます?」

「あははっ、なんでわたしが嘘つかなきゃなんないのよ」

 けらけらと、小馬鹿にした笑みを浮かべる冴月さん。

 よっぽど自分の言葉に自信があるのか、撤回する気はないようです。

 なるほど、そちらがそう来るのならいいでしょう。

「それでは、二人三脚のペアを決めて……って、何してるの?」
 
 千夜さんの声が響きます。

 わたしは席から立ち上がり、冴月さんに近づいていました。

「な、何してんのよ……こんな所でやる気?」

 その行動が予想外だったのか、冴月さんは眉をひそめて少し身じろぎをします。

 ですが、仕掛けてきたのはそちらの方です。

「ええ、やりますよ」

「は、はあ?あんたマジ……!?」

 わたしは冴月さんにすかさず腕を伸ばし、その手を掴みます。

「え、や、ちょっ!?」

 驚きに声を跳ね上げる冴月さんですが、この手を放すつもりはありません。

「はいっ、わたしは冴月さんと二人三脚を組みます!」

「……え?」

 拍子抜けした声を上げる冴月さん。

 そして――

「なんでっ!?」

 と、教室から華凛かりんさんの声が響きます。

「あらあら」

 そして日和ひよりさんの困惑する声。

「……どういうことかしら、花野はなのさん?」

 笑顔のまま、ぴくぴくと眉を引きつらせている千夜さん。

「はい、冴月さんがどうしてもと誘ってくれましたので」

「言ってなくない!?」

 隣から声が跳ね返りますが、ちょっと何言ってるのか分かりません。

「え?冴月さん、だってさっき“あんたみたいな陰キャが月森とお近づきになろうなんて調子乗りすぎ”、“わたしにこき使われるくらいが丁度いいんじゃない?”って仰ってましたよね?」

「言ったけど!?」

「つまり、わたしと二人三脚のペアを組んでくれるってことですよね?」

「どういう解釈なの、それ!?」

 ――ダンッ、ガガガガッ!

 黒板からチョークを叩きつける連打音が響きます。

 そこには色濃く書き出された“花野・冴月”ペアの文字。

「……冴月さんは確か短距離走も優秀でしたね、それでは50m走にも出場して頂きましょう。勿論、二人三脚では花野さんを引き上げてもらい好成績を期待していますよ」

「ええっ!?」

 本来、出場予定ではなかった50m走に書き出された冴月さんは、明らかに物申したい様子でしたが……。

「何か問題でも?貴女が花野さんを誘ったのだったら、それで構いませんよね?」

「い、いや……でも」

「それとも花野さんが虚偽を発していると?」

「いや、それは言葉の綾って言うか……」

 明らかに目が据わっている千夜さんに対して、冴月さんは言葉を失っていきます。

「ね、ねえ……なんで月森千夜があんなに怒ってるのよっ!?」

 その様子が明らかにおかしいと感じたのか、冴月さんがわたしに耳打ちしてきます。

「えっと……三姉妹の皆さんに誘われてたから、ですかね」

「はあ!?」

「でも冴月さんが“三姉妹の皆さんとは不釣り合いだ”と言うので、わたしは言う事を聞いたんです」

「ええっ、なにそれっ。じゃ、じゃあ……あたしがあんたを月森達から横取りしたみたいな形になってんの?」

「まあ……そうなるんですかね?」

 敵意剥き出しの千夜さんに、青ざめていく冴月さん。

「わたし、月森千夜だけは敵に回したくないんだけどっ」

 生徒会長であり学級委員長、そして成績首位の切れ者。

 教師・生徒共に全幅の信頼を寄せられている学園のトップ、月森千夜を恐れない理由はないでしょう。

「はい。これで共犯ですね」

 わたしはポンと冴月さんの肩に手を置きます。

 そう、これは共に背負う罪です。

 そもそも、わたしなんかが三姉妹の皆さんの中から選ぶなんて行為が出来るわけなかったのです。

 そう言った意味では冴月さんの発言にとてもシンパシーを感じていました。

 だからわたしには、自ら嫌われるという選択肢をとるしかなかったのです。

 幸運にもわたしと道連れになってくれる人が声を掛けてくれたことですし。

「あ……あんた、図ったわね!?」

「やだなぁ冴月さん、自分から誘って来たくせにー」

「そういう意味じゃないって言ってんでしょ!!」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

処理中です...