学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと

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第6章 体育祭

37 波乱は静寂を伴う

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「……」

「……」

「……」

「……え、えっと、あのぅ……」

 三姉妹の皆さんから一人を選ぶという苦行を避け、一番平和的解決であろう選択肢を何とか見つけ出したわたしでしたが。

 家に帰り、夕食の時間になると恐ろしいほど静かな時間が待っていました。

「あれ。あんた、いたの?」

「“あんた”呼びに戻ってませんか!?」

 ようやく華凛かりんさんが口を利いてくれたかと思いましたが、その声音は異様に冷たく他人行儀なものなのでした。

「え、なにか問題ある?そんなに呼ばれ方にこだわりあるの?」

「い、いえ、そういうわけでは……」

 ま、まあ……。

 確かに呼び方は人それぞれですし。

 華凛さんがそうしたいのであれば、それを止める権利なんてわたしにはありません。

 でも、ちょっと距離が遠くなったというか。

 以前のように戻ってしまったのが悲しいと言うか……。

「食事中よ、私語は慎みなさい」

「こ、これだけで!?」

 空気すらも凍結させるような声音を放つのは千夜ちやさん。

 ゆっくりと顔を上げて、わたしの方に細く鋭い視線を向けます。

「ええ、そうだけど。それとも何?食事中に会話をするのがマナー違反ということを今初めて知ったのかしら?」

「あ、い、いえ……初めてではないですが……」

 でもつい先日……いえ、何でしたら今日の朝食まで和気あいあいとお話していたじゃないですか……。

 これじゃまるで……。

「そう、なら静かにしていなさい」

「は、はい……」

 え、元通り?

 なんか、振り出しに戻ってません?

 義妹になったばかりの最初の頃にタイムリープしてしまったのでしょうか?

 ……。

 う、うん。

 きっと、そうです。

 そうでなければ、こんなに一気に態度が冷え込んで、以前のような関係値になるわけないですもんね。

 そ、そうかぁ。

 今考えるべきは元の時間軸に戻る方法だったりして……。

「あ、あの日和ひよりさん?」

「はい、なんでしょうか?」

 にっこりと微笑みを浮かべる日和さん。

 そ、そうですよね。

 日和さんは最初から優しい態度でしたから。

 元の時間軸に戻ってもいつも通りなはずで……。

「あの、わたしのだけご飯がないんですけど……」

 皆さんの前には食事が用意されていましたが、わたしの前にだけ何も置かれていないのでした。

 あ、いえ、ただ忘れてるだけでしたら問題ないんですけどね?

 全然、自分でやりますから。

 ただいつも日和さんが用意してくれていたので、甘えていたのかもしれません。

「あら、ご飯が必要でした?」

「え……」

 なんかすっごい怖いこと聞かれてます……。

 表情はいつもと変わらないのに発言の内容が違い過ぎて、その落差に異様な恐怖感を感じてしまいます。

「教室ではわたし達のことを無視されていたので、てっきりわたしなんかが作ったお料理なんて召し上がらないかと思いましてぇ?」

「あ、いや……食べたいでしゅ」

 いやいやいやいやいやっ。

 目を覚ませ、花野明莉はなのあかり

 これは全然タイムリープなんかじゃありませんっ!

 紛うことなき 今の時間が流れていますっ。

 だって前より悪化してますからねっ!

 皆さんここまで冷たくなかったですもんねっ!

「そうでしたか。それでしたら今持ってきますねぇ?」

「あ、いえっ、じ、自分で持ってきます!」

「いえいえ、お気になさらないで下さい。……まあ、わたしのことを呼ぶのなら教室で呼んで欲しかったですけれど」

「……ひえ」

 日和さんまで底冷えするような声音にっ!!

 やはり、わたしに何か思う所があるんですねっ。

 というか、ペア決めの件ですよねっ。

「確かにねぇー。まあ、誰選んでも自由だけどさ、よりにもよって冴月さつきだもんねえ。……てか、なに?もしかして、あたしがトイレで助けたのって本当は迷惑だった?」

「いえいえいえっ、あの時は大変お世話になりましたっ!」

 冴月さんに絡まれた時に助けてくれたのは他ならぬ華凛さんですっ。

 それをわざわざ二人三脚のペアに選ぶとか謎行為と思われても仕方ありませんっ。

 わたしとしても苦肉の策だったのですがっ。

「その子の言ってることは口だけよ華凛。だって私達なりに考えて、譲歩して、考える時間もあげたのに結局は第三者を選ぶのだから。つまり私達の厚意なんて迷惑でしかないってことよ」

「いえいえっ、ちっ、違いますっ!す、すっごい嬉しかったですっ!」

 こ、これはやはり多分、皆さんすっごい怒ってます!!

 わたしのせいでこんな空気になっているんですねっ!!

 いま、分かりましたっ!!
 
 誰かを傷付けるより、わたし一人嫌われ者になればいいという覚悟はありましたが。

 まさか、ここまで怒らせてしまうとは……とっても予想外なのですっ。

「その言葉を信じようにも、第三者を選んでいる時点で矛盾しているのよ。貴女の態度が何よりも真実を映し出しているのよ?」

「せめて一声あって然るべきですよねぇ……」

「まあいいんじゃない?結局誰でも良かったってことなんでしょ?」

 ああ……。

 どうしたらいいのでしょう。

 わたしは裏切るような行為をしたかもしれませんが、決して皆さんの気持ちを踏みにじりたかったわけではありません。

 でも、それはわたしのワガママで自分勝手な行為だと言うのも理解しています。

 だけどやっぱり、三姉妹の皆さんを怒らせたかったわけでもありません。
 
 それに何より、わたしは皆さんと仲良くしていた……くて……。

「……うっ、ひぐっ」

『!?』

 自分が悪い事は分かっていますが、思っていたよりも、わたしは皆さんと仲良くなれていた事が嬉しかったのでしょう。

 元の距離感に戻ってしまうことが、こんなに心を締め付けられるだなんて。

 それは言葉にならず、ただ、目頭が熱く、喉が震えてくるばかりで……。

「……ご、ごめんなざ、ひぐっ、いぃぃっ」

『!?!?!?!?!?!?』

 泣く権利すらないと言うのに、ただ心がそれに追いつきませんでした。

「あ、明莉あかりっ!?ちょっ、千夜ねえマジで言い過ぎだからっ!!」

「わ、私っ!?それを言うなら華凛がいの一番に文句を言っていたでしょう!?」

「いえ、そもそもお二人が責め立て過ぎですからっ!」

 三人の声が聞こえてきますが、きっとわたしの事を言っているのでしょう。

「いやいやっ、日和ねえが一番エグかったから!ご飯用意しないとかヤバすぎだからっ!」

「そっ、そうね、ご飯を用意しないのはどうかと思うわ」

「ほら、あかちゃん?ご飯を用意しましたよぉ?決して忘れていたわけじゃありませんからねぇ。今日はお手製のプリンを明ちゃんにだけ特別にあげようと思っていたので準備に時間が掛かってしまっただけですよぉ?」

 な、なにか……良い匂いが香ってきました。

「ああっ!日和ねえきたないっ!」

「日和、貴女変わり身が早すぎじゃないかしらっ」

「もう、千夜ちゃんも華凛ちゃんも怖かったですねぇ?なにもそこまで言わなくてもいいですよねぇ?もう大丈夫ですからねぇあかちゃん?」

 日和さんの声音は、元の優しいものに戻っている気がしました。

「うぐっ……わだぢが悪いんでふっ、しゃっ、しゃんにん三人の中から選ぶなんで事ぢだぐなぐでっ……」

「ああああっ、明莉!?そ、そうだよねぇ!!三人の中から選ぶなんて嫌だよねっ!!千夜ねえがそんなことさせようとするから悪いんだよねぇ!!あたしはもう気にしてないからねっ!!」

「えっ、ちょっと華凛!?」

 さすさす、と背中に温かみを感じます。

 もしかしたら華凛さんが背中を擦ってくれているのかもしれません。

「ちっ、違うのよっ。私は貴女が一人で困っていると言うから手を差し出したかっただけで……そこまで負担になるとは思っていなかったの!」

「……ぞんな、やざぢざ優しさぶげ無下にぢだ、わだぢがわるいんでずっ……!」

「ああっ、ご、ごめんなさい。私こんなつもりじゃ……」

 普段は絶対聞く事のない困惑したような千夜さんの声音。

 それすらもわたしのせいで、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 やはり、皆さんはとても優しい方なのでしょう。

 わたしが悪いのに、一方的に断罪することなくこちらの意見にも耳を傾けてくれて、いつの間にか皆さん元通りに接してくれていたのですから。

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