学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと

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最終章 決断

74 意見は尊重しましょう

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 翌朝の学校にて。

「ふぅ……」

 席に着いて、思わず大きく息を吐きます。

 なぜでしょう。

 まだ朝なのにとても疲れています。

 理由は、昨日の夜の出来事にあって……

冴月さつきさんとやましい事はしていません』

『今度から遅くなる時は必ず連絡を入れます』

『あと、登下校は色々と問題なのでやっぱり別々にしましょう』

 というのを正座のまま延々と説明し、何とか了承を得たのでした。

 そうでもしないと安心してもらえない難しい状況にあるという事ですよね。

 誰と仲良くしても角が立ちますし、かと言って他に仲良くできる人もいません。

 八方ふさがりじゃないですか……。

 朝の爽やかな青空とは対照的に、わたしの心は曇り空なのでした。

「おはよ」

 と教室から挨拶が聞こえてきます。

 一瞬、わたし以外の人に向けてかな……?

 と勘ぐりましたが、完全にわたしを見ていたのでお返事をすることにしました。

「あ、冴月さん。おはようございます」

 あれ、これとっても自然な会話じゃないですか?

 友達がいる人みたいじゃないですか?

 ――ピロン

 同時に、スマホの通知音が鳴りました。

 連絡をとるように義務づけられたのでメッセージアプリに三姉妹の皆さんを登録させてもらったのです。

 いつもわたしは家にいたので、皆さん登録を失念していたとのことでした。

 わたしはスマホに目を通します。

『朝から浮気ですか? どなたの匂いをまとうつもりなんでしょう?』

 ……こ、こわい。

 日和ひよりさんからでした。

 恐怖な文面を見て、わたしは教室を見回します。

「……え、いない」

 日和さんの姿はどこにもありませんでした。

 どこから見てるんですか……あの方……。

「なにキョロキョロしてんのよ」

「あ、いえ……何でもありません」

 冴月さんが主題のメッセージが届いていたので、とは言えませんでした。

 というかこのまま話していて大丈夫なのでしょうか……。

「わたしが話しかけてんだから、ちゃんとこっち見なさいよ」

 そ、そうですよね。

 声を掛けてくれた冴月さんとのコミュニケーションが優先でしょう。

「はい、見ます」

「……」

「なんで黙るんですか?」

「見すぎ」

 ぷいっとそっぽを向く冴月さん。

 難しすぎません?

「それで、スマホなんで見てたのよ」

「え、何となく……ですよ」

「あんたが誰かと連絡とりあってんの初めて見たんだけど」

「え……やだなぁ。ありますよ、それくらい」

 というか何でしれっと見てるんですか。

 一瞬の出来事なのに目を光らせすぎですよ。

「今まで“あえて一人でいるんです”アピールのためにしかスマホ触ってなかったじゃん」

「……や、やだなぁ……」

「たまにホーム画面見てたよね」

「……それは黒歴史です」

 いや、ほんと。

 なんでそれも知ってるんですか。

 日和さんも日和さんですけど。

 冴月さんは冴月さんでわたしのこと見過ぎじゃありませんか?

「ま、いいからっ、わたしも登録しなさいよっ」

「え、うええっ」

 QRコードを表示する冴月さん。

 ずいっと、スマホをわたしの前に押し出してきます。

「どうせ三バカから来てたんでしょ。あいつらも登録してるなら、わたしのもしなさいよ」

「あ、や、冴月さん。あんまりそういうことを言っちゃ……」

「え、なに? あんたやっぱり贔屓ひいきしてるわけ?」
 
「そ、そうじゃなくてですねっ……」

 ――ピロン

 ひいぃ。

 通知音がっ。

『三バカってわたしたちの事でしょうかぁ? うふふ、面白いことを仰るんですねぇ』

 どこで聞いてるんですかぁぁぁっ。

あかちゃん?』

『分かってますよね?』

『他人のことをバカ呼ばわりする方は、清らかな心の持ち主ではありませんよ?』

『そんな方とメッセージのやり取りをしていいんですか?』

『そんな方の文章を読んでいたら、あかちゃんにまでその品性が移ってしまいますよ?』

 ――ピロン、ピロン、ピロン……

 “チラッ……”

 と、クマさんが壁から顔をひょっこり出してこちらを覗いてるスタンプが画面を埋め尽くしていきます。

 きょ、恐怖……!

「ねえ、さっきから何そんなにスマホばっか見てんのよっ」

 冴月さんのせいですよっ!

 とはもちろん言えません。

「や、ちょっと定時連絡が……」

「あんたにそんなのないでしょっ。何なの気になるわね、見せなさいよっ!」

 わたしのスマホに手を伸ばそうとしてきます。

「だ、ダメですよっ!」

 これは見られたら一番まずいやつですっ。

 わたしはスマホをポケットにしまって隠してしまいます。

「え、なに……そんなにアイツらの連絡の方が大事なわけ……」

 急にしょんぼりする冴月さん。

 緩急……!

 冴月さん、緩急がすごすぎますって。

 そんな悲しい顔をされたら、罪悪感がすごいじゃないですかっ。

 ただでさえわたしには答えを先延ばしにしている引け目があるんですからっ。

「わ、分かりましたっ! 連絡先は交換しましょう! 今はひとまずそれで許してください!」

 えいっと、冴月さんが表示していたQRコードを読み込んで友だち登録しましたっ。

「……まあ、花野はなのがそうしたいって言うならそれでいいけどっ」

 ふんっと鼻を鳴らして席へ戻っていく冴月さん。

 その足取りが妙に軽いように見えたのは……まあ、気のせいでしょう。

 ――ピロン、ピロン、ピロン……

 “了解!”

 と、クマさんが敬礼して、画面が埋まっていきます……。

 意味深でやっぱり怖いのですが……。

 あと日和さん、お願いですから教室に顔を出してください……。

 
        ◇◇◇


「それでは、文化祭の出し物について決めたいと思います」

 黒板の前に千夜ちやさんが立っていました。

 ここ最近めまぐるしく状況が変わっていくので時間感覚が失われていますが、もうそんな時期になったんですね。

 ……ふっ、もちろんわたしは苦手なイベントですけどね。

 お願いですから、地味な出し物にしてください。

 わたしは裏方に徹して、隅っこで待機しています。

「事前にアンケートをとっていましたので、その集計結果を元に私の方で決めさせて頂きました」

 さすが千夜さん……。

 なんというか、お決まりの

『わたしはタコ焼き!』『いいえ、焼きそばよっ!』

 みたいな熱い議論を交わし合うくだりをカットするんですね。

 効率的で素敵です。

「最も投票数が多かった“メイド喫茶”にしたいと思います」

 わあああああああっ、と何だかよく分からない盛り上がりに沸き立つクラス。

 メイド喫茶か……まあ、いいでしょう。

 皆さんのメイド姿をこの目に焼き付けて、わたしは隅っこでオムライスでも焼いてますよ。

「それで役割分担も私の方で割り振っておいたので、こちらをご覧ください」

 担当を割り振ったエクセルをモニターに映し出す千夜さん。

 あ、皆に挙手してもらって黒板に書くみたいなくだりもカットなんですね。

 やっぱり効率的で素敵……んんっ!?

「勿論、これは皆さんの意見を元にした初期案ですので安心して下さい。変更を希望される方は挙手をお願いします、調整しますので」

 こ……これはっ!

 わたしは挙手をせざるを得ません……!

 だって――

 【メイド:花野明莉……】

 ――と、なぜか一番最初にわたしの名前が書き込まれていたのですから……!!

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