【完結済】王妃になりたかったのではありません。ただあなたの妻になりたかったのです。

鳴宮野々花@書籍4作品発売中

文字の大きさ
6 / 35

6. イルゼの魅力(※sideウェイン)

しおりを挟む
「皆が私たちのことを噂しているそうですわ。身分の差を越えた真実の愛として。ふふ。なんだか恥ずかしいですわね」
「ふ、そうか」
「王太子殿下は愛するイルゼのために、政略結婚するはずだった長年の婚約者を捨てたって。真実の愛の力は偉大だって、皆が言っているそうですわ。私の友人のローザがそう言っていましたの。あ、殿下は覚えていらっしゃるかしら?同じ学園にいましたのよ、ローザ・マコーミック男爵令嬢ですわ」
「ああ、君の親しい友人だね」
「ええ。ふふ」

 王太子の私室で、二人きりの幸せな時間を過ごしながら、俺は愛妻の顔を見つめていた。

 “捨てた”。そうだ。俺は確かにフィオレンサを捨てたのだ。
 イルゼの言うとおり。偽りの愛ではなく、真実の愛を選んだ。

 イルゼは可愛らしい。フィオレンサももちろん皆が認める美貌の持ち主だった。品のある美しさに加え、立ち居振る舞いの完璧さ。いかにも教養ある公爵家の令嬢といった感じだった。
 それに比べれば、イルゼにはまだまだあどけなさを感じる。不安定な頼りなさ。美しい、というよりは可愛らしいという言葉がピッタリだ。ふとした表情はとても幼くて、まるでものを知らない純真無垢な子どものようだ。淑女然として会話をしていても、時折その幼さが顔を覗かせる。そしてそんな彼女の幼さとはアンバランスなほどの、豊満な肢体。凹凸のくっきりとした色気のある体つきは、彼女の無邪気さや可愛らしさとのギャップがすごくて、俺はあっという間に虜になったものだ。

 フィオレンサならば、完璧な王太子妃となっただろう。幼少の頃からしっかりしていて、いつも俺をサポートしてくれていたのも事実だ。

 だが、所詮それは公爵令嬢としての責務だからこなしていただけのこと。そこに愛はなかった。無邪気なイルゼから度々聞かされた俺の知らないフィオレンサの話には、驚かされたものだ。

「……。」

 俺は改めて目の前のイルゼを見つめる。二人の真実の愛を周りに祝福されている喜びを語る、可愛らしい俺のイルゼ。波打つ艶やかな栗色の髪。深いグリーンの潤んだ瞳。真っ白で吸い付くようなしっとりとした肌。小首をかしげて俺を見つめて話す時の、庇護欲をそそる幼さ。

 イルゼの全てが、可愛くてたまらない。

 やはり間違ってはいなかった。俺がこの子に飽きたり、この子を嫌いになったりする日は永遠に来ないだろう。これだけずっと見つめていても少しも飽きることがない。ようやく手に入れた。真実の愛に満ちた幸せな生活。
 俺たち王太子夫妻の幸せは、きっと民の幸せにも繋がるだろう。この愛に満ちた生活を、広く国民にも伝えていくのだ。
 愛は素晴らしいものだ。

「……イルゼ」
「はい?殿下」
「……こちらへおいで」

 俺はイルゼをベッドに誘った。

「……ま、まぁ、殿下……。まだお昼ですわ……」

 イルゼが察し、愛らしく頬を染める。その恥じらう姿がより一層俺の熱を誘う。

「いいだろう、昼だろうと夜だろうと。四六時中お前を抱きしめていたいんだよ、俺は。……おいで」
「まぁ、ふふ。殿下ったら……」

 イルゼは恥ずかしそうに俯きながらも、素直に俺の腕の中に身を委ねてきた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした

おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。 真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。 ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。 「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」 「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」 「…今度は、ちゃんと言葉にするから」

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります

恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」 「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」 十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。 再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、 その瞬間に決意した。 「ええ、喜んで差し上げますわ」 将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。 跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、 王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。 「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」 聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

親切なミザリー

みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。 ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。 ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。 こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。 ‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。 ※不定期更新です。

【完結】実兄の嘘で悪女にされた気の毒な令嬢は、王子に捨てられました

恋せよ恋
恋愛
「お前が泣いて縋ったから、この婚約を結んでやったんだ」 婚約者である第一王子エイドリアンから放たれたのは、 身に覚えのない侮蔑の言葉だった。 10歳のあの日、彼が私に一目惚れして跪いたはずの婚約。 だが、兄ヘンリーは、隣国の魔性の王女フローレンスに毒され、 妹の私を「嘘つきの悪女」だと切り捨てた。 婚約者も、兄も、居場所も、すべてを奪われた私、ティファニー16歳。 学園中で嘲笑われ、絶望の淵に立たされた私の手を取ったのは、 フローレンス王女の影に隠れていた隣国の孤高な騎士チャールズだった。 「私は知っています。あなたが誰よりも気高く、美しいことを」 彼だけは、私の掌に刻まれた「真実の傷」を見てくれた。 捨てられた侯爵令嬢は、裏切った男たちをどん底へ叩き落とす! 痛快ラブ×復讐劇、ティファニーの逆襲が始まる! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~

水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。 ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。 しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。 彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。 「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」 「分かりました。二度と貴方には関わりません」 何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。 そんな中、彼女を見つめる者が居て―― ◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。 ※他サイトでも連載しています

結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?

ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十年目。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。 ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

処理中です...