【完結済】結婚式の夜、突然豹変した夫に白い結婚を言い渡されました

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5. 疲弊する日々

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 それからの数ヶ月間、私は新しい自分の立場に見合った努力を重ねた。

 まずは義姉として、サリアとの親交を深めること。どうしても彼女に苦手意識があり気が進まなかったけれど、家族になったことに変わりはない。不仲であるよりは仲良くしていた方がいいに決まっている。学院から帰ってくると毎日のように私の部屋に入ってきては、人のベッドに断りもなくグデーッと寝そべり愚痴をこぼす彼女を励ました。

「ねーぇお義姉さま。あの学校一体どうなってるの? お勉強難しすぎない? なんでこんなに何ヵ国語も学ぶ必要があるわけ? あたしもう疲れちゃったぁ……。休憩時間も少ないし、皆真面目で頭いい子ばかりで話は合わないし、ダンスの先生はすっごく厳しいし……。今日も怒られちゃったのよ。もう嫌よあたし」
「……サリア、お疲れさま。慣れるまではとても大変よね。でもね、学院で教えてくださることは、侯爵家の娘として、社交の場で今後必要になってくる知識ばかりなのよ。学友たちとの交友関係も、今のうちに円滑にしておけば……」
「あ! そうだお義姉さま! ラウル様は? 今日は来られたの?」
「……」

 彼女の不安や疲れを汲み取り、少しでも寄り添ってあげようと思って言葉をかけているのに、サリアはいつもこうして愚痴るだけ愚痴っておきながら勝手に話の腰を折る。

「来てないわ。ラウル様は月に二度ほどしかお見えにならないと前も話したはずだけど」
「えぇ~? んもーぉ、まだ来られないの? あたしラウル様にお会いしたーい。……ね、お義姉さま。ラウル様にお手紙を書いてよ。今度いらっしゃる時は学院がお休みの週末がいいって。そしたらあたしもラウル様とお茶をご一緒できるでしょ? んふ」

 ……そして我が家にやって来た当初に比べると、だんだんと図々しく、厚かましいことを平気で言うようになってきた。

「……そのうちにね」
「そのうちっていつ? すぐに書いてよ!」
「……」



 そして次に、婚約者となったラウル様との心の距離を縮めていくこと。
 
 このままの状態で結婚してしまえば、陰鬱で寂しい毎日がはじまることは目に見えている。少しずつでも彼との関係を改善していかなくちゃ。

 ラウル様は婚約して以来、二週間に一度程度の割合でうちの屋敷に顔を出し、私とお茶をする。もちろん親交を深めることがその目的なのだが、相変わらずぎくしゃくしたままだ。しかも彼の方から積極的に言葉をかけてくれることもない。おそらくこの訪問もご両親のどちらかに言われて渋々行っているのだろう。

「……子どもの頃、時折ヘイワード公爵邸にお呼ばれしていたのを思い出しますわ。ほら、私の母が元気だった頃、ラウル様のお母様とよくお茶をしたり、お喋りしながら刺繍を刺したりしていましたわよね。……覚えていらっしゃいますか?」
「ええ。もちろん」
「ふふ。あの頃はそばで待っているのが退屈でしたわ。私もラウル様も、よく絵本を読んでいましたわね」
「……そうでしたね」
「……」
「……」
「……今思えば、あの頃ラウル様にお屋敷を案内していただいたりすれば楽しかったかもしれませんわね。ヘイワード公爵邸は、庭園がとても素敵ですもの。ご一緒にお散歩したり外で遊んでいれば、退屈も紛れたかもしれませんわ」
「……はは」
「……。ラウル様は、幼少の頃はどんなことをするのがお好きでしたの? お外で遊んだりもされていたのですか?」
「いえ、あまり」
「……。あ、やっぱり本を読んだりするのがお好きだったのですか?」
「ええ」
「……」
「……」
「…………わ、私は、わりと活発だったんですのよ。読書も好きでしたけれど、天気の良い日は時折侍女たちを伴ってピクニックをしたり、草原を走り回ったりもしていましたわ。あくまで勉強の合間の、気分転換程度の時間でしたけれど」
「……そうですか」
「…………」



  ◇ ◇ ◇



「どう? ヘイワード公爵令息とは。仲良くしてて?」
「……聞いてくれるの? カトリーナ……」

 そんなある日の、王宮の庭園にて。
 私は王太子殿下の婚約者となったエーメリー公爵家のカトリーナに、ついに愚痴を零してしまった。実は私とカトリーナは大の親友同士。こちらが王太子殿下の婚約者争いに敗れてしまったからといって、私たちの関係が変わることは一切なかった。それはそれ、これはこれだもの。私たちは幼い頃から王宮やそれ以外の様々な場所でよく顔を合わせていたし、リデール王立学院の同窓生でもあった。学院に在籍していた当時はいつも一緒に行動するほどの仲だったカトリーナとは、今でも誰よりも気のおけない友人同士だ。

 この日は恒例の王妃陛下のお茶会が終わった後、帰る前に二人だけで庭園を散策しながら、わずかなお喋りの時間を楽しむつもりでいた。王妃陛下はかつての王太子殿下の婚約者候補たちを含む高位貴族の令嬢たちを招いては、よく茶会を開いている。様々な情報交換や、互いの切磋琢磨が目的らしい。

「随分疲れきってるじゃない。顔を見た時から、気にはなっていたのよ。……上手くいかない?」
「んー……。そうねぇ。ラウル様に関してはもう、まるっきり手応えがなくて、正直今のところ徒労感しかないわ」

 私は婚約以来の自分の努力と、向こうから一切歩み寄る気配がないことについてカトリーナに相談してみた。





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