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41. ロージエに会いたい(※sideラウル)
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一体何を言い出すんだ、この小娘は。たしかにティファナの本性をロージエに聞かされてから、彼女への憎悪が日に日に増していることは事実だ。だが、それでこの娘への嫌悪感がなくなるわけではない。むしろ私にとっては義姉妹で嫌な存在となっただけだ。
私が冷たく睨みつけても、サリアは気にするそぶりもない。私の手首を両手でギュッと握ったまま、しおらしげな表情を作って言う。
「いつもずっと、あなた様のことばかり考えていました。今頃ラウル様はどう過ごしていらっしゃるのかしら、って……。お義姉さまとの結婚生活じゃ、きっと心休まる時もないだろうなって。だってお義姉さまって、心の中ではあなた様のことを見下していらっしゃるから。お義姉さまは本当に、王太子殿下の妃になりたかったんです。今でもその夢が破れたショックを引きずっているのですから。他の男なんて皆ゴミ。そう言っていたこともありました」
「……」
知っている。ティファナの本心は。ロージエから聞かされているからだ。
早くこの女のそばから離れたくて、私は適当な返事をする。
「だからと言って、何なのだ。ティファナの本心がどうあれ、私と彼女が夫婦であることに変わりはない。私たちはヘイワード公爵家とオールディス侯爵家の子女なのだから。今後もこの結婚生活を続けていくだけだ。君が口出しすることではない。いい加減に手を離してくれ」
「……あたしじゃ、ダメですか? ラウル様」
サリアの大きな瞳に、みるみる涙が溜まっていく。離せと言うのにむしろますますしっかりと私の手首を握りしめ、潤んだ瞳で切なげな表情を浮かべ、私のことを見上げてくる。
「あたしだって、もうオールディス侯爵家の娘です! そしてあたしは、あなた様のことを一途に愛しております。お義姉さまとは違う……! あたしなら、あなたを癒してあげられるわ。毎日が幸せな結婚生活になる。ラウル様だって、妻があたしだと嬉しいでしょう? あなたを欠片ほども愛していない傲慢な女よりも、あなたのことだけを見つめ続けるあたしの方がいいはずよ。……ね? ラウル様。どうかご自分の気持ちを見つめてみて。素直になって。あたし、可愛いでしょう? 今、あなたの手が届くところにあたしがいるのよ」
サリアはそう言うと私を見つめたままゆっくりと立ち上がり、私の至近距離にピタリと立った。そしてようやく手を離したかと思うと、今度は自分の両手を私の胸の辺りにそっと添えた。豊満な胸を押し付けるように私にすり寄り、ねっとりとした視線で見上げてくる。
「大好きよ、ラウル様。あなたって本当に、素敵な人……」
そう言うとサリアは、私を見つめたまま背伸びをし、ゆっくりと瞳を閉じた。
「……」
「……」
……何をしているんだ? この小娘は。
唇をこちらに突き出すサリアが不気味すぎて、私は大きく後ろに足を踏み出し、一気に後ずさった。その勢いでサリアのバランスが崩れ、彼女は前のめりにドテンと転げた。
「ひやぁっ! ……な……、何をしてるんですの!? ラウル様! ここで離れるなんて正気じゃないわ!」
「正気じゃないのは君だ。発情期の獣なのか。気持ち悪い。君と私がどうこうなることなんて絶対にありえない。二度と近付かないでくれたまえ」
そう言い捨てると、私は彼女に背を向けた。歩き出そうとした時、サリアがへたり込んだまま金切り声を上げる。
「あ、あたしを受け入れないなんて、おかしいんじゃなくて!? オールディス侯爵家の娘なのよ!? あんな愛想のない、頭でっかち女より断然あたしの方がいいはずでしょう!? ロージエからあたしのことを聞かされて、何とも思わなかったの!?」
「……。何がだ」
「だから! 優しくて愛嬌があって可愛いあたしが、いつもあの子に親切にしてる話を聞いていたでしょう!? 心が動かなかったの!? 同じオールディス侯爵家の娘なら、高慢ちきなティファナよりも愛らしいサリアと結婚しなおしたいって、少しくらい頭をよぎったはずよ! ……ねぇ、ラウル様、お願いだから意地を張らずに、よく考えてみて。素直になってよ。大丈夫だから。きっとお義父さまだって許してくださるわ」
「……。もう一度言う。二度と私に近付いてくれるな」
まともにとりあう気にもなれず、私は今度こそその場を離れた。
庭園で束の間の休息を取るはずが、逆にますます気力を奪われ消耗してしまった。
(全く……。ロージエ以外にまともな女はいないのか。早くロージエに会って癒されたいものだ……)
渋々食堂に戻りながらも、私の頭の中にはロージエのあの気弱で控えめな笑顔だけがあった。
私が冷たく睨みつけても、サリアは気にするそぶりもない。私の手首を両手でギュッと握ったまま、しおらしげな表情を作って言う。
「いつもずっと、あなた様のことばかり考えていました。今頃ラウル様はどう過ごしていらっしゃるのかしら、って……。お義姉さまとの結婚生活じゃ、きっと心休まる時もないだろうなって。だってお義姉さまって、心の中ではあなた様のことを見下していらっしゃるから。お義姉さまは本当に、王太子殿下の妃になりたかったんです。今でもその夢が破れたショックを引きずっているのですから。他の男なんて皆ゴミ。そう言っていたこともありました」
「……」
知っている。ティファナの本心は。ロージエから聞かされているからだ。
早くこの女のそばから離れたくて、私は適当な返事をする。
「だからと言って、何なのだ。ティファナの本心がどうあれ、私と彼女が夫婦であることに変わりはない。私たちはヘイワード公爵家とオールディス侯爵家の子女なのだから。今後もこの結婚生活を続けていくだけだ。君が口出しすることではない。いい加減に手を離してくれ」
「……あたしじゃ、ダメですか? ラウル様」
サリアの大きな瞳に、みるみる涙が溜まっていく。離せと言うのにむしろますますしっかりと私の手首を握りしめ、潤んだ瞳で切なげな表情を浮かべ、私のことを見上げてくる。
「あたしだって、もうオールディス侯爵家の娘です! そしてあたしは、あなた様のことを一途に愛しております。お義姉さまとは違う……! あたしなら、あなたを癒してあげられるわ。毎日が幸せな結婚生活になる。ラウル様だって、妻があたしだと嬉しいでしょう? あなたを欠片ほども愛していない傲慢な女よりも、あなたのことだけを見つめ続けるあたしの方がいいはずよ。……ね? ラウル様。どうかご自分の気持ちを見つめてみて。素直になって。あたし、可愛いでしょう? 今、あなたの手が届くところにあたしがいるのよ」
サリアはそう言うと私を見つめたままゆっくりと立ち上がり、私の至近距離にピタリと立った。そしてようやく手を離したかと思うと、今度は自分の両手を私の胸の辺りにそっと添えた。豊満な胸を押し付けるように私にすり寄り、ねっとりとした視線で見上げてくる。
「大好きよ、ラウル様。あなたって本当に、素敵な人……」
そう言うとサリアは、私を見つめたまま背伸びをし、ゆっくりと瞳を閉じた。
「……」
「……」
……何をしているんだ? この小娘は。
唇をこちらに突き出すサリアが不気味すぎて、私は大きく後ろに足を踏み出し、一気に後ずさった。その勢いでサリアのバランスが崩れ、彼女は前のめりにドテンと転げた。
「ひやぁっ! ……な……、何をしてるんですの!? ラウル様! ここで離れるなんて正気じゃないわ!」
「正気じゃないのは君だ。発情期の獣なのか。気持ち悪い。君と私がどうこうなることなんて絶対にありえない。二度と近付かないでくれたまえ」
そう言い捨てると、私は彼女に背を向けた。歩き出そうとした時、サリアがへたり込んだまま金切り声を上げる。
「あ、あたしを受け入れないなんて、おかしいんじゃなくて!? オールディス侯爵家の娘なのよ!? あんな愛想のない、頭でっかち女より断然あたしの方がいいはずでしょう!? ロージエからあたしのことを聞かされて、何とも思わなかったの!?」
「……。何がだ」
「だから! 優しくて愛嬌があって可愛いあたしが、いつもあの子に親切にしてる話を聞いていたでしょう!? 心が動かなかったの!? 同じオールディス侯爵家の娘なら、高慢ちきなティファナよりも愛らしいサリアと結婚しなおしたいって、少しくらい頭をよぎったはずよ! ……ねぇ、ラウル様、お願いだから意地を張らずに、よく考えてみて。素直になってよ。大丈夫だから。きっとお義父さまだって許してくださるわ」
「……。もう一度言う。二度と私に近付いてくれるな」
まともにとりあう気にもなれず、私は今度こそその場を離れた。
庭園で束の間の休息を取るはずが、逆にますます気力を奪われ消耗してしまった。
(全く……。ロージエ以外にまともな女はいないのか。早くロージエに会って癒されたいものだ……)
渋々食堂に戻りながらも、私の頭の中にはロージエのあの気弱で控えめな笑顔だけがあった。
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