66 / 74
65. ターゲット(※sideサリア)
しおりを挟む
「……う……う、嘘、でしょう……?」
鼓膜が破れそうなほどの大歓声と拍手の中、あたしと母はただ呆然と立ち尽くしていた。
なぜ……? なぜラウル様と離縁したばかりのはずのお義姉さまが、いきなり王弟殿下と婚約なんて話になるわけ……? しかも、王弟殿下が、あ、あんなに素敵な……神々しいほどの美男子だなんて……。
「何よこれ……。一体、どういうことなの……!?」
隣に立つ母も震える声でそう呟いている。当たり前だわ。訳が分からない。お義姉さまは今、不幸のどん底のはずでしょう? 王太子の婚約者の座をものにできなかったことに続き、ヘイワード公爵家の嫡男との結婚もダメになって、二度目の大失敗。お義父さまをまた失望させることになって、ショックであんなに泣いてたじゃないの。
それなのに……なんでこんなことになってるわけ!?
悪夢を見ているような気分だった。こっちはラウル様を籠絡できなかったばかりか、ロージエなんかにコケにされて、挙句の果てにはオールディス侯爵家からも追い出されることになりそうだっていうのに。
なんであたしよりはるかに不細工で愚鈍なロージエがラウル様をつかまえて、お義姉さまは王弟殿下の婚約者なんてことになってるのよ!!
近くにいた身なりの良いどこぞのご令嬢たちが、この歓声の中満面の笑みで言葉を交わしている。
「素敵だわ、ティファナ様……! ね、ご覧になって。あんなにもお幸せそう……!」
「ええ、ますますお美しくなられて。王弟殿下のご寵愛の深さが窺い知れるわ。あのドレス……きっと殿下が贈られたのでしょうね。それに殿下も、ティファナ様の瞳の色をあんなに身に纏っておられるわ」
「本当にお似合いのお二人ですわね」
不快な会話が煩わしくて、引っ叩いて黙らせてやりたくなる。悔しくて悔しくて、あたしは思わず拳を握りしめ歯を食いしばった。
(なんでお義姉さまばっかりあんなにいい思いをしてるのよ……! なんであたしはこんな目に遭わなきゃならないわけ!?)
悠然と微笑み幸せなオーラを放つお義姉さまのことを、隣の王弟殿下が愛おしそうに見つめている。まるで他の人なんてまるっきり目に入らないとでも言わんばかりに。
「……何よ、これ……。建国を祝うパーティーなんでしょ? 何であの人たちが主役みたいになってるのよ。おかしいじゃないの。ねぇ? お母様」
苛ついて仕方なくて、あたしは母の同意を得ようとした。
けれど母はあたしの腕を乱暴に掴み、顔を寄せてくる。
「もうどうでもいいわ! オールディス侯爵家の娘のことなんか! あなたもしっかりやりなさいよサリア! 分かってるはずでしょう!? ここが私たちの、最後のチャンスの場なのよ!? 人のことに気を取られてないで、しっかり吟味しなさいよ、あなたに夢中になりそうな頼もしい殿方を!」
(……何よ。自分だってたった今まで愕然としてたじゃないの)
あたしが捕まえた男に寄りかかって楽して生活しながら、うだつの上がらない愛人の男に貢ぎたいだけのくせに。
母にまで腹が立ってきたあたしは、返事もせずに手を振りほどき、その場を離れた。
(言われなくても分かってるわよ。見つければいいんでしょ、見つければ……)
異様なまでの熱気に包まれた大広間は、時間が経ってようやく夜会らしくなってきた。そこここで列席者たちが挨拶を交わし、お喋りに興じている。あたしはそんな人々の間をゆっくりと歩きながら、めぼしい獲物を探してまわる。
(……何なのよ。高位貴族の男たち、誰も彼もが女性と一緒にいるじゃないの)
明らかに良い身なりの上等そうな若い男のそばには、品の良い令嬢が見せつけるように寄り添っている。恐らくは皆婚約者なのだろう。中途半端な家柄の次男か三男あたりの男は次々あたしに声をかけてくるけど、見た目も中身も全然パッとしない。伯爵家の三男なんかに褒めそやされたって、少しも気分が上がらないわ。
だってあたしはヘイワード公爵家の嫡男と一緒になるつもりだったのに……。
(だけどもう、この辺の男で手を打つしかないのかしら……)
贅沢言っていられないのは分かってる。ここで金持ちの男を捕まえておかなきゃ。もうすぐあたしと母は、ただの平民に戻るんだもの。後ろ盾になってくれる男はどうしたって必要だわ。
だけど……。
「……はぁ」
うんざりしながらあたしは人波をかき分け、広間の端に移動する。
するとそこから、お義姉さまの姿がよく見えた。王家の方々の近くで、まるで自分ももう王族の一員にでもなったかのように堂々と振る舞っている。
(……ふん。何よ、あの笑顔。調子に乗っちゃって。上手いことやったわね、ホント)
上品なご婦人たちの挨拶を受けながら優雅に微笑む義姉を見てますます嫌な気分になる。他の王族たちを見渡すと、王太子殿下とその婚約者らしき令嬢の存在が目にとまった。
(こうして見るとやっぱり格好いいわ、王太子殿下。さすが王族ね。リデール王国の王族は皆美形揃いだわ)
ダミアン・リデール王太子殿下は、口元にほくろのあるやや垂れ目の美男子だった。優しそうだけど、ヘラヘラしててなんだか軽薄そうにも見える。王族らしい威厳は感じられない。
(隣に立っているあの美人が、お義姉さまとその座を争った王太子の婚約者ってわけね。……ふぅん。さすがのオーラだわ)
羨ましい。この国で最も高貴な男の妃になる女性。これから先の人生皆にチヤホヤされながら、贅沢なものに囲まれて優雅な毎日を送るのよね。
あたしとは大違いだわ。
そんなことを考えて惨めな気持ちになりながら何気なく彼らを見ていると、あたしはあることに気付いた。
次々と挨拶に訪れる人々に対応しながら、ダミアン王太子がとりわけ相好を崩す瞬間があった。それは、若く美しい令嬢たちからの挨拶を受ける時。
貴族たちからの挨拶をいかにも面倒そうにやり過ごしながらも、時折パッと顔を輝かせてヘラヘラとだらしなく笑い、妙に長い時間相手を引き留めていることがある。そういう時は決まって相手が可愛らしく、美しい令嬢だった。
ついにはある令嬢の手を握り、何やら耳元で囁いたりまでしている。
あたしは思わず王太子の隣にいる婚約者の顔色を確認した。けれど、さすがは選ばれし女性。そのアルカイックスマイルを一切崩すことはなく、他の貴族たちの挨拶を受けながら、この上なく優美に微笑みを返していた。
(……もしかして、愛人くらい何人かいるんじゃないかしら、あの王太子)
いいなぁ。王太子の愛人になんてなれたら、その後の人生ずっと面倒見てもらえるのは確定じゃない。もう何の苦労もないわ。あの王太子好き者そうだし、若くて綺麗な女なら誰にでも言い寄ってそうな雰囲気まである。
「…………」
ふとあたしの頭の中にある考えがよぎった。
あたしはその場を静かに離れ、もっと前の方に移動した。あえて人波からは距離をとり、王家の方々から見えやすい端の方の位置に、一人ポツンと立ってみた。そしてそのまま、王太子をジッと見つめる。
しばらく経った頃、目の前の令嬢たちと楽しそうに笑いながら挨拶を交わしていた王太子が、ふいに会場全体に視線を滑らせた。挨拶に疲れたのだろうか。やがてその視線があたしを通り過ぎ、そしてもう一度ゆっくりと、あたしの元に戻ってきた。
王太子があたしを見つめている。
あたしは自分の全身に神経を巡らせ、自分が最も可愛く見える角度とポーズをとっていた。
そのまま王太子を見つめ返しながら、ほんの少し首を傾けゆっくりと瞬きをすると、極めて蠱惑的に唇の端を持ち上げた。
鼓膜が破れそうなほどの大歓声と拍手の中、あたしと母はただ呆然と立ち尽くしていた。
なぜ……? なぜラウル様と離縁したばかりのはずのお義姉さまが、いきなり王弟殿下と婚約なんて話になるわけ……? しかも、王弟殿下が、あ、あんなに素敵な……神々しいほどの美男子だなんて……。
「何よこれ……。一体、どういうことなの……!?」
隣に立つ母も震える声でそう呟いている。当たり前だわ。訳が分からない。お義姉さまは今、不幸のどん底のはずでしょう? 王太子の婚約者の座をものにできなかったことに続き、ヘイワード公爵家の嫡男との結婚もダメになって、二度目の大失敗。お義父さまをまた失望させることになって、ショックであんなに泣いてたじゃないの。
それなのに……なんでこんなことになってるわけ!?
悪夢を見ているような気分だった。こっちはラウル様を籠絡できなかったばかりか、ロージエなんかにコケにされて、挙句の果てにはオールディス侯爵家からも追い出されることになりそうだっていうのに。
なんであたしよりはるかに不細工で愚鈍なロージエがラウル様をつかまえて、お義姉さまは王弟殿下の婚約者なんてことになってるのよ!!
近くにいた身なりの良いどこぞのご令嬢たちが、この歓声の中満面の笑みで言葉を交わしている。
「素敵だわ、ティファナ様……! ね、ご覧になって。あんなにもお幸せそう……!」
「ええ、ますますお美しくなられて。王弟殿下のご寵愛の深さが窺い知れるわ。あのドレス……きっと殿下が贈られたのでしょうね。それに殿下も、ティファナ様の瞳の色をあんなに身に纏っておられるわ」
「本当にお似合いのお二人ですわね」
不快な会話が煩わしくて、引っ叩いて黙らせてやりたくなる。悔しくて悔しくて、あたしは思わず拳を握りしめ歯を食いしばった。
(なんでお義姉さまばっかりあんなにいい思いをしてるのよ……! なんであたしはこんな目に遭わなきゃならないわけ!?)
悠然と微笑み幸せなオーラを放つお義姉さまのことを、隣の王弟殿下が愛おしそうに見つめている。まるで他の人なんてまるっきり目に入らないとでも言わんばかりに。
「……何よ、これ……。建国を祝うパーティーなんでしょ? 何であの人たちが主役みたいになってるのよ。おかしいじゃないの。ねぇ? お母様」
苛ついて仕方なくて、あたしは母の同意を得ようとした。
けれど母はあたしの腕を乱暴に掴み、顔を寄せてくる。
「もうどうでもいいわ! オールディス侯爵家の娘のことなんか! あなたもしっかりやりなさいよサリア! 分かってるはずでしょう!? ここが私たちの、最後のチャンスの場なのよ!? 人のことに気を取られてないで、しっかり吟味しなさいよ、あなたに夢中になりそうな頼もしい殿方を!」
(……何よ。自分だってたった今まで愕然としてたじゃないの)
あたしが捕まえた男に寄りかかって楽して生活しながら、うだつの上がらない愛人の男に貢ぎたいだけのくせに。
母にまで腹が立ってきたあたしは、返事もせずに手を振りほどき、その場を離れた。
(言われなくても分かってるわよ。見つければいいんでしょ、見つければ……)
異様なまでの熱気に包まれた大広間は、時間が経ってようやく夜会らしくなってきた。そこここで列席者たちが挨拶を交わし、お喋りに興じている。あたしはそんな人々の間をゆっくりと歩きながら、めぼしい獲物を探してまわる。
(……何なのよ。高位貴族の男たち、誰も彼もが女性と一緒にいるじゃないの)
明らかに良い身なりの上等そうな若い男のそばには、品の良い令嬢が見せつけるように寄り添っている。恐らくは皆婚約者なのだろう。中途半端な家柄の次男か三男あたりの男は次々あたしに声をかけてくるけど、見た目も中身も全然パッとしない。伯爵家の三男なんかに褒めそやされたって、少しも気分が上がらないわ。
だってあたしはヘイワード公爵家の嫡男と一緒になるつもりだったのに……。
(だけどもう、この辺の男で手を打つしかないのかしら……)
贅沢言っていられないのは分かってる。ここで金持ちの男を捕まえておかなきゃ。もうすぐあたしと母は、ただの平民に戻るんだもの。後ろ盾になってくれる男はどうしたって必要だわ。
だけど……。
「……はぁ」
うんざりしながらあたしは人波をかき分け、広間の端に移動する。
するとそこから、お義姉さまの姿がよく見えた。王家の方々の近くで、まるで自分ももう王族の一員にでもなったかのように堂々と振る舞っている。
(……ふん。何よ、あの笑顔。調子に乗っちゃって。上手いことやったわね、ホント)
上品なご婦人たちの挨拶を受けながら優雅に微笑む義姉を見てますます嫌な気分になる。他の王族たちを見渡すと、王太子殿下とその婚約者らしき令嬢の存在が目にとまった。
(こうして見るとやっぱり格好いいわ、王太子殿下。さすが王族ね。リデール王国の王族は皆美形揃いだわ)
ダミアン・リデール王太子殿下は、口元にほくろのあるやや垂れ目の美男子だった。優しそうだけど、ヘラヘラしててなんだか軽薄そうにも見える。王族らしい威厳は感じられない。
(隣に立っているあの美人が、お義姉さまとその座を争った王太子の婚約者ってわけね。……ふぅん。さすがのオーラだわ)
羨ましい。この国で最も高貴な男の妃になる女性。これから先の人生皆にチヤホヤされながら、贅沢なものに囲まれて優雅な毎日を送るのよね。
あたしとは大違いだわ。
そんなことを考えて惨めな気持ちになりながら何気なく彼らを見ていると、あたしはあることに気付いた。
次々と挨拶に訪れる人々に対応しながら、ダミアン王太子がとりわけ相好を崩す瞬間があった。それは、若く美しい令嬢たちからの挨拶を受ける時。
貴族たちからの挨拶をいかにも面倒そうにやり過ごしながらも、時折パッと顔を輝かせてヘラヘラとだらしなく笑い、妙に長い時間相手を引き留めていることがある。そういう時は決まって相手が可愛らしく、美しい令嬢だった。
ついにはある令嬢の手を握り、何やら耳元で囁いたりまでしている。
あたしは思わず王太子の隣にいる婚約者の顔色を確認した。けれど、さすがは選ばれし女性。そのアルカイックスマイルを一切崩すことはなく、他の貴族たちの挨拶を受けながら、この上なく優美に微笑みを返していた。
(……もしかして、愛人くらい何人かいるんじゃないかしら、あの王太子)
いいなぁ。王太子の愛人になんてなれたら、その後の人生ずっと面倒見てもらえるのは確定じゃない。もう何の苦労もないわ。あの王太子好き者そうだし、若くて綺麗な女なら誰にでも言い寄ってそうな雰囲気まである。
「…………」
ふとあたしの頭の中にある考えがよぎった。
あたしはその場を静かに離れ、もっと前の方に移動した。あえて人波からは距離をとり、王家の方々から見えやすい端の方の位置に、一人ポツンと立ってみた。そしてそのまま、王太子をジッと見つめる。
しばらく経った頃、目の前の令嬢たちと楽しそうに笑いながら挨拶を交わしていた王太子が、ふいに会場全体に視線を滑らせた。挨拶に疲れたのだろうか。やがてその視線があたしを通り過ぎ、そしてもう一度ゆっくりと、あたしの元に戻ってきた。
王太子があたしを見つめている。
あたしは自分の全身に神経を巡らせ、自分が最も可愛く見える角度とポーズをとっていた。
そのまま王太子を見つめ返しながら、ほんの少し首を傾けゆっくりと瞬きをすると、極めて蠱惑的に唇の端を持ち上げた。
1,191
あなたにおすすめの小説
その結婚は、白紙にしましょう
香月まと
恋愛
リュミエール王国が姫、ミレナシア。
彼女はずっとずっと、王国騎士団の若き団長、カインのことを想っていた。
念願叶って結婚の話が決定した、その夕方のこと。
浮かれる姫を前にして、カインの口から出た言葉は「白い結婚にとさせて頂きたい」
身分とか立場とか何とか話しているが、姫は急速にその声が遠くなっていくのを感じる。
けれど、他でもない憧れの人からの嘆願だ。姫はにっこりと笑った。
「分かりました。その提案を、受け入れ──」
全然受け入れられませんけど!?
形だけの結婚を了承しつつも、心で号泣してる姫。
武骨で不器用な王国騎士団長。
二人を中心に巻き起こった、割と短い期間のお話。
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
【書籍化決定】愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから
毛蟹
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。
ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。
彼女は別れろ。と、一方的に迫り。
最後には暴言を吐いた。
「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」
洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。
「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」
彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。
ちゃんと、別れ話をしようと。
ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
商人であった父が、お金で貴族の身分を手に入れた。私というコマを、貴族と結婚させることによって。
でもそれは酷い結婚生活の始まりでしかなかった。悪態をつく姑。私を妻と扱わない夫。夫には離れに囲った愛人がおり、その愛人を溺愛していたため、私たちは白い結婚だった。
結婚して三年。私は流行り病である『バラ病』にかかってしまう。治療費は金貨たった一枚。しかし夫も父も私のためにお金を出すことはなかった。その価値すら、もう私にはないというように。分かっていたはずの現実が、雨と共に冷たく突き刺さる。すべてを悲観した私は橋から身を投げたが、気づくと結婚する前に戻っていた。
健康な体。そして同じ病で死んでしまった仲間もいる。一度死んだ私は、すべてを彼らから取り戻すために動き出すことを決めた。もう二度と、私の人生を他の人間になど奪われないために。
父の元を離れ計画を実行するために再び仮初の結婚を行うと、なぜか彼の愛人に接近されたり、前の人生で関わってこなかった人たちが私の周りに集まり出す。
白い結婚も毒でしかない父も、全て切り捨てた先にあるものは――
私のことは愛さなくても結構です
毛蟹
恋愛
サブリナは、聖騎士ジークムントからの婚約の打診の手紙をもらって有頂天になった。
一緒になって喜ぶ父親の姿を見た瞬間に前世の記憶が蘇った。
彼女は、自分が本の世界の中に生まれ変わったことに気がついた。
サブリナは、ジークムントと愛のない結婚をした後に、彼の愛する聖女アルネを嫉妬心の末に殺害しようとする。
いわゆる悪女だった。
サブリナは、ジークムントに首を切り落とされて、彼女の家族は全員死刑となった。
全ての記憶を思い出した後、サブリナは熱を出して寝込んでしまった。
そして、サブリナの妹クラリスが代打としてジークムントの婚約者になってしまう。
主役は、いわゆる悪役の妹です
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる