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最終話. 新しい一歩を
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抜けるような青空が一面に広がる、穏やかな午後。
私とアルバート様の結婚式が、王宮に隣接する大聖堂で執り行われることとなった。
国内の高位貴族たちはもちろん、近隣の友好国からも多くの重鎮たちが駆けつけ、荘厳な大聖堂はとても華やかな空気で満ちていた。
私にとって、これは二度目の結婚式となるわけだけど……。
(正直、一度目のあの時とは規模も豪華さも段違いだわ……)
控え室の姿見の前に立ち、アルバート様から贈られた純白の美しいウェディングドレスを身にまとった自分の姿を、まるで夢でも見ているような気持ちで見つめながら私はぼんやりと考えた。
一度目の不幸な結婚。その結婚式の日は、王都の聖堂でこうして身支度を整えて、ラウル様が迎えに来てくれるのを待っていたっけ。けれど、約束していたはずなのにあの人は来なくて。自分で聖堂前に歩いていったら、態度の豹変した氷のように冷たいラウル様がいた。
あの時から、ずっと苦しかったな。ラウル様が冷たくなった理由も分からず、私はどうにか彼との溝を埋めようと一人で必死になっていたのに、ラウル様は……。
ふと苦い過去を思い出し、少し暗い気持ちになってしまった、その時だった。
侍女が明るい表情で私に声をかけてきた。
「ティファナお嬢様、王太子殿下がいらっしゃいましたよ」
「っ! ……ありがとう。お通しして」
控え室の扉が開き、アルバート様が姿を現す。私は思わず息を呑んだ。
(なんて……素敵なんだろう……)
真っ白な婚礼衣装に身を包んだアルバート様は、神々しささえ感じるほどの輝きとオーラをまとっていて、まるで美しい絵画の中から一人抜け出てきたかのようだった。この場にいる侍女や使用人たちも、皆アルバート様に見惚れてしまっている。
そして、当のアルバート様も……私のことを見つめたまま、ピタリと動きを止め、固まった。
(? アルバート様……?)
瞬きさえせずに私のことをジッと見つめ続けるアルバート様の様子が気になり、私はおずおずと口を開いた。
「い、いかがなさいましたか……? 変でしょうか、その、私の姿が……」
するとアルバート様はハッとしたように肩を揺らし、軽く咳払いをした。そして片手で口元を覆うと、少し掠れた声で答えた。
「……まさか。信じられないほどの美しさで、頭が真っ白になってしまった。……ごめん。綺麗だよ、ティファナ」
「ほ、本当ですか? ありがとうございます、アルバート様……。嬉しいです。アルバート様こそ……、す、すごく素敵です……」
「ありがとう。……ああ、本当に、今の君はまるで女神みたいだ」
少し耳朶を赤く染めたアルバート様がそう呟いて、私のそばに歩み寄ってくる。そして熱のこもった眼差しで私を見つめながら、私の頬にそっと触れた。
「ようやく、この日を迎えられた。こんなに愛おしい君が、俺の妻になってくれるなんて……。ティファナ、俺の気持ちに応えてくれた君を後悔させるようなことは、決してしない。安心して、ついておいで」
「アルバート様……。はい、もちろんです。ずっとおそばにいます。これから先、ずっと」
幸せを噛みしめながら見つめあっていると、侍女がそっと声をかけてくる。
「そろそろお時間でございます。ご移動の方を……」
「ああ。……行こうか、ティファナ」
「はい……っ!」
私の頭のベールをふわりと優しく下ろしてくれた後、アルバート様が腕を差し出す。私はそこにそっと手を添え、二人並んで控え室を出て歩き出した。
厳かで美しい大聖堂の中に揃って足を踏み入れると、中央の通路を挟んだ両側には、見渡す限りの列席者たちがいた。彼らは一斉に私たちに注目する。
たくさんの視線を受け止めながら、祭壇までの長い長い通路を、少し緊張しながら一歩ずつゆっくりと進んでいく。時折隣のアルバート様をそっと見上げると、アルバート様もすぐに私の方を見下ろして、安心させるように優しく微笑んでくれた。
祭壇のそばまで歩いてくると、列席者の中にカトリーナの姿を見つけた。キラキラとした眼差しで私を見つめている彼女は、私と目が合うと満面の笑みを見せてくれた。その顔を見るだけで彼女へのたくさんの想いがこみ上げてきて、気持ちに応えるように微笑み返しながら、私の視界は涙で少し滲んだ。
(……あ。隣の方って……)
そんなカトリーナを見守るように隣に座り、こちらに穏やかな視線を送ってくださっている素敵な紳士がギルモア辺境伯であることに、私はすぐに気付いた。少し目を伏せそっと挨拶をすると、ギルモア辺境伯も同じように目で挨拶をくださった。落ち着いていて堂々としたその振る舞いを見るだけで、ギルモア辺境伯が頼もしい人物であることが窺えた。
(カトリーナも、きっと幸せになれるわね。本当によかった。あんなに素敵な方と、しかも彼女がひそかに想いを寄せていた人と一緒になれて)
私もカトリーナも、それぞれの幸せを掴んだのだ。
これからは互いにそれぞれの場所で、大切な人と共に自分の人生を歩んでいく。
親しい友人たちや父、そして王家の方々も、私たちのことを温かな目で見守ってくれている。きっと天国の母も今、私たち二人を祝福してくれていることだろう。
祭壇の前に着いた私たちは、これから先互いを敬い、愛し、手を取り合って長い人生を歩んでいくという誓いを立てる。
愛の証である指輪を互いの指にそっとはめると、アルバート様がとても丁寧な仕草で、私の顔の前にあるベールをゆっくりと上げてくれた。
「……愛しているよ、ティファナ。君だけを見つめていく」
「……私もです、アルバート様。あなたを愛しています。これから先も、ずっと……」
ドキドキしながら私はこの場で、初めて愛の言葉を囁いた。すると、アルバート様のアクアマリンの瞳が大きく見開かれ、そよ風の吹いた水面のようにきらめいて揺れた。
彼はたまらなく幸せそうに微笑み、私の頬にそっと触れると、ゆっくりと唇を近づける。
私は静かに目を閉じ、その優しい唇を受け止めた。
割れんばかりの拍手が大聖堂を包み込む。
私たちは今この瞬間、新しい一歩を踏み出した──────
ーーーーー end ーーーーー
最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました(*^^*)♡
私とアルバート様の結婚式が、王宮に隣接する大聖堂で執り行われることとなった。
国内の高位貴族たちはもちろん、近隣の友好国からも多くの重鎮たちが駆けつけ、荘厳な大聖堂はとても華やかな空気で満ちていた。
私にとって、これは二度目の結婚式となるわけだけど……。
(正直、一度目のあの時とは規模も豪華さも段違いだわ……)
控え室の姿見の前に立ち、アルバート様から贈られた純白の美しいウェディングドレスを身にまとった自分の姿を、まるで夢でも見ているような気持ちで見つめながら私はぼんやりと考えた。
一度目の不幸な結婚。その結婚式の日は、王都の聖堂でこうして身支度を整えて、ラウル様が迎えに来てくれるのを待っていたっけ。けれど、約束していたはずなのにあの人は来なくて。自分で聖堂前に歩いていったら、態度の豹変した氷のように冷たいラウル様がいた。
あの時から、ずっと苦しかったな。ラウル様が冷たくなった理由も分からず、私はどうにか彼との溝を埋めようと一人で必死になっていたのに、ラウル様は……。
ふと苦い過去を思い出し、少し暗い気持ちになってしまった、その時だった。
侍女が明るい表情で私に声をかけてきた。
「ティファナお嬢様、王太子殿下がいらっしゃいましたよ」
「っ! ……ありがとう。お通しして」
控え室の扉が開き、アルバート様が姿を現す。私は思わず息を呑んだ。
(なんて……素敵なんだろう……)
真っ白な婚礼衣装に身を包んだアルバート様は、神々しささえ感じるほどの輝きとオーラをまとっていて、まるで美しい絵画の中から一人抜け出てきたかのようだった。この場にいる侍女や使用人たちも、皆アルバート様に見惚れてしまっている。
そして、当のアルバート様も……私のことを見つめたまま、ピタリと動きを止め、固まった。
(? アルバート様……?)
瞬きさえせずに私のことをジッと見つめ続けるアルバート様の様子が気になり、私はおずおずと口を開いた。
「い、いかがなさいましたか……? 変でしょうか、その、私の姿が……」
するとアルバート様はハッとしたように肩を揺らし、軽く咳払いをした。そして片手で口元を覆うと、少し掠れた声で答えた。
「……まさか。信じられないほどの美しさで、頭が真っ白になってしまった。……ごめん。綺麗だよ、ティファナ」
「ほ、本当ですか? ありがとうございます、アルバート様……。嬉しいです。アルバート様こそ……、す、すごく素敵です……」
「ありがとう。……ああ、本当に、今の君はまるで女神みたいだ」
少し耳朶を赤く染めたアルバート様がそう呟いて、私のそばに歩み寄ってくる。そして熱のこもった眼差しで私を見つめながら、私の頬にそっと触れた。
「ようやく、この日を迎えられた。こんなに愛おしい君が、俺の妻になってくれるなんて……。ティファナ、俺の気持ちに応えてくれた君を後悔させるようなことは、決してしない。安心して、ついておいで」
「アルバート様……。はい、もちろんです。ずっとおそばにいます。これから先、ずっと」
幸せを噛みしめながら見つめあっていると、侍女がそっと声をかけてくる。
「そろそろお時間でございます。ご移動の方を……」
「ああ。……行こうか、ティファナ」
「はい……っ!」
私の頭のベールをふわりと優しく下ろしてくれた後、アルバート様が腕を差し出す。私はそこにそっと手を添え、二人並んで控え室を出て歩き出した。
厳かで美しい大聖堂の中に揃って足を踏み入れると、中央の通路を挟んだ両側には、見渡す限りの列席者たちがいた。彼らは一斉に私たちに注目する。
たくさんの視線を受け止めながら、祭壇までの長い長い通路を、少し緊張しながら一歩ずつゆっくりと進んでいく。時折隣のアルバート様をそっと見上げると、アルバート様もすぐに私の方を見下ろして、安心させるように優しく微笑んでくれた。
祭壇のそばまで歩いてくると、列席者の中にカトリーナの姿を見つけた。キラキラとした眼差しで私を見つめている彼女は、私と目が合うと満面の笑みを見せてくれた。その顔を見るだけで彼女へのたくさんの想いがこみ上げてきて、気持ちに応えるように微笑み返しながら、私の視界は涙で少し滲んだ。
(……あ。隣の方って……)
そんなカトリーナを見守るように隣に座り、こちらに穏やかな視線を送ってくださっている素敵な紳士がギルモア辺境伯であることに、私はすぐに気付いた。少し目を伏せそっと挨拶をすると、ギルモア辺境伯も同じように目で挨拶をくださった。落ち着いていて堂々としたその振る舞いを見るだけで、ギルモア辺境伯が頼もしい人物であることが窺えた。
(カトリーナも、きっと幸せになれるわね。本当によかった。あんなに素敵な方と、しかも彼女がひそかに想いを寄せていた人と一緒になれて)
私もカトリーナも、それぞれの幸せを掴んだのだ。
これからは互いにそれぞれの場所で、大切な人と共に自分の人生を歩んでいく。
親しい友人たちや父、そして王家の方々も、私たちのことを温かな目で見守ってくれている。きっと天国の母も今、私たち二人を祝福してくれていることだろう。
祭壇の前に着いた私たちは、これから先互いを敬い、愛し、手を取り合って長い人生を歩んでいくという誓いを立てる。
愛の証である指輪を互いの指にそっとはめると、アルバート様がとても丁寧な仕草で、私の顔の前にあるベールをゆっくりと上げてくれた。
「……愛しているよ、ティファナ。君だけを見つめていく」
「……私もです、アルバート様。あなたを愛しています。これから先も、ずっと……」
ドキドキしながら私はこの場で、初めて愛の言葉を囁いた。すると、アルバート様のアクアマリンの瞳が大きく見開かれ、そよ風の吹いた水面のようにきらめいて揺れた。
彼はたまらなく幸せそうに微笑み、私の頬にそっと触れると、ゆっくりと唇を近づける。
私は静かに目を閉じ、その優しい唇を受け止めた。
割れんばかりの拍手が大聖堂を包み込む。
私たちは今この瞬間、新しい一歩を踏み出した──────
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最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました(*^^*)♡
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