【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました

鳴宮野々花@書籍4作品発売中

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28.焦燥(※sideダミアン)

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「…………君は一体何を言っているんだ……?」
「はぁ、はぁ…………、……は?」

 しばらくの沈黙の後、グレアム侯爵令息は静かに口を開いた。

「我々は学園で共に学んだ良き友人同士だ。時折こうして出かけては食事を楽しんだり観劇をしたりしているだけじゃないか。何をそんなに目くじら立てる必要がある?そもそも君が彼女に提案したんだろう?互いに自由な結婚生活を送ろうと。彼女にも、自分にばかり構わずもっと一人の時間を楽しめと言ったのだろう?」
「そっ!……いや、まあ、…それは、…………っ、」
「それならば構わないじゃないか。旧友と食事をするくらい。何の問題があるんだい?クラウディア嬢は君のように異性と不埒なことをしているわけではないんだよ。立派な淑女だからね」
「……っ?!そっ!そん……、そん……っ」
「それに引き替え君は恥ずかしげもなく愛人たちを次々屋敷に招き入れたり挙げ句の果てには部屋に泊まらせたりしているんだろう?ふ……、非常識だの不謹慎だの…、君にだけは言われたくないな」
「~~~~~~~~っ!!」
「安心してくれたまえ。我々はただの良き友人だ。…そうだろう?クラウディア嬢」
「ええ、アーネスト様」

 うっ…………嘘をつけ!何だその目は!そんな愛情に満ちた目で俺の妻を見つめておいて……!何が良き友人だ!!ふざけるな!!

 ……おい!!だからいつまで見つめあっているんだお前らは!!

「では、そういうことだから彼女と出かけてきても構わないかな?芝居が始まる時間に間に合わなくなるのでね」
「お、おいっ……!ち、ちょっと、待っ…」
「それとも不安かな?愛しい妻を他の男に盗られるようで。互いに自由に、などと言っても、実際に奥方が他の男と自由な時間を楽しんでいると寂しくなってしまったかな?はは、君にも可愛らしいところがあるじゃないか」
「っ!!く…………っ!!」

 こっ……こいつ…………!!
 俺を馬鹿にしやがって…………!!冗談じゃない!!この夫婦関係で優位に立っているのは常に俺の方なんだ!!

「……は、そんなはずがないではありませんか、グレアム侯爵令息。どうぞ好きになさったらいい。ちょうど俺も今から出掛けるところなんでね、気にもなりませんよ。万が一あなたが不貞行為でもしているようならグレアム侯爵家の評判に関わるのではと多少心配したまでですから」
「ああ、そうか。それはありがとう。大丈夫だ。誓って妙な真似はしない。私の方こそ、彼女の評判を汚すわけにはいかないからね。大切にしなくては」
「……っ、」

 だから!!何でそこでいちいち頬を赤らめるんだクラウディア!!

「では行こう、クラウディア嬢」
「はい、アーネスト様。では、いってまいりますわ」
「…あ、ああ。楽しんでくるといいさ」

 口角をヒクヒクと痙攣させながらも、俺は至って余裕があるように取り繕った。

 しかし。

「…………。ふ」
「っ?!!」

 クラウディアの背に手を当ててエスコートしながら、グレアムはチラリと俺を振り返り、一瞬不敵な笑みを見せたのだった。

「~~~~~~~~~っ!!!」

 こっ…………こいつ…………!!

 この野郎…………!!ふざけやがって…………!!

 
 苛立ちが限界を超えて胃酸が口から噴き出しそうだ。怒りで全身が滾るように脈打っている。俺は一目散に自室に戻ると、クラウディアがいつの間にか持ってきて机の上に置いていた書類を怒り任せに部屋中にぶちまけた。

「くそぉぉぉぉぉっ!!ふざけやがってグレアムーーッ!!」

 片っ端から書類を投げつけ、踏みつけ、俺はグレアム侯爵令息への苛立ちを発散した。しかし気持ちは少しも治まらない。クラウディアのヤツ……!まさか……、まさか本当に、あいつに心変わりしたわけじゃあるまいな?!この俺というものがありながら……!そんなことが許されると思っているのか……!

「はぁ、はぁ、はぁ…………っ」

 完璧にセットしてあった髪を振り乱して、俺は考えた。

 どうにかしなければ……!

 このままでは、クラウディアをあの男に盗られる……!




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