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27.苛立ち(※sideダミアン)
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確かに俺は「互いに自由に生きよう」とは言った。だが、まさかあいつが本当に自由に遊び回ったりするはずがないと高をくくっていたのだ。あいつは俺にぞっこんなんだ。はいそうですかと他の男と遊びに行ったりは絶対にしない。俺にベタ惚れのあいつにそんなことできるはずがないと思っていた。
そう信じて疑ってもいなかったのに。
クラウディアは、明らかに変わってしまった。俺が屋敷にいる日を増やしても、全く俺に近寄ってくる素振りもない。それどころか、最近では向こうの方が俺より先にどこかへ出かけていく。
そんな時にやけに綺麗にめかし込んでいるのも気に入らなかった。侍女たちが出入りしている時に一度チラリと部屋を覗いたら、あいつは鏡の前でアクセサリーを真剣に選んで胸元に当ててみたり、美しい金髪を何度も手で整えたりしていて、部屋の入り口にいる俺の存在に全く気付きもしなかった。
(……何なんだ一体……!!)
声をかけようかと思ったが、こちらが気にしていると思われるのも癪だった。ムカムカしながらも俺は自室に引き上げたのだった。
(ふん。不貞腐れているだけだろう。俺に関心がなくなったフリをするなど……わざとらしくて可愛げの欠片もないな。女は素直で従順なのが一番なんだ。こんなやり方で俺の気を引けるとでも思っているなら浅はかなヤツだ。どうせそのうち俺に構ってもらえない寂しさに耐えきれなくなり向こうから折れてくるだろう。またせっせと俺の機嫌をとり始めたら仕返しに冷たくあしらってやるまでだ)
苛立ちながら俺は部屋のソファーに座りそんなことを考えていた。
しかしその翌週、俺は頭を重厚な鈍器で殴られたような衝撃を受ける羽目になった。
昼食をとるために俺は部屋を出て階段を降りた。最近はクラウディアと食事をすることがほとんどなくなってしまっていた。少し前までは俺さえ食堂に行けば必ずクラウディアがいそいそとやって来て「ご、ご一緒してもよろしいですか?」などと言ってきたものだ。その時にクラウディアが必死になって俺に話題を振りどうにか気を引こうとする様子が愉快でならなかったのだ。だが最近は俺に時間を合わせて食事をすることさえなくなり、ごくたまに顔を合わせても黙々と食べているばかりで俺に話しかけてもこない。かと言って怒っている風でもなく、何やらぼんやりと考え事をしているように見える。
……気持ちが悪い。一体何なんだ、本当に。
そんなことを考えながら1階に降りた時、
「…………っ?!」
俺の足は玄関ホールの手前で固まった。
「やあ、クラウディア嬢。今日もとても綺麗だ」
「ま、まぁ……。ごきげんよう、アーネスト様。いつもお迎えに来てくださって、ありがとうございます…」
…………な………………、
…………な……………………な、何なんだ!!何故こいつがここにいる?!
玄関の扉の前で俺の妻と見つめあっているのは、アーネスト・グレアム侯爵令息だった。
俺は激しく混乱した。え?ど、どういうことだ?何故クラウディアはあんなにも頬を染めて可愛らしい顔をしてあの男を見つめているんだ?…おい、ここにいるぞ。お前の愛おしい夫が!ここに!!何故気付かない!!
俺のことなど一切見向きもしないあいつらは完全に二人きりの世界に入り込んでいる。いつまで見つめあっているつもりだ。時間が止まったのか?!おい、お前ら視界が狭まっているのか?!俺の姿が見えないのか!!
「じゃあ、行こうか。最高の席を準備してあるよ」
「まぁっ、嬉しいですわ…。すごく楽しみだったんです、私」
「君の期待は裏切らないよ」
ついにそのまま屋敷を出て行こうとする二人に、俺は慌てて声をかけた。
「お、おい!!何をしているんだお前ら!!」
「……?」
「…おや、ウィルコックス伯爵令息じゃないか。やあ。今日は屋敷にいたんだな」
俺の呼びかけに二人仲良く振り返ると、クラウディアはキョトンとし、グレアム侯爵令息の方はごくごく自然に挨拶をしてきた。な、……何だこいつら……!
「いたんだな、じゃありませんよ!グレアム侯爵令息!一体何のつもりか!その女は俺の妻だ!!どこへ連れ出すつもりか知らんが、あまりにも不謹慎ではないか!ひっ、非常識だぞ!!人妻と二人きりで出かけようなどと!恥を知れ!!」
「……………………。」
「……………………。」
口角泡を飛ばしてまくし立てた俺を、二人はポカーンとした顔で見ている。俺は怒りと興奮のあまりゼーゼーと肩で大きく息をしていた。
そう信じて疑ってもいなかったのに。
クラウディアは、明らかに変わってしまった。俺が屋敷にいる日を増やしても、全く俺に近寄ってくる素振りもない。それどころか、最近では向こうの方が俺より先にどこかへ出かけていく。
そんな時にやけに綺麗にめかし込んでいるのも気に入らなかった。侍女たちが出入りしている時に一度チラリと部屋を覗いたら、あいつは鏡の前でアクセサリーを真剣に選んで胸元に当ててみたり、美しい金髪を何度も手で整えたりしていて、部屋の入り口にいる俺の存在に全く気付きもしなかった。
(……何なんだ一体……!!)
声をかけようかと思ったが、こちらが気にしていると思われるのも癪だった。ムカムカしながらも俺は自室に引き上げたのだった。
(ふん。不貞腐れているだけだろう。俺に関心がなくなったフリをするなど……わざとらしくて可愛げの欠片もないな。女は素直で従順なのが一番なんだ。こんなやり方で俺の気を引けるとでも思っているなら浅はかなヤツだ。どうせそのうち俺に構ってもらえない寂しさに耐えきれなくなり向こうから折れてくるだろう。またせっせと俺の機嫌をとり始めたら仕返しに冷たくあしらってやるまでだ)
苛立ちながら俺は部屋のソファーに座りそんなことを考えていた。
しかしその翌週、俺は頭を重厚な鈍器で殴られたような衝撃を受ける羽目になった。
昼食をとるために俺は部屋を出て階段を降りた。最近はクラウディアと食事をすることがほとんどなくなってしまっていた。少し前までは俺さえ食堂に行けば必ずクラウディアがいそいそとやって来て「ご、ご一緒してもよろしいですか?」などと言ってきたものだ。その時にクラウディアが必死になって俺に話題を振りどうにか気を引こうとする様子が愉快でならなかったのだ。だが最近は俺に時間を合わせて食事をすることさえなくなり、ごくたまに顔を合わせても黙々と食べているばかりで俺に話しかけてもこない。かと言って怒っている風でもなく、何やらぼんやりと考え事をしているように見える。
……気持ちが悪い。一体何なんだ、本当に。
そんなことを考えながら1階に降りた時、
「…………っ?!」
俺の足は玄関ホールの手前で固まった。
「やあ、クラウディア嬢。今日もとても綺麗だ」
「ま、まぁ……。ごきげんよう、アーネスト様。いつもお迎えに来てくださって、ありがとうございます…」
…………な………………、
…………な……………………な、何なんだ!!何故こいつがここにいる?!
玄関の扉の前で俺の妻と見つめあっているのは、アーネスト・グレアム侯爵令息だった。
俺は激しく混乱した。え?ど、どういうことだ?何故クラウディアはあんなにも頬を染めて可愛らしい顔をしてあの男を見つめているんだ?…おい、ここにいるぞ。お前の愛おしい夫が!ここに!!何故気付かない!!
俺のことなど一切見向きもしないあいつらは完全に二人きりの世界に入り込んでいる。いつまで見つめあっているつもりだ。時間が止まったのか?!おい、お前ら視界が狭まっているのか?!俺の姿が見えないのか!!
「じゃあ、行こうか。最高の席を準備してあるよ」
「まぁっ、嬉しいですわ…。すごく楽しみだったんです、私」
「君の期待は裏切らないよ」
ついにそのまま屋敷を出て行こうとする二人に、俺は慌てて声をかけた。
「お、おい!!何をしているんだお前ら!!」
「……?」
「…おや、ウィルコックス伯爵令息じゃないか。やあ。今日は屋敷にいたんだな」
俺の呼びかけに二人仲良く振り返ると、クラウディアはキョトンとし、グレアム侯爵令息の方はごくごく自然に挨拶をしてきた。な、……何だこいつら……!
「いたんだな、じゃありませんよ!グレアム侯爵令息!一体何のつもりか!その女は俺の妻だ!!どこへ連れ出すつもりか知らんが、あまりにも不謹慎ではないか!ひっ、非常識だぞ!!人妻と二人きりで出かけようなどと!恥を知れ!!」
「……………………。」
「……………………。」
口角泡を飛ばしてまくし立てた俺を、二人はポカーンとした顔で見ている。俺は怒りと興奮のあまりゼーゼーと肩で大きく息をしていた。
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