【完結済】結婚式の翌日、私はこの結婚が白い結婚であることを知りました。

鳴宮野々花@書籍4作品発売中

文字の大きさ
3 / 27

3.

しおりを挟む
「まさか留守だなんてねぇ…」

 平日のこの時間はポーラはだいたい屋敷にいるのだ。私たちはよくこうして互いの屋敷を行き来する仲だから、いつ頃なら確実に在宅しているかが分かっている。
 だけど今日は珍しく外してしまった。

「ポーラお嬢様はお買い物がおありになるとかで、街へ行かれました。せっかくご足労いただきましたのに…」
「いいえ、いいのよそんな。気にしないで。どうせまたすぐに会えるもの。ありがとう」

 よく見知ったリヴィングストン子爵家のメイドに挨拶して私は馬車に乗り込んだ。

(結婚の翌日から、いきなり暇になってしまったわ…)

 どうしよう。このまま屋敷に戻っても、どうせミッチェルはいないし退屈な時間を過ごすだけ。

(…私も街に出てみようかしら)

 そう思い立って、私はウインドウショッピングがてら街を散策してみることにした。





 久しぶりに一人でゆっくりと街を歩き回る。何かミッチェルに結婚の記念になるような素敵な贈り物でもしようかしら。そんなことを考えながらブラブラ歩いていると知り合いに出会った。

「おや、こんなところで奇遇だね、アミカ嬢」
「あら、マキシミリアーノ様!」

 マキシミリアーノ・バーンズ侯爵令息は貴族学園に通っていた頃からの親しい友人だ。博識でとても素敵な方で皆から好かれていた。

「聞いたよ。ついにミッチェル殿と結婚したそうだね。おめでとう」
「ありがとうございます、マキシミリアーノ様」
「新婚さんなのに、今日は一人で買い物かい?」
「ふふ、ええ。ミッチェルはお父様のところへ用があって出かけておりますの。友達と会おうかと思ったのですが、そちらも留守で」
「そうか。……ねぇ、ここで会ったのも何かの縁ってことで、私から君たちに結婚のお祝いをさせてくれないかな?」
「え……、そ、そんな…」
「はは。そんな高価なものではないから心配しないで。何か君が好きなものを選んでよ」

 突然のご厚意に申し訳ない気持ちになりながらも、そのマキシミリアーノ様の優しさに甘えることになった。私たちは並んで歩きながら流行りの素敵な雑貨屋さんを目指す。

 学園時代の話や互いの近況についてたくさん喋っていると楽しくて、私は夢中になっていた。

「?…ねぇ、あれ、ミッチェル殿じゃないかな」

 ふとマキシミリアーノ様が、通りすがりの宝石店の中を見て行った。私がつられて窓ガラス越しにその店の中を見ると、そこには確かにミッチェルがいた。

「あらっ?本当だわ!……え?……ポーラ……?」

 遅れて気付いたが、ミッチェルの隣にいるのは私の友人のポーラだった。……何やら二人で言い合いをしているようにも見える。

「……不穏な空気だね」
「そっ……そうですわよね、やっぱり」

 マキシミリアーノ様にも同じように見えているらしい。……お父様のところへ行ったはずのミッチェルが、どうしてこんなところにいるのかしら……?私は不思議に思った。彼の実家であるベルナップ伯爵家はここからだとかなり距離がある。

「…私、声をかけてみますわ」
「そう?じゃあ…、私もついて行こうかな。せっかくだから彼にも結婚のお祝いを言いたいし」

 私たちは少し逡巡した後、おそるおそるその宝石店の中へ入っていった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

その結婚は、白紙にしましょう

香月まと
恋愛
リュミエール王国が姫、ミレナシア。 彼女はずっとずっと、王国騎士団の若き団長、カインのことを想っていた。 念願叶って結婚の話が決定した、その夕方のこと。 浮かれる姫を前にして、カインの口から出た言葉は「白い結婚にとさせて頂きたい」 身分とか立場とか何とか話しているが、姫は急速にその声が遠くなっていくのを感じる。 けれど、他でもない憧れの人からの嘆願だ。姫はにっこりと笑った。 「分かりました。その提案を、受け入れ──」 全然受け入れられませんけど!? 形だけの結婚を了承しつつも、心で号泣してる姫。 武骨で不器用な王国騎士団長。 二人を中心に巻き起こった、割と短い期間のお話。

貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。 彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。 天使のような無邪気な笑みで愛を語り。 彼は私の心を踏みにじる。 私は貴方の都合の良い子にはなれません。 私は貴方に相応しい女にはなれません。

『婚約破棄された公爵令嬢は、王と交わらない道を選ぶ』

ふわふわ
恋愛
婚約者である王太子アルベルトから、一方的に婚約破棄を告げられた公爵令嬢エレノア。 だが彼女は、涙も復讐も選ばなかった。 「婚約は、役目でしたもの。終わったのなら、それで結構ですわ」 王宮を去ったエレノアは、領地に戻り、 干渉しない・依存しない・無理をしない ただそれだけを軸に、静かに領地運営を始める。 一方、王となったアルベルトもまた、 彼女に頼らないことを選び、 「一人の判断に依存しない国」を作るための統治に身を投じていた。 復縁もしない。 恋にすがらない。 それでも、二人の選択は確かに国を安定へと導いていく。 これは、 交わらないことを選んだ二人が、 それぞれの場所で“続けられる世界”を完成させる物語。 派手なざまぁも、甘い溺愛もない。 けれど、静かに積み重なる判断と選択が、 やがて「誰にも壊せない秩序」へと変わっていく――。 婚約破棄から始まる、 大人のための静かなざまぁ恋愛ファンタジー

虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました

天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。 妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。 その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。 家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。 ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。 耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。

最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜

腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。 「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。 エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。

〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…

藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。 契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。 そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。 設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全9話で完結になります。

初恋を諦めたあなたが、幸せでありますように

ぽんちゃん
恋愛
『あなたのヒーローをお返しします。末永くお幸せに』  運命の日。  ルキナは婚約者候補のロミオに、早く帰ってきてほしいとお願いしていた。 (私がどんなに足掻いても、この先の未来はわかってる。でも……)  今頃、ロミオは思い出の小屋で、初恋の人と偶然の再会を果たしているだろう。  ロミオが夕刻までに帰ってくれば、サプライズでルキナとの婚約発表をする。  もし帰ってこなければ、ある程度のお金と文を渡し、お別れするつもりだ。  そしてルキナは、両親が決めた相手と婚姻することになる。  ただ、ルキナとロミオは、友人以上、恋人未満のような関係。  ルキナは、ロミオの言葉を信じて帰りを待っていた。  でも、帰ってきたのは護衛のみ。  その後に知らされたのは、ロミオは初恋の相手であるブリトニーと、一夜を共にしたという報告だった――。 《登場人物》  ☆ルキナ(16) 公爵令嬢。  ☆ジークレイン(24) ルキナの兄。  ☆ロミオ(18) 男爵子息、公爵家で保護中。  ★ブリトニー(18) パン屋の娘。

妹の方が良かった?ええどうぞ、熨斗付けて差し上げます。お幸せに!!

古森真朝
恋愛
結婚式が終わって早々、新郎ゲオルクから『お前なんぞいるだけで迷惑だ』と言い放たれたアイリ。 相手に言い放たれるまでもなく、こんなところに一秒たりとも居たくない。男に二言はありませんね? さあ、責任取ってもらいましょうか。

処理中です...