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EPISODE4 告白
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神谷が転校してきて数ヶ月経った肌寒いある日。
優太は突然、記憶の片隅にすら置いていなかった、あの話を持ち出してきた。
「凪、屋上に神谷を呼び出しておいたから」
「は? なんだよ、突然」
「は? じゃねぇよ。この前の罰ゲーム、もう忘れたのか? 神谷に告白するっていう、あれだよ」
「あー、あれね……」
俺は顔を引き攣らせる。そんな罰ゲームあったっけ……。もうすっかり忘れていた。
「今、屋上に、神谷がいるから告白してこい!」
「ちょ、ちょっと待てよ」
「大丈夫。『凪からどうしても伝えたいことがある』って言って呼び出したから。きっと今頃お前を待ってるはずだ」
「で、でも……」
「男に二言はない! ほら、行ってこい!」
あの日ゲームに参加していた友人たちに背中を押される。「行ってらっしゃい!」と嬉しそうな顔をした奴らが、ヒラヒラと手を振りながら自分を見送っていた。
「なんで俺が神谷に……」
重たい足取りで屋上に向かう。貴重な昼休みをこんなくだらないことに割くなん
て……。温かい陽だまりで昼寝をしていたほうが、よっぽど有効な時間を過ごすことができただろうに。
「はぁ……」
憂鬱で思わず大きく息を吐き出す。屋上までの道のりって、こんなに長かったっけ? そう感じられるくらい、体が重たく感じる。
もしかしたら、俺に呼び出されたことを不審に思った神谷が、とっと教室に戻ってしまったかもしれない。きっとそうだ。大嫌いな奴に呼び出されて、大人しく待っている人間なんて、この世にはいないはずだ。
少しだけ心が軽くなった俺は、勢いよく屋上へ続く扉を開け放つ。「残念でした。あいつもういなかったぜ?」…そんな言い訳を考えながら。悔しそうな声を上げる友人達たちの姿が目に浮かぶようだ。
だから、さっさと教室に戻ろう……。
「……って、なんで?」
「え?」
「なんで、神谷ここにいるんだ?」
「なんでって、君がここに呼び出したんだろう?」
「あ、うん。そうだった」
気まずい沈黙が屋上に流れる。空はこんなにも晴れ渡っているのに……俺は泣きたい気持ちになった。一体、この後どうしたらいいんだろうか。
忙しい中呼び出された神谷は不機嫌そうに腕組みをしながら、俺を見つめている。
あぁ、もうどうしよう。急に呼び出してしまったことを謝罪して、解散……。これが一番無難だろうか。頭の中で試行錯誤を繰り返していると。
「なんか俺に用があるの?」
「え!?」
いい案が見つからないうちに本題を切り出された俺は、飛び跳ねるくらいびっくりしてしまう。なんて言ったらいいのか、言葉が見つからない。
「あのさ……」
「急に話ってなんだよ? マジで気持ち悪いんだけど」
「だからさ、あー! もう!」
いたたまれなくなって頭を掻き毟る。先程から、制服のポケットに押し込まれているスマホが震えっぱなし……ということは、あいつらが「逃げ帰ってくるな」とメールを送り続けているのかもしれない。
――これは、腹をくくるしかねぇのか。
俺は大きく息を吐いて、神谷を見つめる。よく考えたら馬鹿みたいな罰ゲームに巻き込まれるこいつが、一番の被害者だ。そう思えば今更ながら心が痛い。
「あ、あのさ、突然で本当に申し訳ないんだけど……俺、実はお前のことがずっと前から好きだったんだ」
「……はぁ?」
「だから、お前のことが好きだから、俺と付き合ってほしいんだけど……」
「…………」
いくら罰ゲームだとしても、告白っていうものは勇気がいる。そもそも、俺は今まで告白なんてしたことがないのだ。そんなことしなくても、相手に困ったことなんてなかったから。
無言のまま俺を見つめる神谷の視線が痛くて、思わず拳を握しりめて俯いた。全てを見透かされることが怖かったから。
屋上を吹き抜ける冷たい風が、火照った顔を冷やしてくれて。それが気持ちいい。
もしオッケーをもらえたら凄く戸惑うけど、フラれたらフラれたらで癪に障る。どちらに転んでも、楽しい未来など待っていてはくれないのだ。
「ふーん、何それ。罰ゲームかなにか?」
「え?」
「何かゲームに負けたら罰として俺に告るとか? もしそういうんだとしたら、本当にタチが悪いんだけど」
「違う、そんなんじゃ、ない……」
いきなり確信を突かれた俺は、言葉を失ってしまう。事実を知られてしまったら、それこそ全てが終わってしまうだろう。だから、もう嘘を突き通すしかない……俺はそう心に誓う。
心臓がバクバクと拍動を打ち、口から飛び出してしまいそうだ。
「そんなんじゃない。俺は神谷が好きだ。突然同性から告られるなんて気持ち悪ぃかもしれないけど……もし神谷が大丈夫なら俺と……」
「別にいいよ」
「は?」
「だから別にいいって言ってんだよ」
「え? は? 嘘……」
「自分から告ってきたくせに、何だよそれ……」
今の俺はきっと茹で蛸みたいに真っ赤な顔をしているだろう。それが可笑しいのか、神谷がくくっと笑っている。
「罰ゲームかどうかまだ半信半疑だけど、君がそうくるなら受けてたつよ。だから……」
「だから?」
突然神谷が顔を寄せてきたから、俺は息を呑む。こいつ、近くで見てもこんなにイケメンなんだ。
「付き合うって決めたんだから、真剣にお付き合いしようぜ?」
「し、真剣に?」
「そう。これから俺は武内を凪って呼ぶし、凪も俺を章人って呼んでほしい」
「あき、ひと?」
「そう。凪は俺の恋人だからこうやって手だって繋ぎたい」
「わ、ちょっ、ちょっと!」
突然章人が俺の手を握ってきたから、思わず体に力が入ってしまう。
「それにキスだってしたいし、それ以上のことだってしたいと思う」
「そっ、それ以上のことって、お前…男相手に抵抗ないのかよ?」
「抵抗があったら付き合ってもいいよなんて、言うわけないじゃん」
「そりゃあそうだけど。この前江野に告白されたときに、恋愛には興味がないって言ってたじゃん? 俺には興味があるのかよ?」
「まぁね。だから君は特別なんだよ」 神谷は、きっとパニックになってる俺を面白がっているに違いない。想像していたことと真逆のことが起こってしまって、それでも平静を装いたいのに……無理だ。顔が熱いし、息が苦しい。
「凪は男だけど性格以外は完璧だから大丈夫。それに凄く可愛いし」
「か、可愛い?」
「うん。これからよろしくね、凪」
俺の額にキスをして、嬉しそうに微笑む章人。
こいつはなんでこんなに余裕なんだよ……。
この瞬間、俺には章人っていう、超ハイスペックでイケメン過ぎる彼氏ができた。
「で、どうだった?」
「告白成功したか? それともフラれたか」
「なぁ、凪。教えろよ」
俺の帰りを待っていた仲間が目をキラキラさせながら俺のことを出迎えてくれる。なんて答えたらいいかわからず、思わず目を泳がせた。
オッケーもらって付き合うことになったよ、なんて報告できるはずもない。なんと答えようか悩んでいると、「凪」と後ろから名前を呼ばれる。振り返ると、満面の笑みを浮かべた章人が立っていた。
「部活が終わったら一緒に帰ろう。体育館に迎えに行くから」
「いや、で、でも……」
「じゃあ、お互い部活頑張ろうね」
「あ、うん」
ニコニコと手を振りながら道場に向かう章人に、口元を引き攣らせながら手を振る。
あー、これはまずいやつだ。背中を冷たい汗が流れた。
「えー!? 告白成功したのか!?」
「凪、イケメンな彼氏ができてよかったな!」
次の瞬間、みんなが一斉に大声を上げたから、思わず耳を塞ぎたい衝動に駆られた。
「超イケメン同士のカップル成立かぁ」
「これは面白くなってきた」
盛り上がる友人たちを見て、俺は全身の力が抜けていくのを感じた。
部活が終わり、生徒が帰宅する時間。
まさか本当に迎えにこないよな……そう考えると落ち着かなくなってしまう。
章人は小学校の頃から空手をやっていたらしく、最近になってからようやく空手部に入部した、と女子が騒いでいた。
「そろそろ彼氏が迎えに来るんじゃねぇの?」
「馬鹿が。本当に来るわけないだろう」
顔を綻ばせながら自分に近づいてくる優太に、バスケットボールを投げつければ、「いってぇ!」なんて大袈裟に悲鳴を上げている。
本当に迎えに来るはずがない、か。
さっさと帰ろうと部室に向かおうとしたところに、体育館にいた女子生徒たちが一斉にざわめき出す。まさか……恐る恐る体育館の入口に視線を向ければ、笑顔で手を振る章人がいた。
マジか、冗談だろ……。思わず言葉を失ってしまった。
「ねぇ、あれ神谷君じゃない? 超かっこいい」
「本当だ! 手を振ってるみたいだけど、誰かを迎えに来たとか?」
「もしかして彼女とか? えー、ヤダヤダ!」
そんな会話を聞きながら、俺は手を振り返すことができずに立ちすくんでいると、章人がこちらに向かってゆっくりと歩いてくる。
「迎えにきたよ、凪。一緒に帰ろう」
「あ、うん……」
その場にいた全生徒の視線が、一斉に自分たちに向けられたのを感じた。
「えー!! 神谷君、凪を迎えにきたの!?」
女子生徒の黄色い声援が、オレンジ色のライトに包まれた体育館に響き渡ったのだった。
優太は突然、記憶の片隅にすら置いていなかった、あの話を持ち出してきた。
「凪、屋上に神谷を呼び出しておいたから」
「は? なんだよ、突然」
「は? じゃねぇよ。この前の罰ゲーム、もう忘れたのか? 神谷に告白するっていう、あれだよ」
「あー、あれね……」
俺は顔を引き攣らせる。そんな罰ゲームあったっけ……。もうすっかり忘れていた。
「今、屋上に、神谷がいるから告白してこい!」
「ちょ、ちょっと待てよ」
「大丈夫。『凪からどうしても伝えたいことがある』って言って呼び出したから。きっと今頃お前を待ってるはずだ」
「で、でも……」
「男に二言はない! ほら、行ってこい!」
あの日ゲームに参加していた友人たちに背中を押される。「行ってらっしゃい!」と嬉しそうな顔をした奴らが、ヒラヒラと手を振りながら自分を見送っていた。
「なんで俺が神谷に……」
重たい足取りで屋上に向かう。貴重な昼休みをこんなくだらないことに割くなん
て……。温かい陽だまりで昼寝をしていたほうが、よっぽど有効な時間を過ごすことができただろうに。
「はぁ……」
憂鬱で思わず大きく息を吐き出す。屋上までの道のりって、こんなに長かったっけ? そう感じられるくらい、体が重たく感じる。
もしかしたら、俺に呼び出されたことを不審に思った神谷が、とっと教室に戻ってしまったかもしれない。きっとそうだ。大嫌いな奴に呼び出されて、大人しく待っている人間なんて、この世にはいないはずだ。
少しだけ心が軽くなった俺は、勢いよく屋上へ続く扉を開け放つ。「残念でした。あいつもういなかったぜ?」…そんな言い訳を考えながら。悔しそうな声を上げる友人達たちの姿が目に浮かぶようだ。
だから、さっさと教室に戻ろう……。
「……って、なんで?」
「え?」
「なんで、神谷ここにいるんだ?」
「なんでって、君がここに呼び出したんだろう?」
「あ、うん。そうだった」
気まずい沈黙が屋上に流れる。空はこんなにも晴れ渡っているのに……俺は泣きたい気持ちになった。一体、この後どうしたらいいんだろうか。
忙しい中呼び出された神谷は不機嫌そうに腕組みをしながら、俺を見つめている。
あぁ、もうどうしよう。急に呼び出してしまったことを謝罪して、解散……。これが一番無難だろうか。頭の中で試行錯誤を繰り返していると。
「なんか俺に用があるの?」
「え!?」
いい案が見つからないうちに本題を切り出された俺は、飛び跳ねるくらいびっくりしてしまう。なんて言ったらいいのか、言葉が見つからない。
「あのさ……」
「急に話ってなんだよ? マジで気持ち悪いんだけど」
「だからさ、あー! もう!」
いたたまれなくなって頭を掻き毟る。先程から、制服のポケットに押し込まれているスマホが震えっぱなし……ということは、あいつらが「逃げ帰ってくるな」とメールを送り続けているのかもしれない。
――これは、腹をくくるしかねぇのか。
俺は大きく息を吐いて、神谷を見つめる。よく考えたら馬鹿みたいな罰ゲームに巻き込まれるこいつが、一番の被害者だ。そう思えば今更ながら心が痛い。
「あ、あのさ、突然で本当に申し訳ないんだけど……俺、実はお前のことがずっと前から好きだったんだ」
「……はぁ?」
「だから、お前のことが好きだから、俺と付き合ってほしいんだけど……」
「…………」
いくら罰ゲームだとしても、告白っていうものは勇気がいる。そもそも、俺は今まで告白なんてしたことがないのだ。そんなことしなくても、相手に困ったことなんてなかったから。
無言のまま俺を見つめる神谷の視線が痛くて、思わず拳を握しりめて俯いた。全てを見透かされることが怖かったから。
屋上を吹き抜ける冷たい風が、火照った顔を冷やしてくれて。それが気持ちいい。
もしオッケーをもらえたら凄く戸惑うけど、フラれたらフラれたらで癪に障る。どちらに転んでも、楽しい未来など待っていてはくれないのだ。
「ふーん、何それ。罰ゲームかなにか?」
「え?」
「何かゲームに負けたら罰として俺に告るとか? もしそういうんだとしたら、本当にタチが悪いんだけど」
「違う、そんなんじゃ、ない……」
いきなり確信を突かれた俺は、言葉を失ってしまう。事実を知られてしまったら、それこそ全てが終わってしまうだろう。だから、もう嘘を突き通すしかない……俺はそう心に誓う。
心臓がバクバクと拍動を打ち、口から飛び出してしまいそうだ。
「そんなんじゃない。俺は神谷が好きだ。突然同性から告られるなんて気持ち悪ぃかもしれないけど……もし神谷が大丈夫なら俺と……」
「別にいいよ」
「は?」
「だから別にいいって言ってんだよ」
「え? は? 嘘……」
「自分から告ってきたくせに、何だよそれ……」
今の俺はきっと茹で蛸みたいに真っ赤な顔をしているだろう。それが可笑しいのか、神谷がくくっと笑っている。
「罰ゲームかどうかまだ半信半疑だけど、君がそうくるなら受けてたつよ。だから……」
「だから?」
突然神谷が顔を寄せてきたから、俺は息を呑む。こいつ、近くで見てもこんなにイケメンなんだ。
「付き合うって決めたんだから、真剣にお付き合いしようぜ?」
「し、真剣に?」
「そう。これから俺は武内を凪って呼ぶし、凪も俺を章人って呼んでほしい」
「あき、ひと?」
「そう。凪は俺の恋人だからこうやって手だって繋ぎたい」
「わ、ちょっ、ちょっと!」
突然章人が俺の手を握ってきたから、思わず体に力が入ってしまう。
「それにキスだってしたいし、それ以上のことだってしたいと思う」
「そっ、それ以上のことって、お前…男相手に抵抗ないのかよ?」
「抵抗があったら付き合ってもいいよなんて、言うわけないじゃん」
「そりゃあそうだけど。この前江野に告白されたときに、恋愛には興味がないって言ってたじゃん? 俺には興味があるのかよ?」
「まぁね。だから君は特別なんだよ」 神谷は、きっとパニックになってる俺を面白がっているに違いない。想像していたことと真逆のことが起こってしまって、それでも平静を装いたいのに……無理だ。顔が熱いし、息が苦しい。
「凪は男だけど性格以外は完璧だから大丈夫。それに凄く可愛いし」
「か、可愛い?」
「うん。これからよろしくね、凪」
俺の額にキスをして、嬉しそうに微笑む章人。
こいつはなんでこんなに余裕なんだよ……。
この瞬間、俺には章人っていう、超ハイスペックでイケメン過ぎる彼氏ができた。
「で、どうだった?」
「告白成功したか? それともフラれたか」
「なぁ、凪。教えろよ」
俺の帰りを待っていた仲間が目をキラキラさせながら俺のことを出迎えてくれる。なんて答えたらいいかわからず、思わず目を泳がせた。
オッケーもらって付き合うことになったよ、なんて報告できるはずもない。なんと答えようか悩んでいると、「凪」と後ろから名前を呼ばれる。振り返ると、満面の笑みを浮かべた章人が立っていた。
「部活が終わったら一緒に帰ろう。体育館に迎えに行くから」
「いや、で、でも……」
「じゃあ、お互い部活頑張ろうね」
「あ、うん」
ニコニコと手を振りながら道場に向かう章人に、口元を引き攣らせながら手を振る。
あー、これはまずいやつだ。背中を冷たい汗が流れた。
「えー!? 告白成功したのか!?」
「凪、イケメンな彼氏ができてよかったな!」
次の瞬間、みんなが一斉に大声を上げたから、思わず耳を塞ぎたい衝動に駆られた。
「超イケメン同士のカップル成立かぁ」
「これは面白くなってきた」
盛り上がる友人たちを見て、俺は全身の力が抜けていくのを感じた。
部活が終わり、生徒が帰宅する時間。
まさか本当に迎えにこないよな……そう考えると落ち着かなくなってしまう。
章人は小学校の頃から空手をやっていたらしく、最近になってからようやく空手部に入部した、と女子が騒いでいた。
「そろそろ彼氏が迎えに来るんじゃねぇの?」
「馬鹿が。本当に来るわけないだろう」
顔を綻ばせながら自分に近づいてくる優太に、バスケットボールを投げつければ、「いってぇ!」なんて大袈裟に悲鳴を上げている。
本当に迎えに来るはずがない、か。
さっさと帰ろうと部室に向かおうとしたところに、体育館にいた女子生徒たちが一斉にざわめき出す。まさか……恐る恐る体育館の入口に視線を向ければ、笑顔で手を振る章人がいた。
マジか、冗談だろ……。思わず言葉を失ってしまった。
「ねぇ、あれ神谷君じゃない? 超かっこいい」
「本当だ! 手を振ってるみたいだけど、誰かを迎えに来たとか?」
「もしかして彼女とか? えー、ヤダヤダ!」
そんな会話を聞きながら、俺は手を振り返すことができずに立ちすくんでいると、章人がこちらに向かってゆっくりと歩いてくる。
「迎えにきたよ、凪。一緒に帰ろう」
「あ、うん……」
その場にいた全生徒の視線が、一斉に自分たちに向けられたのを感じた。
「えー!! 神谷君、凪を迎えにきたの!?」
女子生徒の黄色い声援が、オレンジ色のライトに包まれた体育館に響き渡ったのだった。
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