32 / 39
本編
32. 逃げてきた結果
しおりを挟む
「ソフィアの努力をよく否定できるな……」
隣にいるアルト様から不穏な空気が漂っている。
彼の中でも何かが切れてしまったみたい。
けれど、ここは私が反論しないとセレスティアに負けたように感じると思ったから、アルト様を制して一歩前に出た。
「陛下、発言してもよろしいですか?」
「構わない」
「ありがとうございます」
許可を得て、セレスティアの前に向かう。
足音に気付いてこちらをに視線を向けてきた彼女と目が合うと、私は怒りが顔に出ないように抑え込みながら口を開いた。
「私が努力していないと思ったら大間違いですよ。私は今までずっと努力を積み重ねてきました。礼儀作法の勉強も、魔法の勉強も。
でも、貴女は違ったみたいですね。勉強が嫌だからと、魔法を使ってでも逃げ出していたのでしょう?」
「どうしてそれを……?」
「ずっと逃げていたあなたを両親が見限るのも当然だとは思わなくって? 将来に光を見出すことが出来ませんから。
努力していれば、認めてもらえていましたよ。あなたの弟のようにね」
バルケーヌ公爵家の嫡男は適正こそ3属性あったけれど、魔力量が少ないことで有名だった。けれども、政治や経済について猛勉強することで両親を驚かせたのだとか。
セレスティアの境遇について知ったのは、アルト様の侍女と話しているときに聞くことが出来たから。
その侍女さんは元々バルケーヌ家で働いていたそうなのだけど、セレスティアの癇癪によって辞めさせられたらしい。
そんな態度を取っていたと知ったから、セレスティアに同情はしなかったのよね……。当然の報いだもの。
「グレンには才能があったのよ! 比べないで!」
「認めたくない気持ちは分かります。でも、あなたの過ちは変わりませんわ」
「恵まれていた貴女に何が分かるのよ!?」
涙を浮かべながら、けれども表情は怒りに染まっている。そんな状態で声を上げるセレスティア。
ここまでくると、私にはもう我慢出来なかった。
「努力してから言いなさい。あなたにも恵まれているものはあったでしょう?」
「ダンスと計算と礼儀作法だけ出来ても足りないのよ」
私にだって、足りないところはたくさんあった。
ダンスが下手で何回も講師の先生の足を踏んでいた。計算も苦手で、何回もやり直しになっていた。
でも、辛くても諦めなかった。
苦難から逃げていた人には、恵まれていただなんて言われたくない。
「欠点を減らす努力をしなかった結果ですわ。ここまで言えば理解できますわよね?」
問いかけても返事は無かった。
でも、言いたいことを言えたからスッキリした。
「お騒がせして申し訳ありませんでした」
「構わない。貴女の言葉を聞いたセレスティアが反省してくれることを願うばかりだ」
そう言ってくれた陛下に頭を下げ、後ろに下がる私達。
続けて、宰相様が裁判を次に進めるためにこう口にした。
「それでは処罰を決定します。陛下、お願いします」
「本件は多くの者を巻き込んでいる上、王国の存続をも脅かしている。よって、極刑が妥当と判断している。
しかし、セレスティアの力は利用価値が高い。彼女が望むのなら、また被害に遭った皆が赦すなら、隷属の契りを結んだ上でダンガラスの地の平定にその身を捧げさせることも厭わない」
陛下がそう口にすると、少しだけ法廷が騒がしくなった。
極刑よりも恐ろしい罰だという意見もれば、生かしていくのは危険だという意見もある。利用するべきだという意見も聞こえてきた。
けれども、一番よく耳に入ってきたのは……。
「ダンガラスなんて死んでも御免ですわ!」
……涙を浮かべているセレスティアの声だった。
「では、罪人セレスティアは極刑に処す。処刑場所および日程は後に決定する。
異論のある者は挙手を」
彼女に憐れむ視線は向けられていても、手を挙げる人はいなかった。
隣にいるアルト様から不穏な空気が漂っている。
彼の中でも何かが切れてしまったみたい。
けれど、ここは私が反論しないとセレスティアに負けたように感じると思ったから、アルト様を制して一歩前に出た。
「陛下、発言してもよろしいですか?」
「構わない」
「ありがとうございます」
許可を得て、セレスティアの前に向かう。
足音に気付いてこちらをに視線を向けてきた彼女と目が合うと、私は怒りが顔に出ないように抑え込みながら口を開いた。
「私が努力していないと思ったら大間違いですよ。私は今までずっと努力を積み重ねてきました。礼儀作法の勉強も、魔法の勉強も。
でも、貴女は違ったみたいですね。勉強が嫌だからと、魔法を使ってでも逃げ出していたのでしょう?」
「どうしてそれを……?」
「ずっと逃げていたあなたを両親が見限るのも当然だとは思わなくって? 将来に光を見出すことが出来ませんから。
努力していれば、認めてもらえていましたよ。あなたの弟のようにね」
バルケーヌ公爵家の嫡男は適正こそ3属性あったけれど、魔力量が少ないことで有名だった。けれども、政治や経済について猛勉強することで両親を驚かせたのだとか。
セレスティアの境遇について知ったのは、アルト様の侍女と話しているときに聞くことが出来たから。
その侍女さんは元々バルケーヌ家で働いていたそうなのだけど、セレスティアの癇癪によって辞めさせられたらしい。
そんな態度を取っていたと知ったから、セレスティアに同情はしなかったのよね……。当然の報いだもの。
「グレンには才能があったのよ! 比べないで!」
「認めたくない気持ちは分かります。でも、あなたの過ちは変わりませんわ」
「恵まれていた貴女に何が分かるのよ!?」
涙を浮かべながら、けれども表情は怒りに染まっている。そんな状態で声を上げるセレスティア。
ここまでくると、私にはもう我慢出来なかった。
「努力してから言いなさい。あなたにも恵まれているものはあったでしょう?」
「ダンスと計算と礼儀作法だけ出来ても足りないのよ」
私にだって、足りないところはたくさんあった。
ダンスが下手で何回も講師の先生の足を踏んでいた。計算も苦手で、何回もやり直しになっていた。
でも、辛くても諦めなかった。
苦難から逃げていた人には、恵まれていただなんて言われたくない。
「欠点を減らす努力をしなかった結果ですわ。ここまで言えば理解できますわよね?」
問いかけても返事は無かった。
でも、言いたいことを言えたからスッキリした。
「お騒がせして申し訳ありませんでした」
「構わない。貴女の言葉を聞いたセレスティアが反省してくれることを願うばかりだ」
そう言ってくれた陛下に頭を下げ、後ろに下がる私達。
続けて、宰相様が裁判を次に進めるためにこう口にした。
「それでは処罰を決定します。陛下、お願いします」
「本件は多くの者を巻き込んでいる上、王国の存続をも脅かしている。よって、極刑が妥当と判断している。
しかし、セレスティアの力は利用価値が高い。彼女が望むのなら、また被害に遭った皆が赦すなら、隷属の契りを結んだ上でダンガラスの地の平定にその身を捧げさせることも厭わない」
陛下がそう口にすると、少しだけ法廷が騒がしくなった。
極刑よりも恐ろしい罰だという意見もれば、生かしていくのは危険だという意見もある。利用するべきだという意見も聞こえてきた。
けれども、一番よく耳に入ってきたのは……。
「ダンガラスなんて死んでも御免ですわ!」
……涙を浮かべているセレスティアの声だった。
「では、罪人セレスティアは極刑に処す。処刑場所および日程は後に決定する。
異論のある者は挙手を」
彼女に憐れむ視線は向けられていても、手を挙げる人はいなかった。
276
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された令嬢ですが、王国は私抜きでは立てなかったようですね』
鷹 綾
恋愛
「愛しているのは彼女だ」
王太子ロネスにそう告げられ、婚約を破棄された侯爵令嬢エルゼリア・クローヴェル。
感情をぶつけることも、復讐を誓うこともなく、
彼女はただ――王宮を去った。
しかしその直後から、王国は静かに崩れ始める。
外交は滞り、判断は遅れ、市場は揺れ、
かつて「問題なく回っていた」はずの政務が、次々と行き詰まっていった。
一方、エルゼリアは帝国で新たな立場を得ていた。
帝国宰相ハインリヒ・ヴォルフの隣で、
彼女は再び“判断する側”として歩み始める。
やがて明らかになるのは、
王国が失ったのは「婚約者」ではなく、
判断を引き継ぐ仕組みそのものだったという事実。
謝罪も、復縁も、感情的なざまあもない。
それでも――
選ばれ、認められ、引き継がれていくのは、誰なのか。
これは、
捨てられた令嬢が声を荒げることなく、
世界のほうが彼女を必要としてしまった物語。
【完結】姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています
春野オカリナ
恋愛
エミリー・ブラウンは、姉の婚約者だった。アルフレッド・スタンレー伯爵子息と結婚した。
社交界では、彼女は「姉の婚約者を奪った悪女」と呼ばれていた。
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
あなたの絶望のカウントダウン
nanahi
恋愛
親同士の密約によりローラン王国の王太子に嫁いだクラウディア。
王太子は密約の内容を知らされないまま、妃のクラウディアを冷遇する。
しかも男爵令嬢ダイアナをそばに置き、面倒な公務はいつもクラウディアに押しつけていた。
ついにダイアナにそそのかされた王太子は、ある日クラウディアに離縁を突きつける。
「本当にいいのですね?」
クラウディアは暗い目で王太子に告げる。
「これからあなたの絶望のカウントダウンが始まりますわ」
セラフィーヌの幸せ結婚 ~結婚したら池に入ることになりました~
れもんぴーる
恋愛
貧乏子爵家のセラフィーヌは侯爵家嫡男のガエルに望まれて結婚した。
しかしその結婚生活は幸せなものではなかった。
ガエルは父に反対されている恋人の隠れ蓑としてセラフィーヌと結婚したのだ。
ある日ガエルの愛人に大切にしていたブローチを池に投げ込まれてしまうが、見ていた使用人たちは笑うだけで拾おうとしなかった。
セラフィーヌは、覚悟を決めて池に足を踏み入れた。
それをガエルの父が目撃していたのをきっかけに、セラフィーヌの人生は変わっていく。
*前半シリアス、後半コミカルっぽいです。
*感想欄で所々ネタバレしてしまいました。
感想欄からご覧になる方はご注意くださいませm(__)m
*他サイトでも投稿予定です
次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛
Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。
全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)
【完結】君の世界に僕はいない…
春野オカリナ
恋愛
アウトゥーラは、「永遠の楽園」と呼ばれる修道院で、ある薬を飲んだ。
それを飲むと心の苦しみから解き放たれると言われる秘薬──。
薬の名は……。
『忘却の滴』
一週間後、目覚めたアウトゥーラにはある変化が現れた。
それは、自分を苦しめた人物の存在を全て消し去っていたのだ。
父親、継母、異母妹そして婚約者の存在さえも……。
彼女の目には彼らが映らない。声も聞こえない。存在さえもきれいさっぱりと忘れられていた。
優柔不断な公爵子息の後悔
有川カナデ
恋愛
フレッグ国では、第一王女のアクセリナと第一王子のヴィルフェルムが次期国王となるべく日々切磋琢磨している。アクセリナににはエドヴァルドという婚約者がおり、互いに想い合う仲だった。「あなたに相応しい男になりたい」――彼の口癖である。アクセリナはそんな彼を信じ続けていたが、ある日聖女と彼がただならぬ仲であるとの噂を聞いてしまった。彼を信じ続けたいが、生まれる疑心は彼女の心を傷つける。そしてエドヴァルドから告げられた言葉に、疑心は確信に変わって……。
いつも通りのご都合主義ゆるんゆるん設定。やかましいフランクな喋り方の王子とかが出てきます。受け取り方によってはバッドエンドかもしれません。
後味悪かったら申し訳ないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる