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本編
31. 裁きの場
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儀式魔法を成功させてから3日、私達は王宮の近くにある法廷に来ていた。
今日ここで執り行われるのは、王家を操り王国の転覆を企んだ重罪人の裁判。
およそ500年ぶりの「反逆罪」ということで、険しい空気が漂っている。
ちなみに裁判とはいっても、証拠を提示して罪人の親族に処罰の正当性を示すだけ。
だから証言する人が多くなるようにと、高位の貴族を中心に30人ほどが参加している。
「皆様、本日はお集まり頂き感謝申し上げます。これより、開廷と致します」
宰相様がそう口にし、裁判が始まる。
ちなみにだけれど、私は証拠を提示するときの補佐役として呼ばれているから、裁判の内容には関わらないことになっている。
けれども、緊張は解けそうになかった。
「罪人よ、前へ」
陛下の言葉に続けて、縄で手を拘束された状態のセレスティアが入ってきた。
綺麗に整えられていたはずの髪は乱れていて、すっかり憔悴している様子。
公爵令嬢の時は貴人牢で扱いも良かったはずなのだけれど……。
平民になってからは普通の牢屋に移されていたとはいえ、3日でここまで変わり果ててしまうものなのかしら?
取り調べはあったけれど、拷問の類は一切行われていないというのに。
昨日アルト様から聞いた話によると、セレスティアは取り調べで自らの過ちをすべて認めていたらしい。そこまでは良かったのだけれど、周囲の態度が悪かったと他人のせいにしようとしていたとか……。
つくづく救えない人ね、なんて思った。
「セレスティア、お前は私利私欲のためにレオン王子やここに居るアリス嬢とソフィア嬢、またその他大勢に禁忌とされる精神作用魔法をかけ、傀儡とすることを目論んだ国家反逆罪に問われている。異論はあるか?」
「ありますわ! 私は殿下を傀儡にしようとはしていません! ただ、アリスを嫌いになるように仕向けただけですの」
「魔法を使ったとは認めないのだな?」
「当然ですわ」
証拠が出てこない自信があるのか、はっきりと言い切るセレスティア。
けれども、彼女の思っている通りにはならなかった。
「では、お前が殿下に魔法をかけていたことを証明する」
一度言葉を切り、参加者の方に向き直る宰相様。
それから、こんな説明を始めた。
「皆様はお気づきだと思いますが、こちらにある魔法陣は既に発動状態となっています。
この儀式魔法について簡潔に説明すると、魔法陣中央に入った人物にかけられた魔法を目に見える形にし、特定の魔法を選ぶことでその魔法をかけた人物が示されるというものです」
それから、お父様達が魔法陣の周囲に出て、この魔法が本物であることを示していた。
魔法をかけられた人を中心に立たせて、魔力の流れをこの場の方々に見せるという形で。
「この儀式魔法の効果はお判りいただけたと思います。
では、殿下。魔法陣の中へお願いします」
宰相様の言葉に続けて、魔法陣の中央に足を踏み入れる殿下。
それに続けてお父様が詠唱すると、紫色の光が現れてセレスティアの方向に浮かんだ。
「セレスティアよ、魔法陣の周りを一周しなさい」
無言で魔法陣の方へと歩くセレスティア。紫色の光は彼女の方を指し示し続けている。
「これを見てセレスティアの罪状に異論のある者はいるか?」
陛下の問いかけに反応する人はいなかった。
そんな状況になったから、裁判は次の段階に進もうとしていた。
「セレスティアの罪状に誤りが無かったことが証明されました。これより、処罰の裁定に移ります」
「そんな……っ! 私は悪くありませんわ!」
まだ罪を認められないのか、セレスティアの声が響く。
けれども、その叫びは無視されていた。
「これは全部、そこにいるソフィアが悪いのよ! あの女さえいなければ……私はお父様とお母様に嫌われずに済みましたのに……」
突然、指を差されて固まる私。
セレスティアの言葉になんて誰も耳を傾けていないからまだいいけど、いい気分はしない。
「陛下、発言をお許しいただけますか?」
「良いぞ」
私が言い返そうと陛下に許可を取るよりも先に、アリスが許可を得ていた。
「その言い方、貴女はきっと両親から愛されていなかったのでしょう。ですが、それをソフィアのせいにするのは間違っています。恨むなら、両親を恨みなさい。
関係の無い人を巻き込んでいると、だれも助けてくれなくなりますよ。今のようにね」
冷たい口調で淡々と告げるアリス。親友だから分かるけれど、彼女は怒っている。
それも私のために。
「恵まれてる人に言われたくないわ! あなたも憎いわ。4属性に適正があって、ずっと褒められる人生だったのでしょう?
私なんて、忌み嫌われる闇属性にしか適性が無かった。だからあなた達と比べられて、蔑まれる羽目になったのよ!
あなた達さえいなければ、私は比べられなかった! 私は努力しても褒められなかったのに、あなた達は何もしなくても讃えられる……。だから憎かったのよ」
涙を流しながらの言い訳だけれど、それを聞いた時には何かが私の中で切れた気がした。
今日ここで執り行われるのは、王家を操り王国の転覆を企んだ重罪人の裁判。
およそ500年ぶりの「反逆罪」ということで、険しい空気が漂っている。
ちなみに裁判とはいっても、証拠を提示して罪人の親族に処罰の正当性を示すだけ。
だから証言する人が多くなるようにと、高位の貴族を中心に30人ほどが参加している。
「皆様、本日はお集まり頂き感謝申し上げます。これより、開廷と致します」
宰相様がそう口にし、裁判が始まる。
ちなみにだけれど、私は証拠を提示するときの補佐役として呼ばれているから、裁判の内容には関わらないことになっている。
けれども、緊張は解けそうになかった。
「罪人よ、前へ」
陛下の言葉に続けて、縄で手を拘束された状態のセレスティアが入ってきた。
綺麗に整えられていたはずの髪は乱れていて、すっかり憔悴している様子。
公爵令嬢の時は貴人牢で扱いも良かったはずなのだけれど……。
平民になってからは普通の牢屋に移されていたとはいえ、3日でここまで変わり果ててしまうものなのかしら?
取り調べはあったけれど、拷問の類は一切行われていないというのに。
昨日アルト様から聞いた話によると、セレスティアは取り調べで自らの過ちをすべて認めていたらしい。そこまでは良かったのだけれど、周囲の態度が悪かったと他人のせいにしようとしていたとか……。
つくづく救えない人ね、なんて思った。
「セレスティア、お前は私利私欲のためにレオン王子やここに居るアリス嬢とソフィア嬢、またその他大勢に禁忌とされる精神作用魔法をかけ、傀儡とすることを目論んだ国家反逆罪に問われている。異論はあるか?」
「ありますわ! 私は殿下を傀儡にしようとはしていません! ただ、アリスを嫌いになるように仕向けただけですの」
「魔法を使ったとは認めないのだな?」
「当然ですわ」
証拠が出てこない自信があるのか、はっきりと言い切るセレスティア。
けれども、彼女の思っている通りにはならなかった。
「では、お前が殿下に魔法をかけていたことを証明する」
一度言葉を切り、参加者の方に向き直る宰相様。
それから、こんな説明を始めた。
「皆様はお気づきだと思いますが、こちらにある魔法陣は既に発動状態となっています。
この儀式魔法について簡潔に説明すると、魔法陣中央に入った人物にかけられた魔法を目に見える形にし、特定の魔法を選ぶことでその魔法をかけた人物が示されるというものです」
それから、お父様達が魔法陣の周囲に出て、この魔法が本物であることを示していた。
魔法をかけられた人を中心に立たせて、魔力の流れをこの場の方々に見せるという形で。
「この儀式魔法の効果はお判りいただけたと思います。
では、殿下。魔法陣の中へお願いします」
宰相様の言葉に続けて、魔法陣の中央に足を踏み入れる殿下。
それに続けてお父様が詠唱すると、紫色の光が現れてセレスティアの方向に浮かんだ。
「セレスティアよ、魔法陣の周りを一周しなさい」
無言で魔法陣の方へと歩くセレスティア。紫色の光は彼女の方を指し示し続けている。
「これを見てセレスティアの罪状に異論のある者はいるか?」
陛下の問いかけに反応する人はいなかった。
そんな状況になったから、裁判は次の段階に進もうとしていた。
「セレスティアの罪状に誤りが無かったことが証明されました。これより、処罰の裁定に移ります」
「そんな……っ! 私は悪くありませんわ!」
まだ罪を認められないのか、セレスティアの声が響く。
けれども、その叫びは無視されていた。
「これは全部、そこにいるソフィアが悪いのよ! あの女さえいなければ……私はお父様とお母様に嫌われずに済みましたのに……」
突然、指を差されて固まる私。
セレスティアの言葉になんて誰も耳を傾けていないからまだいいけど、いい気分はしない。
「陛下、発言をお許しいただけますか?」
「良いぞ」
私が言い返そうと陛下に許可を取るよりも先に、アリスが許可を得ていた。
「その言い方、貴女はきっと両親から愛されていなかったのでしょう。ですが、それをソフィアのせいにするのは間違っています。恨むなら、両親を恨みなさい。
関係の無い人を巻き込んでいると、だれも助けてくれなくなりますよ。今のようにね」
冷たい口調で淡々と告げるアリス。親友だから分かるけれど、彼女は怒っている。
それも私のために。
「恵まれてる人に言われたくないわ! あなたも憎いわ。4属性に適正があって、ずっと褒められる人生だったのでしょう?
私なんて、忌み嫌われる闇属性にしか適性が無かった。だからあなた達と比べられて、蔑まれる羽目になったのよ!
あなた達さえいなければ、私は比べられなかった! 私は努力しても褒められなかったのに、あなた達は何もしなくても讃えられる……。だから憎かったのよ」
涙を流しながらの言い訳だけれど、それを聞いた時には何かが私の中で切れた気がした。
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