マドンナからの愛と恋

山田森湖

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ふたりで泳いで、見つけた家

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ふたりで泳いで、見つけた家

俺、コウジ。35歳の会社員。

街コンで、同じ高校・同じ水泳部だったレナと再会した。
当時、彼女はマドンナ的な存在。でも今は少しぽっちゃりしていて──それでも、可愛さは変わっていなかった。

それがきっかけで、レナと週に一度ウォーキングを始めた。やがて一緒にプールにも通うようになり、自然と距離が縮まっていった。
そして俺たちは、結婚することになった。

お互いの親に挨拶を済ませ、新居探しを始めることに。いま、レナは俺と一緒に暮らしている。
プチ同棲だ。互いの部屋はないので、レナはリビングで着替え、俺はキッチンで着替えている。
たまにレナの着替えを覗くと「もう、エッチ」なんて怒られる。でも、それが楽しい。

このプチ同棲のおかげで、お互いの生活スタイルもわかってきたし、すり合わせもできている。いい時間だ。
結婚して子どもも考えているので、アパートだけでなく持ち家も視野に入れることにした。

毎週土日は不動産を回っていたが、視野を広げて、「新築」の立て札を見かけたら、飛び込みで見に行くようになった。
新居探しを始めて1ヶ月が経ったが、なかなか決め手がない。どこかを取れば、どこかを失う──その繰り返しだった。

ある夕方、新居探しの帰り道。ナビはいつものように右折を指示していた。
「ここさ、いつも右じゃん。左行ってみようかな」
なんとなくだった。そして左に曲がると、視界が開けた場所に出た。

「新築物件」の看板が目に入る。「ここは来たことないね」「そうだね、行ってみようよ」
よく見ると、旗を振っている営業マンがいた。ここまで来たら、乗ってみよう。

「こんにちは。あれ、ご夫婦ですか?」
「えっ、まあ……」
「じゃあ、愛の巣をお探しですね」
俺は吹き出してしまった。横でレナも笑っている。
「あらら、図星かな。さっ、中へどうぞ」

ここまで言われたら、入るしかない。
新築なので、当然ながら中はきれいだ。値段も安い。駅から若干遠いのが理由だろう。
条件的には申し分ない。あとはレナの決断次第だ。

明るい営業マンは、さらに明るく勧めてくる。するとリビングの端に、あるカバンが置いてあった。
それは明らかに水泳系のメーカー。これを使っている人は、たいてい水泳経験者だ。

「営業さん、そのカバンは?」
「これっすか? いいっすよね、このメーカー。学生の頃、水泳部だったんですよ」
「何の選手ですか?」
「自由形です。ってか他が遅いから、自然と自由形担当になってましたね。あと、ほとんど声出し要員ですかね、ははは。だから営業でも、アピール力は全開ですよ!」

なんだろう……俺は少なからず、縁を感じた。
レナも笑って俺を見て、こくんと頷いた。

「お兄さん、ここ、買うよ」
「ほんとですか! ありがとうございます!」

このお兄さんも、俺たちと同じく、高校時代のあの大変なメニューをこなしていたのだろう。
でも明るく、みんなを励ましていたのかもしれない──そんな気がした。

契約の日を決め、その場を後にした。

「なんか俺が忘れてたもの、持ってたな」
「うん。いつまでも、明るくいてほしいね」

──来週の土曜は水泳だな。
高校のときの名物メニュー、やってみようかな。
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