思い出して欲しい二人

春色悠

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第一章

思わぬ所で(受け視点)

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 な、何であすくんがここに!?



 大学の帰り。今日は朝の一限と昼からの二限。昼ご飯を食べに出た道で、新しい本屋を見つけてしまった俺はふらっと本屋に入った。
 中は思ったより大きくて、流石に今全部見て回るのは無理かな、と思いながら、一度ぐるっと一周する。それから面白そうなジャンルの所に行くのが俺の本屋の周り方。
 あ、『超絶かんたん!目指せお話上手!』。お話上手、かぁ……。

 俺も、お話上手になれるかな。
 そう思った時には、ふらっとその本を手に持っていた。
『これであなたもお話上手!
ステップ1
 常に笑顔を心がけましょう!
 怖い顔してたら相手が話しかけづらいわ!』
 ・・・・。
 俺には無理かもしれない。ステップ1から高難易度だ。怖い顔、かは分からないが、いつも真顔だとは思う。……あすくんの前なら、笑ってしまう気がするけど。
「あれ、翠君?」
 あすくんの事を考えていたら幻聴まで聞こえ、ん?あれ?あすくんが目の前に居る?
「やっぱり、翠君だ!奇遇だね。」
 そう言ってニコニコと駆け寄ってくるあすくん。仕事中なのか、スーツ姿だ。かっこいい……。
 あ、俺も、なにか言わないと。えっと、あ、笑顔、笑顔。
「そうですね。あす、かさんは、どうしてここに?」
 ぎこちない笑顔になってないだろうか。もうちょっとで、あすくんと呼んでしまうところだった。気をつけなきゃ。
「、ああ、ちょっと調べたい事があってね。本屋が目に入ったから、寄ってみたんだ。」
 今、変な間があった、ぜったい俺が変な顔してたからだ!ぅぅうぅ、あすくんの前で、変な顔しちゃったよぉ。引かれたよぜったいぃ。やっぱり俺には無理だったんだ……。
 というか、調べたい事ってなんだろう?聞いてみる?もうちょっと、あすくんとお話したいし……。
「調べたい事、ですか?」
「……あー、料理のレシピ本、かな。翠君のお店で食べたフレンチトーストが美味しかったから、家でも作ってみようかなって。」
 そう言ってフワリと笑うあすくんは、とてもかっこいい。
 それに、あすくんがフレンチトースト美味しかったって言ってくれた。嬉しくて、ちょっとソワソワ落ち着かない。
「…そ、そうですか。えっと、料理本の類なら、あっちの方にありましたよ。」
「ありがとう。探してみるよ。」
 落ち着かなくて、話をそらす。料理本のコーナーを口頭で案内して、あすくんと別れた。
 結局あの『超絶かんたん!目指せお話上手!』は買った。頑張ってあすくんとお話できるようになろう。恋人にはなれなくても、友達として側にいれたら、それはそれで、幸せだろうから。



 大学も終わり、家に帰って買った本を出す。
 …………?……『超絶かんたん!これであなたもお話上手!~あの人だってこれでイチコロ!~』?
 ………わぁぁぁああ!こ、これ、あ、え、うぉ…。
 そういうのじゃないってばぁぁ!!!
 暫く俺はベットの上でゴロゴロと転がり回ったのだった。
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