思い出して欲しい二人

春色悠

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第一章

誤解が解ける (受け視点)

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 あ、あれ?し、栞が無い…!!
 途中まで読んだ本に栞を挟もうとすれば、何処にも栞が無い事に気づいた。
 今日は祝日で、学校もお店もお休みだから本を読んでいたのだ。
 あ、あすくんからもらった大事な指輪の栞なのに…!!
 泣きそうになりながら家の中を探すも、見つかる気配が無い。
 た、確か、飛鳥さんから借りた本を読んでた時はあったよね…?
 てことは、その後?
 _____も、もしかして、飛鳥さんに返した本に挟んだまま……!!!?
 ど、どうしようどうしよう…、飛鳥さんに連絡?それとも次にお店に来てくれた時に話す?
 立てた仮説に狼狽えながら、携帯を出して飛鳥さんに連絡を取るかどうか悩む。
 その時_____
 ぴこん、
 飛鳥さんからメールが来た。
「え、えっ?」
 びっくりして意味の無い母音をもらしながらメールを確認する。
『少し話したい事があるんだけど、今日大丈夫かな?』
 思わず携帯を落としかけた。
 ギリギリでキャッチして、もう一度メールを確認すれば、さっきと同じ文章がちゃんと飛鳥さんから送られていた。
 ど、どうしたんだろ…?
『大丈夫ですけど、どうしたんですか?』
『実は翠君に貸した本から栞を見つけてね。返したいと思って。』
 ぴくり、と指が止まった。
 …やっぱり、飛鳥さんの所にあったんだ。
『今から飛鳥さんのお家に取りに伺ってもいいですか?』
『いや、今お店の前に居るんだ。だからそっちに来てもらえるとありがたいかな。』
「えっ……!!?」
 返ってきたメールに驚いて窓から玄関を見れば、飛鳥さんのサラサラした髪の毛が見えた。
 こっちに気づいたらしい飛鳥さんがひらりと手を振っている。
 う、うそ、い、急がなくちゃ…!!
 急いで部屋着を着替えて下のお店に出る。
 カランカランっ!
 焦ってドアを開けたせいか大きくベルが鳴った。
 扉を開けた先には飛鳥さんが居て、片手に栞を持っていた。
「あ、飛鳥さん…!!」
「翠君!急に来ちゃってごめんね。」
「いえ、こちらこそ届けていただいて……、ほんとにありがとうございます。」
 ほんとに、失くさなくてよかった……。
 栞を受け取って、安心して少し頬が緩む。
「いや、俺も話したいことあったから……。」
 そうどこか言い淀みながら微笑む飛鳥さん。
 …どうしたんだろう…?
「……その、栞ってさ、」
 何を言われるのだろう。
 どきどきと、緊張で鼓動が速まる。
「えと、持ってる理由とか、覚えてるかな?」
 自信なさげに此方を見る飛鳥さん。
 ……もしかして、飛鳥さんも__________覚えてくれてたり、するのかな。
 淡い期待を抱きながら口を開いた。
_____「あ、すくん、って、子に、もらったお花を栞にしたんです。」
 言葉に詰まりながらだけど、言い切れた。
 そう思った瞬間には、飛鳥さんに両手をがっしりと掴まれていて、ぐっと飛鳥さんの顔が鼻が当たるほど近くになる。
「覚えてるのか……!?」
「っ…!!?」
「あ、ごめん、急に大声だして「飛鳥さんこそ、覚えてるなら幻滅しませんでしたか。」えっ?」
 びっくりした俺に申し訳無さそうに手を話そうとする飛鳥さんの手を掴んで、そう捲し立てる。
「飛鳥さん__________あすくんが好きになってくれた俺は、女の子じゃないんですよ。」
 もう、話してしまおう。
 そう思った。
 きっと、今を逃したら俺は一生わからないまま過ごしてしまう。
 ほぼやけくそ気味に言ったのに、飛鳥さんの顔を見れないまま俯く。
「覚えてた、のか……?__________みどり。」
 呆然と呟くあすくんに、ああやっぱり、あすくんも俺のこと女の子だと思ってたんだと思う。
 きっと、幻滅しただろうな。
「…………はい。」
 応えたくないな、なんて思いながら肯定すれば、次の瞬間俺はあすくんに抱きしめられていた。
「_____っよかった……!!ほんとに…ほんとに……!!」
 涙声であすくんが話すけど、抱きしめられたままだから表情が見えない。
 何で俺は抱きしめられてるんだろうと思いながら、ぎゅうぎゅうと抱きしめる力の強いあすくんから離れられない。
「……………よかった……?ほんとに、よかったの?おれ、おんなのこじゃないんだよ、あすくんのことだましてたんだよっ……?」
 離れられないと言いながら、離れたくないと思ってあすくんに抱きつきながら聞く。
「えっ?いや、みどりが男なのは最初から知ってたし、その上で俺はプロポーズまでしてたんだが……?」
「えっ?」
 _____「「えぇっ!?」」
 びっくりしすぎて二人でバッチリ目を合わせながら驚く。
 え、えと、つまり……_____あすくんはもともと男の俺が好きだったってこと……??
 俺が思ってる事が何となくわかったのか、盛大にあすくんが脱力しながら俺に抱きついてくる。
 どきどきと、また緊張とは違う鼓動の高鳴りを感じながらあすくんの背中に手をまわす。
「_____なあ、みどり。俺と付き合って。何なら結婚して。
 俺は男でも女でもみどりが好きだ。愛してる。もう離したくないから、離せないから、俺と一緒に居て。」
 ぎゅうぎゅうと俺を抱きしめたまま、耳元で話すあすくん。
 そんなの、断れる訳無いじゃないか。
 それでもやっぱり恥ずかしいもので、顔はおろか全身暑くなりながら返事することになった。
_____「うん。あすくんとず~っと一緒に居る。」
 そう応えたら、あすくんの抱きしめる力がもっと強くなって、ああ、もう離れられないな、と思った。
「だいすき、あすくん。」
「俺は愛してるぞみどり。」
 俺を甘やかしまくってキザに口説きまくるあすくんに、赤面し続けることになった俺であった。


~完~
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