雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!

コバひろ

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雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』その(13) ローキック

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(実況)

「われわれ格闘技ファンは、信じられないものを観ています。これは単なる性別を超えた同じ格闘家同士の戦いではありません。未知との遭遇か?豪傑男と美少女が同じリングで真剣勝負をしています。女子はリング上でも男子と平等なのか? 区別するべきか? ジェンダーレスであるべきか? まさにイデオロギー闘争です。第2ラウンド開始のゴングが鳴った!」

初回の先制攻撃はセコンドにも言われたように虚をついたもの。同じ手は通用しない。堂島はじっくり構える。

すると、今度はNOZOMIが堂島の虚をつきスルスルっとやってきた。長身の身を屈め蛇のように鋭くシュッと襲いかかってきた。
ジャブ、ストレート、フック、アッパーと、多彩なパンチをガードしている堂島の顔に浴びせかけてきた。
堂島はあっという間にコーナーに追い詰められた。この態勢になれば、普通ならクリンチで逃げる。キックボクサーの本能のように堂島は自然とクリンチしようと身体が動く。

「堂島さんクリンチはダメだ! まわって、まわって逃げるんだ」

セコンドが叫んでいる。

冷静になった堂島は、あの長い腕を警戒しながら左にまわった。そんな堂島を掴まえにくると思われたNOZOMIだが、あくまで打撃に拘ったように攻めてくる。拳を振るってくる。

堂島は打撃戦での攻防は百戦錬磨である。どうにかNOZOMIのラッシュを凌ぎ切ったが、それは、見ている者にはほうほうのていに映った。
逃げ切った?と思ったのも束の間。恐るべき速さでNOZOMIは堂島を追ってきた。リング中央でNOZOMIの長い腕から繰り出される多彩なパンチが矢のように降ってくる。

観客は信じられないものを観ているような気分であっただろう。異様な雰囲気に場内は包まれていた。

それもその筈で、打撃系格闘技の専門家であるはずの堂島が、逆にその打撃で追い込まれている。それも相手は17才の女子高生なのだ。
このままではレフェリーが間に入り試合をストップしかねない。そうなれば屈辱のTKO負けということになる。

堂島の妻佐知子が口を抑えながら心配そうに観ている。娘の麻美は目に涙を浮かべ「パパァ~!」と叫んでいる。
息子の龍太は目の前の光景から目を逸らせた。彼にしてみれば、父が女子選手に負けるのは勿論のこと、攻められるところさえ見たくないのだ。

当の堂島源太郎は意外と冷静だった。きっちりガードしているし、やはり女子の打撃は男子と違って一発の重さはない。2~3発食らっても倒されることはないだろう。
NOZOMIが打ち疲れしてきたと思われた時だ、堂島のローキックが膝にヒットした。NOZOMIは数歩後退する。すかさず堂島はその懐に入り下から打ち上げるような右アッパー。それは見事にNOZOMIの顎をとらえた。
NOZOMIはそのままよろけるように尻餅をついた。ダウンである。

うおおお~! 歓声と悲鳴。

普通ならこのまま倒れた相手に飛び掛かりマウントからパンチで決着をつけたいところ。それが総合ルールでの基本的な戦い方なのだ。でも、それは普通の相手であって、目の前に倒れているのはNOZOMIなのだ。
雌蛇の罠という言葉が頭を過った。

NOZOMIの欠点はあの長い手足にあると堂島は思う。長いだけにモーションが大きく読めてしまうのだ。
只、的確にその顎をとらえたと思ったアッパーだが、ヒットする瞬間、微妙に顎を引いて急所をずらしている。それは初回のボディーの時にも感じた。
恐るべき反射神経、そして、カン。

NOZOMIはカウント9で立ち上がった。
そして、不敵な笑みを浮かべた。

堂島は冷静になることに努めた。
入っては退き、入っては退く。徹底したヒットアンドアウェイ作戦。時折ビシッとローキックがNOZOMIの下腿部を襲う。NOZOMIは顔を顰める。そのまま目立つ動きはなく第2ラウンド終了のゴングが鳴った。

NOZOMIは堂島を少し甘く見ていたのではないか?と、思い始めていた。
思ったより彼は冷静で戦い方に長けている。決してNOZOMIの距離に入ってこないし、あのローキックは重くて厄介だ。キックルールでもNOZOMIは勝てると思っているが油断は出来ない。
2回を終わって2度ダウンを奪われている。でも、ポイントなんて関係ない。この試合はKOかタップアウトで決着がつく。勿論、勝つのは私だ...。

第3ラウンドのゴングが鳴った。

今度は両者目立った動きはない。リング中央での睨み合いからスタート。
堂島が軽快なフットワークでNOZOMIの周囲をまわる。ビシッ! 鈍い音をたて堂島のローキックがNOZOMIの膝、下腿部を襲う。
打撃戦では不利と見たか? NOZOMIが組み技に誘うような動きを見せるが、堂島はそれに付き合わない。組み付かれそうになる度、堂島は巧みにそれを見事にかわす。練習の成果だ。

ビシッ! ローキックが面白いように決まる。これは本当に効果的だ。

(実況)

「堂島選手のローキックが決まる度、全国のNOZOMI選手ファンから悲鳴が聞こえてきそうです。あの美しい脚が幾分腫れてきたようにも見えます。残酷にも見えますが、この戦いは彼女が自分で望んでリングに上がっているのです。なんという少女でしょう...」

そして、1、2ラウンドのようなダウンシーンもなく第3ラウンドも終了。

第3ラウンド終了した時点で、こんな美少女がまだリングに立っていることは驚きだ。そういう目で観ているファンは多いだろう。相手は男子であり、しかも現役キックボクサー元日本王者なのだ。2度のダウンを喫したとはいえ、追い込む場面さえあった。

もう、これを茶番だと思っている人は少ないだろう。NOZOMIの下腿部は赤くなっており、堂島にしても、組み技になることを恐れているのがその表情から分かる。両者の緊張感が伝わってくる。この戦いは男と女の真剣勝負なのだ。紛れもないシュートマッチ。

「堂島さん、この調子です。ローキックが効果的でNOZOMIもかなりきついはずです。このまま判定に持ち込めばあなたの勝ちです。絶対相手の距離に入らないで下さい」

確かにローキックは当たっているし効果的な戦法だと思う。普通なら立っていられないのに...と、見ている者はそう思うだろう。でも違うのだ。
彼女は懐が深いので容易に踏み込めない。やや遠い距離からの力の入らない蹴りになってしまう。それに、彼女は当たる瞬間にその天性の反射神経で微妙に脚を急所から外している。
彼女の脚はゴツくて大木のような男子選手と違って、ロープのようにとらえどころがなく、いくら蹴ってもその打撃を吸収されるようで手応えがない。あの脚は柔軟で獰猛な蛇だ。
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